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有利子削減に取り組むUSENの復活はあるのか?

 一時は35円という安値をつけその後も50円前後で推移していたUSEN(4842)の株価が270円前後にまで上昇し出来高を伴いながら時価総額を550億円にまで高めています。

 宇野オーナーの下、電柱活用の有線放送のパイオニアとして成長を見せてきた同社は2001年4月に上場。ITバブル時代の2003年には18万3000円という株価がついたこともありました。

 上場時の年商は950億円前後で年商のピークは2007年8月期の3012億円。収益にデコボコが激しく、黒字と赤字を数年おきに繰り返してきました。
 営業利益のピークは2007年8月期の159億円。特損計上が頻繁にあり当期利益の大幅赤字が上場後に5期もあるなど不安定な業績推移が見られます。特に2008.9期と2009.8期にそれぞれ539億円、595億円もの巨額な当期利益の赤字を計上し、株価は低迷しました。

 100億円程度まで落ち込んだ時価総額が550億円になってはいますが、大量の株式発行で資本は希薄化し前期、今期の業績が向上する中でもEPSは20円台に留まるなどかつての勢いは見られない中、株価は出来高を伴いつつ上昇してきている状態です。
 有利子負債の削減に注力しており、2012年に450億円以上あった有利子負債は323億円へと大きく減少し財務内容の改善を今後も続けていくようです。無配継続で期末保有現預金は76億円と増加し、脆弱な財務内容の改善に取り組んでいる状況が見られます。

 同社の音楽配信事業は139万本(H25.8末現在)の電柱か衛星を使って配信されますのでコストがやや高いのが、欠点であり様々な問題を抱えているとされますので多くの顧客基盤をどうやって維持するかが課題となっていると見られます。

 縮小する市場ながら厳然として存在する10万件以上の顧客基盤と150億円もの営業キャッシュフローが同社にとって財産となります。粗利率は56%と高く、販管費を用いた営業利益の確保で企業価値を高めることができるのかどうかが評価のポイントと言えます。

 インターネットやスマホ時代の中で古い体質と見られがちの企業で時価総額をここから高めることができるのかというと個人的には疑問に思います。ですが従業員数3000名という事業規模の大きな同社は吟味してみる余地はありそうです。

 同社は同業のキャンシステムとの間で今から6、7年前に係争を起こしています。創業時から何かとお騒がせの同社です。落ち着いてきたように見える業績ですが今後も過去の企業体質からは波乱の展開が想定されます。

 それより時価総額100億円レベルまで落ち込んでしまった比較的事業スケールの大きな企業が自助努力で復活に動く過程に興味深さを感じますが、皆さんはいかがでしょうか。

【参考チェックポイント:同社2013.8期決算短信より】

1.音楽配信事業
 音楽配信事業は、創業以来同社グループの事業の主軸。今後においても、その安定的な収益基盤の維持及び強化を図っていく必要があると認識。
 このため、業務店向け・個人向け市場においての顧客維持と取引拡大に向けた取り組みとして、引き続き以下の施策を実施。

1)法人顧客(チェーン店市場)における新たな収益源の構築と顧客数増加を目的とした付加価値商材・新サービスなどの提案
2)生涯収益が高いと見込まれる新規オープン店に対する営業活動への注力
3)既存顧客に対するフォロー営業やCS向上施策による顧客数減少の抑止と長期利用の促進
 オフィス向け音楽放送「Sound Design for Office」により音楽の効能を打ち出した拡販を実施。
 音楽配信事業の2013.8期売上高は40,562百万円(前期比1.5%減)、営業利益は8,015百万円(前期比4.8%減)。

2.音楽配信事業の市場動向
 同社は、全国の飲食店舗や小売店舗等の業務店顧客及び個人顧客を対象として、音楽配信サービスを提供。同社と同様に全国を業務エリアとする他社は1社のみ(キャンシステム)でわずか2社の寡占市場(推定市場規模は700億円)。
 個人店では著作権侵害も多いと推察されます。中には上場小売企業が侵害しているのではないかと勘繰られても致し方ない事例も。
 当該サービスの主力である業務店向け市場は、バブル期以降の長期的な日本経済の衰退を背景とし、縮小傾向にある。
 主力である業務店顧客に対しては、集客支援サイト等との複合サービスとしての音楽放送の提供等、魅力ある新商品の開発を行っていますが、諸般の情勢から業務店店舗数が減少する可能性があり、その場合は同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

3.各種メディアとの競合と放送法の改正について
 現在、ケーブルテレビ、衛星放送及びインターネットラジオ等における通信技術の進歩に伴い、通信と放送を連携させた様々なサービスが登場し、消費者の嗜好の多様化及びライフスタイルに大きな影響を与えております。また、改正放送法により、通信業界と放送業界の相互参入が進み、新たな形態の音楽配信サービス及び事業者が参入する可能性があります。
 更にタブレット端末やスマートフォンの急速な普及に伴い、個人及び業務店市場における同社サービスの阻害要因となる可能性があり、このような場合には同社グループの業績に影響を及ぼす可能性あり。

4.法的規制について
1)音楽配信事業について
a)音楽配信サービスについて
 平成22年11月26日に放送法が改正(同年12月3日公布)され、平成23年6月30日の施行に伴い、有線ラジオ放送業務の運用の規制に関する法律、有線電気通信法、電気通信役務利用放送法が放送法に統合、廃止されたことから、同社の同軸ケーブル及び通信衛星を使用した音楽配信事業は、放送法における一般放送事業者として放送法の適用を受けることとなり、同社は放送法に基づく届出等を行っています。また、放送法においても、民間所有地又は公道(以下「民地等」)の上空を同軸ケーブルが通過する場合等について民地等の使用承諾の取得や電柱等に共架する同軸ケーブル等について一定の技術基準への適合が必要とされております。
 放送法には、これらの法令に基づく命令又は処分に違反した場合における業務停止や届出及び登録の取消等が定められており、かかる事態が生じた場合等には同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後これらの法令又はその解釈が変更された場合に、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 また、音楽配信事業における楽曲の使用に関しては、著作権法上の規制を受けます。

5.同社グループの状況
 同社グループではキャッシュ・フロー重視を経営の根幹に据え、財務体質の改善を推進しつつ既存事業の強化、並びにサービスの向上、新規市場の開拓、解約の防止等に積極的に取り組み、事業の収益力の改善を図っています。その結果、2013.8期における連結有利子負債残高は、323億円まで圧縮し(昨年度末残高427億円)、財務体質の大幅な改善につながった。さらなる状況改善と強固な財務基盤の構築のため、キャッシュ・フロー重視経営の徹底を継続的に執行していく計画。
 しかしながら、同社の事業活動を行う主要な市場である業務店等の企業業績動向の影響を受けることから、今後の世界的な金融不安による経済危機、異常気象等による原材料費の高騰、原油価格の投機的価格変動、消費税率の引き上げ及び電力供給の制約等による業務店店舗数の減少や、個人消費の低迷等の動向は、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

6.電柱の利用にかかる問題等について
1)電柱所有者との関係について
 平成25年8月末現在、同社は、電力会社10社及びNTTグループが所有する約139万本の電柱を利用しています。これらの電柱は、同社の音楽配信事業の基盤となるものであり、これらの電柱所有者とは、平成12年3月以降、法令に従った電柱の使用の実現を目的とした事業の正常化の過程において電柱に当社のケーブルを共架するための契約を締結し、電柱の本数に応じた一定の施設使用料を支払っています。
 同社は、現時点において、各電柱所有者との間で良好な関係を構築しているものと認識しているようですが、未解消問題等も存在しており、何らかの要因で当該契約が解消され又は継続が困難となり同社の電柱使用に支障が生じた場合には、同社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

2)未解消問題への対応等について
 放送法においては、民地の上空を同軸ケーブル等が通過する場合等について民地の使用承諾が、電柱等に共架する同軸ケーブル等について一定の技術基準への適合等が求められております。同社は、以前より未解消問題への対応を行ってきました。
 現時点において、同社の事業活動に関して、この未解消問題の存在を理由に法律に基づく何らかの処分を受けることはないものと認識しているようです、仮にかかる事態が生じた場合には、同社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

7.財政状態等について
1)有利子負債への依存及び今後の資金調達について
 同社グループは、過去においては放送用設備用地等の固定資産の取得を、また、近年においてはコンテンツ配信事業における設備投資やグループ戦略に基づくM&A等を実施してきており、これらの資金については主に借入金により賄ってきました。その後、同社グループは、現状の市場環境、金融環境は当分の間好転することがないと判断をし、不採算事業の売却、保有資産の売却等にて、キャッシュ・フローを生み続けられる事業構造の転換にむけ、「リバイバルプラン」に則り有利子負債の削減を図ってきました。
 この結果、2013.8期末における連結有利子負債残高は323億21百万円となりました。しかしながら、外部環境への対応、事業計画の未達等により、想定以上に資金需要が拡大する可能性があり、このような状況においては、金融機関からの借入及び資本市場からの調達等も視野に入れた資金調達を図っていく方針を打ち出していますが、同社グループにとって好ましい条件での調達が実行できる保証はなく、これが同社グループの事業の制約要因となり、事業展開等に影響を及ぼす可能性があります。

2)借入金等の財務制限条項について
 同社は、同社並びにグループ会社の既存借入金を一本化するため、平成19年11月28日に金融機関31社からなるシンジケート団との間で、返済期限を平成24年11月30日とする1200億円のシンジケートローン契約、並びに極度額150億円のコミットメントライン契約を締結。平成21年5月29日付にて変更契約を締結し、シンジケートローン契約及びコミットメントライン契約を一本化、更に平成22年11月29日付で、一部に抵触していた財務制限条項の解消等の条件変更を含めた変更契約を再度締結。更に、平成24年11月には前述のシンジケートローン契約及びコミットメント契約の返済期限が到来することから、平成24年11月28日付で、金融機関32社からなるシンジケート団との間で、返済期限を平成27年11月30日まで延長することを主な内容とする変更契約を締結。当該変更契約には、各年度の年度決算における単体及び連結の損益計算書の経常損益、各年度の年度決算期末における単体及び連結の貸借対照表における純資産の部の金額や、連結の損益計算書の経常利益等により算出される一定の指数等を基準とした財務制限条項が付加されており、利率の上昇又は請求により期限の利益を喪失する等、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

8.会社の経営の基本方針
 同社グループは、昭和36年の創業以来、音楽配信事業を主要事業として日本の音楽文化の発展に寄与し、他に類を見ない民間での大規模な有料音楽放送事業というビジネスモデルを確立してまいりました。しかしながら、その後、進出・展開した新規事業の投資負担に加え、世界的な金融不安による経済危機が当社グループに大きな影響を及ぼしたことにより、同社グループでは、キャッシュ・フローを生み続けられる事業構造への転換に向け、事業の選択と集中を実施してきました。具体的には、放送・業務店事業を中心としたランニング事業への回帰を進めると同時に、グループ全体での人員の再配置、不採算事業の撤退や非中核事業の売却等を行い、キャッシュ・フロー並びに財務基盤の強化を図ってきました。
 今後も、既存事業の更なる強化を進めるとともに、新たな付加価値商品・サービスの検討・開発発及び新規市場開拓・販路拡大に取り組むことで新たな収益基盤の創出を進めていく方針。

9.粗利率/販管費率/営業利益率
2012.8期 56.0%/42.5%/13.5%
2013.8期 56.0%/43.3%/12.7%

粗利率は高水準維持。
販管費率がアップしていて結果として営業利益率が低下。

10.音楽配信事業の売上高/セグメント利益
2012.8期412億円/84億円
2013.8期406億円/80億円

 音楽配信事業の業態別配信先の60%は小売り・外食。ケーブル+衛星による配信がメイン。既存のインターネットインフラを活用するモデルではない。オフィス向けなどにも注力している感じ。コンテンツ数は300万曲。
 粗利率は変わっておらず販管費を使って新規開拓と顧客の解約を防いでいる状況が見られます。
 収益性は高く今後も同社に代わるような企業が出てこないのであれば独占的な立場を維持していける要素はあり。但し、インターネット時代で既に事業モデルは陳腐化している状況が感じられます。新たなBGM事業者が登場し、市場で競争が起きる可能性があります。
(2013.10.11現在株価267円)

(炎)

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)

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