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ドラッカー18の教え 第15回



産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
6月号連載記事

■コミュニケーションは受け手が主役


●禅問答

 こんな禅問答があります。

「誰一人いない山奥で大木が倒れた。音は聞こえるか?」

 山奥で大木が倒れれば、空気は当然振動します。しかし、それが「音」になるためにはその音が、人間の耳の中の鼓膜を振動させ、その振動が脳の中で音として認知される必要があります。つまり、だれもいない山奥で木が倒れても、音を感じる人間がいなければ音は聞こえないということです。

 ドラッカーも著書でこのエピソードを取り上げていますが、「誰もいない山奥で叫びまくっている」経営者やマネージャーは決して少なくありません。
 経営やマネジメントにおけるかなり深刻な問題といえるでしょう。


●情報とコミュニケ―ション

 ドラッカーは人間同士でやり取りされるものを、「情報」と「コミュ二ケーション」に大別し、それぞれまったく異なるものであると指摘します。

 通常、人と人の間では、コミュ二ケーションの中で情報を伝達します。
 例えばランチやディナーで雑談しながらのやりとり、会議室での表情や身振り手振りなどのボディーランゲージを含めたやりとり等々。立ち話でちょっとした伝達をするときでさえ、声の調子や表情でその伝達事項の「意味」がかなりわかりますし、電子メールの一斉配信のときでさえ、伝えたい内容だけではなく、ちょっとした挨拶やコメントが添えられるのが一般的です。

 このように分かちがたく結びついている「情報」と「コミュ二ケーション」ですが、その本質は全く別物です。

 最近、コンピュータやインターネットなどの「情報機器」が発達したおかげで強く意識されようになったのですが、情報とは「ビット」です。ビットを単位として使ったのはクロード・シャノンがはじめてですが、要するに2進法の一桁=「0と1の組み合わせひとつ」のことです。一般的には「1バイト=8ビット」という関係であり、「1キロバイト=1000バイト」やメガ(バイト)やテラ(バイト)はパソコンなどの性能を現す言葉として一般的です。数が多いほどたくさんの情報を扱うことができるというわけです。
 この情報の分野で驚くべき能力を発揮しているのがコンピュータや通信ネットワークであることはいまさら言うまでもありません。

 それに対してコンピュータが苦手とするのがコミュニケーションです。
 IBMのワトソンはAI=人工知能の最先端としてもてはやされていますが、IBM自身はワトソンを人工知能とは呼んでいません。「エキスパートシステム」と呼んでいます。

 「エキスパートシステム」とは何か?
 人工知能が人間の脳の機能全体と同じように機能するのに対して、エキスパートシステムは人間の脳の役割の一部を模倣します。例えばワトソンは、IBMのディープ・ブルーがチェスの世界チャンピオンを破った後構想され、ジョパティーという米国のクイズ番組のチャンピオンに勝利すべく莫大な費用と長年の研究開発期間によって完成しました。この番組は、過去全米を揺るがしたクイズ番組のスキャンダルなどの経緯から、「解答が出題されて、その解答の問題を答える」という変わった形式です。しかし要するに、「質問に答える」という人間の脳の機能の一部に特化したエキスパートシステムです。

 チェスよりもはるかに複雑な脳機能の役割を代替しているのですが、実際の対戦で大きなハンディキャップになったのが、「ワトソン」はコミニュケーションができないということです。クイズの問題は人間の司会者が読み上げるのですが、ざわついた会場でその問題を聞き分ける能力がワトソンに無かったため、出題と同時にテキストデータで送信されました。したがって、人間の解答者が、司会者の表情、声の調子から多くの情報を得ることができ、しかも人間の対戦者同士も相手の表情などを読み取ることができたことに対するハンディ
キャップがあったわけです。
 もっとも人間の解答者は、ワトソンの「完璧なポーカーフェイス」に翻弄されたかもしれません・・・


続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
6月号をご参照ください。


(大原浩)


*2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」(JKK)を設立しました。HPはこちら https://j-kk.org/


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