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ファンドマネージャ、株を語る(2)

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■「ファンドマネージャ、株を語る」執筆のきっかけ


現役ファンドマネージャが株式投資について語る日々雑感です。
個別株の売り買いの推奨はありません。
それどころか、個別株についての言及はしません。

それでも、わたしは、株式投資が持つ本来の社会的意義については、
十分に伝えることができると思っています。

そして、投資のプロセスそのものが、投資家自身を幸福へ導く道標になると考えています。


わたし自身がそうでした。
投資を通して、世の中の仕組みがわかるようになりました。

投資により、経済的に恵まれるだけではなく、
投資というプロセスを通して、人としても成長できたように思うのです。


つまり、投資家とは、お金だけを企業に預けているのではありません。

投資とは、投資家自身の膨大な時間も高度な専門性も貴重な経験も
失敗から学んだ知恵もすべてを投資分析に費やすことです。

そして、その投資行為は、人を成長させます。


投資は以下の変化をもたらします。

単なる消費者から創造者に。
偏見やバイアスに支配される偏狭さを克服し、
普遍的で自由な思想を身につけることができます。
大多数の中に埋もれる受動的な存在から、
他者を導く能動的なリーダーへと変貌することができます。

ゼロサム的な思考や矛盾に悩む人は、矛盾を克服し、問題を解決し、
矛盾点を昇華する術を身につけることができます。


短期で利己的な人が、長期で意味のあることを成す人になることができます。
すぐに結果を出そうとする拙速な人も、
思慮深く、ステップ・バイ・ステップで成果を出すようになります。

たとえお金がなくても、株について考えることが、
豊かで幸せな人生を生きることに繋がっていくのです。

多少、大げさに響くかもしれませんが。



510XFQYZ5VL._SX322_BO1,204,203,200_.jpgさて、わたしですが、外資系機関投資家(日本株アナリスト、日本株ファンドマネージャ)としての職歴はおよそ20年になります。


15年前に自らの運用手法を書籍「インベストメント」(北星堂書店2001年)にしましたが、多少、取材手法のみに偏った感がありました。


ファンドマネージャが株を語ることは、
すなわち、職業について語ることでもあります。

株式ファンドマネージャという仕事はこういう仕事である、
という内容でもあります。

また、アナリストやファンドマネージャを育成するのための
ガチのガイドブックともいえるでしょう。

株式投資のもつ、社会的な価値が、あまり意識されない状況となっていることも執筆の動機のひとつです。

個別株の推奨はありませんし、具体的な運用戦略は紹介しません。

株式投資に関するノウハウは千差万別であり、どんな個別の戦略であっても、
メリットとデメリットがあるからです。

みなさんが「株式投資」についての考えを深めるための一助となるように、
株についての必要最低限の事柄を整理しました。


■ファンドマネージャ、株を語る  0002


☆☆ 株式運用の最初のステップ


 株式運用の最初のステップは、
「世の中をしっかりと見る」
ことだと思いますね。


世の中をしっかりと見ます。
現在だけではなくて、過去の世の中も知るようにします。
その観察に基づいて、株価にとって重要な未来を考えます。

客観的な「曇りなき眼」で世の中を見る。
「よい目」を持っていることが、よいストックピッカー※の必要条件です。
(※stock picker: 上手に株を選ぶ人)


☆☆何でしょうか?「よい目」とは。


知らず知らず、人は偏見を持ち、時には間違った思い込みをしてしまいます。
間違った認識を改める機会は多くの人は持ちません。

だから、わたしも含めて、ほとんどの現代人は、
公平な目で素直に世の中を見ることができてはいません。
好きか嫌いかで物事を判断するケースが誰にもあります。

もちろん、人間ですから、それでいいのです。

ですが、株式投資に際しては、よい悪いという善悪や好き嫌いという価値観は抑えるようにしたいものです。

よい目とは、ありのままの姿をそのまま受け入れて見ることができる目です。


☆☆何を具体的に「見る」のでしょうか?


わたしたち、株式アナリスト※が「世の中を見る」とき、
それは、「企業が提供する商品やサービスを見る」という意味になります。
(※equity analyst: 株式アナリスト。企業業績を予測して適正な株価を算定する人)

その商品が世の中にどう役立つのか。
その商品が産まれた時代背景について分析をします。

商品について、よい点、悪い点、他のライバルにない特徴や他と似た特徴を理解します。

株式アナリストにできることは、企業の提供する商品について、よき観察者となることです。


「現在だけではなく、過去を見る」とはどういうことでしょうか。

商品の歴史を知ることです。

上場企業トヨタの理論株価を算出する際、その最初の一歩は、
彼らの主力商品である車を見ることから始めます。

車を例にとれば、歴史を徐々に遡っていくにつれて、
昭和初期のガソリン車、明治時代の人力車、江戸時代の籠、
平安時代の牛車まで到達します。

トヨタの車ということであれば、クラウンやカローラを時代を遡り辿り、
年表やそれぞれの車種の性能などを記述していきます。


時の流れを見ようとするのです。

時代を超えて残った商品の本質部分を見ようとするのです。


一般に、株式アナリストは、変化を好み、変化を期待します。
変化を知ることは大事ですが、それだけでは十分ではありません。
時代を超えて変化しないものも見るべきです。

変化するものを知り、変化しないものも知るのです。

時代が変わっても変わらない摂理を知ることは、
商品の持つ本質的な部分を知ることですし、
変化する部分を知ることは技術進化やイノベーションを理解することに通じます。


☆☆感じることができますか? 時代の風を。


株式アナリストは、過去の商品を継続的に観察することで、
時代を感じることができるようになります。

時代の風が吹く。

自分の言葉でこの時代の精神を表現するとしたら、
現代とはどんな時代でしょうか。

時代の精神を、各企業が提供する個々の商品やサービスの脈々たる歴史を俯瞰することで、記述することができます。


たとえば、電車を例にとりましょう。

21世紀は
「時速600キロメートルで東京ー名古屋に超電導による磁石道が開通する」
時代。

20世紀は
「時速60キロメートルで新橋ー横浜に蒸気機関による鉄道が開通した」
時代。

速度が10倍になることの意味は、他の条件が変わらなければ、
投資効率も10倍になる、ということです。

車両が10倍の距離を走ることができれば、
それだけ多くの人を運ぶことができるからです。

同じだけの投資で実入りが10倍になれば投資家は得をします。

ですが、変化しない部分もあります。

短距離輸送の速度はどうでしょうか。

例えば、日本橋と新橋とはタクシー、自転車、地下鉄、長期輸送ほどの大きな差が歴史的にあるとは思えません。

21世紀も20世紀もそれほど変わっていないのではないでしょうか。


それはなぜでしょうか。

事業の本質を理解するには、
変化する部分と変化しない部分を両面合わせて知り、
総合的に事業への投資価値を判断しなければなりません。


各企業の提供する代表的な財やサービスについて、その歴史を記述する。
それが株式投資の第一歩です。


まずは、対象を定めて整理する。
各々の事業について、投資家として考える材料を集める。
それが第一歩だということです。


日本株ファンドマネージャ
山本 潤


(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)


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