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金融庁の報告書




■老後に2000万円必要?

 「年金だけでは生活に不自由します、2000万円の蓄えが必要です」と金融庁の報告書が話題になっています。
 2000万円の蓄えがあれば月々の不足分5万円を30年で使い果たす前提だそうで。

 死ぬまでにジワリジワリと預金を切り崩していく。
 かなりしょぼい老後をイメージさせる報告書となってしまいました。


 株式投資をしている人からみれば、なにもそんなに毎月、預金を切り崩さなくてもよいことは一目瞭然。
 単に2000万円で6%の利回りリートを買えば年間120万円で月々10万円になるので元本売る必要がないでしょう。

 いまでさえ年率5%の配当利回りゴロゴロしている中で、配当再投資すれば確実に株数は増えていきます。
 株数は複利で増えるので三十年間で六倍に株数が増えると見なせます。

 利益を全部配当に回さないので、ROE(1−配当性向)で配当成長率がプラスなら、その分は、キャピタルゲインとなるでしょう。
 これも5%あれば、30年で数倍になります。

 キャピタルゲインで五倍にインカムゲインで六倍になれば30年で30倍だから今から30年後の2000万円を目指して、今はたったの66万円だけ株式投資をすれば良いということなんですが、それが期待値なんですね。


 たとえば、SUBARU、ソフトバンク通信子会社、JTとか出光とか四つの銘柄の平均利回りは6%程度ですね。
 配当成長率も平均すると6%程度ですから、三十年で三十六倍に資産は増えるのです。
 いま、株を買って長期で保有し、途中の配当だけ再投資すればよかろうと思うのですが。


 たしかに、この議論は、リスクがあります。
 第一、30年後に利回り5%のものがゴロゴロしているのかはわからないからです。
 たとえば、利回り5%のものがあまりなくて、3%のものしかなければ、1200万円ではなくて、やはり2000万円は必要で、金融庁のいう通りや、となるかもしれません。


 そうではないのです。

 利回りが低下するということはキャピタルゲインとなるので、購入資産が時間とともに値上がりするのです。
 どちらにころんでも、株価が下がれば利回りがあがり、利回りが下がれば株価が上がるので、問題にならないはずなのですが。


 それでも不確実な30倍よりも確実に毎月3万円貯金か積立しなさいよ!というのが運用業界のアドバイスでしょう。

 わたしは、1000万円ぐらいで十分かなと思っております。


■長期デザインの優位性

 95才まで生きるとしたら、長期のデザインができるので、長期で設計をすればなんでも大丈夫です。楽観できますね。

 過去30年で上場株式の配当成長率は6%程度の平均値となっており、増配と配当維持で8割〜9割のケースをしめます。
 減配となるケースはすくないのです。

 これは、経営者ががんばって配当を少なくとも維持、できればじわりじわりと上げていくことを意識しているからです。

 そのために、安全弁としてのバッファを用意しています。
 それが配当性向というものです。
 配当性向は3割ぐらいしかないのです。
 利益が10あれば配当に回るのは3ぐらいです。
 となると、残りの7は将来のもしものために企業の内部に留保されるのです。
 それを何十年と繰り返しているうちに、もやは配当を下げる必要がないぐらいの余裕のよっちゃんで現金がじゃぶじゃぶあるのがいまの上場企業なのです。

 その配当利回りが5%あり、内部留保率も5%もあるなら、あわせて10%がリターンになるはず!

 この「なるはず!」が、「あーあ、なるはずだと思ったのになあ!」と投資の失敗を懸念する方々がほとんどなのです。


 確かに、年間で何割も下がる株もありますので、そうした懸念はもっともなのですが。
 ただ、短期でみればそうでも、長期でみればそうではないとわたしは思いますね。

 たとえば、TOPIXでも過去70年ぐらいでみれば年率7%ぐらいで上がっていますし、過去10年でみてもそうです。
 銀座の一等地の値段は、150年で100万倍ぐらいになっておりますね。


 企業は永続するわけです。

 たとえば山手線があと1000年継続し、JR東日本が1%の配当を1000年出せば受け取る配当は元本を大きく超えるのですが、懸念が大きすぎて、または、命が短すぎて、そうは考えることができない人が多いのです。

 長期で見ればリターンは積み上がりそれは時間とともに比例して増えていくのに、リスクとはいえば、上がったり下がったりの繰り返しの分だけ打ち消し合います。
 ですので、一日で日経平均が3%も下がると大変なのですが、それが100日間続いて300%下がるということは絶対にないのです。

 一方で、配当利回り5%が10年続けば、かならず50%分のリターンは得られるので、それは時間に比例するのです。

 このリターンは比例するが、リスクは打ち消しあうということが長期では期待できます。

 ですが、短期では期待薄なのです。
 世の中は超短期の人ばかりです。
 長期で自分の寿命の先まで考えている人はたったのひとりもいない、ということです。


■超短期のそのまた短期な機関投資家

 短期のオポチュニティを捉えるだけが投資だと思っているのは、嫌ですね。

 機関投資家にずっとがっかりしているのは、形式論ばかり先行して、ESGもチェックシートでチェックできるようにしたり、議決権行使も閾値を定めて、アルゴリズムを作成して、賛成反対を決めるなんて、なんて恐ろしくて、馬鹿馬鹿しいことが横行していることです。

 思考停止です。

 経営者というエイジェンシーに委託して彼らが提案した議案をまずはしっかりと理解して欲しいのに。

 企業にある現金は、適宜、その時に必要なステイクホルダーに使わなければ企業は存続できないですよーー。
 顧客が苦境にあるときは顧客のためにキャッシュを使わなければならないし、社員が疲弊しているなら社員にキャッシュを使わなければならないのは当然でしょう。
 システムを安定させて、さあ、その後、どう投資をしていくか、という話ですからね。
 アルゴリズムで決めないでほしいなあーーー。

 機関投資家はいまだにベータなど過去一年ぐらいのデータで計っているのだとしたら、本当にやめて欲しいです。
 日次のデータを年率化するのは意味がまったくないのです。

 数十年という長い営みだって、50年と言われる企業経営の単位だって、景気の波や苦境や危機を何回も乗り越え、良い時も、悪い時も、全て勘案しなければならないのですよ。

 ならば、ベータの計算は100年単位で行うべきだ。
 それが投資のリスクでしょう。

 費用をかけて売上をあげる、そのターゲット、利用できる資源は概ねアクセスできますよね。

 だから、企業とは、集団で戦う集団であり、いかにチームワークよく長期的に戦い抜くか。

 日次のデータを運用に使わないで!!と思う今日この頃。


 友達のファンドマネジャーのMさんが、唯一、10年で投資といって頑張っています。10年で10倍以上を目指されています。

 わたしも、10年単位で考え、次の10年とその次の10年に向けて後継者を育てている最中です。
 30年では1000倍になる予定なのですが。
 どうなることやら。

 わたしは月次のデータを年次に変えているのですが、年次データだけでいいかなと最近思っております。


リンクスリサーチ
山本 潤


NPOイノベーターズフォーラム理事。
メルマガ「億の近道」執筆18年間継続。
1997−2003年年金運用の時代は1000億円の運用でフランク・ラッセル社調べ上位1%の成績を達成しました。
その後、2004年から2017年5月までの14年間、日本株ロング・ショート戦略ファンドマネジャー。
コロンビア大学大学院修了。
法哲学・電気工学・数学の3つの修士号を持っています。


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)


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