みなさま、ご無沙汰しています。
イノベーターズフォーラムの山本 潤です。
現役のFMとして、これまで個別銘柄のレポートは発表していませんでした。
12年前には大原部長として、いろいろ個別株も書いていましたが・・・・
今となっては懐かしくもあり、恥ずかしくもある思い出です。
今後は、新規連載として、売り買いとは直接関係ない、銘柄メモを発表していきたいと思います。
このレポートは銘柄の売りとか買いを推奨するものでは全くありません。
売りでも買いでもない、純粋に企業研究メモです。
現役のファンドマネージャが、
こんな感じで企業を分析している、というテイストを味わってください。
■■銘柄メモ フォスター電機 6794■■
■フォスター電機の過去の損益動向と収益構造
1)過去を振り返ると、フォスター電機は成長企業だ(だった?)。
多くのテクノロジー企業がITバブルのピーク売上を抜けなかった中で、同社はいち早く携帯端末のヘッドセットという成長分野に資源を投入し、成長軌道に乗った。その結果、2006年にはITバブル時の売上、利益を抜いた。また、スマートフォンの普及を見越し、スマフォ向けのヘッドセットの開発に注力した結果、着実に売上成長を成し遂げている。今期売上は過去最高であり、ITバブル時と比べて2倍の売上を達成している。アップル関連株と見られる傾向がある同社であるが、確かにアップルの売上に占める割合は30%程度と見られるが、三星やノキアなど、世界の携帯大手を顧客に持つ。
2)フォスター電機の収益構造の特徴は、赤字にならないことにある。需要の急激な減少に耐性がある点だ。つまり、固定費が低い。労務費の変動費化により、需要の急減、急増に対応できること、固定費が低く、損益分岐点が低いこと。総資産額の3倍以上の年間売上を上げることができる。固定資産の5倍の売上を上げる(売上高固定資産回転率が5倍)ことができる。売上高回転率指標からみると、効率的な経営といえよう。
■過去の業績の推移と来期の見通し
1999年3月期のITバブル時であるが、フォスター電機は、売上700億円、営業利益57億円を稼いた。当時のBPSは621円。純資産は149億円であった。
ITバブル崩壊で、多くのIT関連企業が赤字に転落した。しかしフォスター電機は、一度も営業赤字に陥ることはなかった。バブル崩壊後、2001年3月期には、業績は低迷したものの、売上551億円、営業利益は15億円と健闘した。この営業利益15億円が過去15年間の最低の利益水準である。
アップルコンピューターがipodを投入。音楽携帯機器の市場拡大と共に、フォスター電機の業績は持ち直し、06年3月期には、ITバブル期の利益を更新し、売上660億円、営業利益58億円を計上した。
08年3月期には、売上867億円、営業利益は71億円を計上した。
09年3月期に減益となり、翌2010年3月期には売上884億円、営業利益91億円という過去最高の利益を更新することになる。
11年3月期以降、減益傾向となり、昨年度2012年3月期には、売上は過去最高の1013億円を計上するが、営業利益は10年ぶりの低水準に落ち込み、18億円へと落ち込んだ。その原因は、希土類金属の急騰にある。ヘッドセットのキーデバイスのひとつである磁石に使われるネオジウムが急騰。製品への価格転嫁が進まなかった。ネオジウム価格は、2010年3月期を100とすると、2011年3月期は150、2012年3月期上期は1000まで上昇、その後、下落に転じ、2012年3月下期には、800まで下落した。2013年3月期の上期には、400まで下落。今2013年3月期下期には、300を割る水準で落ち着いている。
かつて、ネオジウムは、ヘッドセットの部材である磁石の材料であり、売上の0.5−0.7%を占めるにすぎなかった。それが、一時的とはいえ、10倍に上がったため、売上の5−7%を占めるようになった。およそ50−70億円の減益要因が2012年3月期には発生した。会社側は、一部磁石をフェライトへ切り替えるなど、打てる手を打ってきた。だが、ネオジウムの使用をゼロにすることはできず、2012年3月期の大幅減益の主な要因がネオジウム価格の高騰にあった。実際の市況と材料在庫の回転月数を考えると、4−5カ月のタイムラグが発生する。ネオジウム高は、2013年3月期の上期まで影響が残った。ようやく2013年3月期の下期に40−50億円規模の利益を6カ月で上げられるようになった。2013年3月期通期の営業利益は60億円程度で着地しそうだ。
さらに、2014年3月期は、原材料安の恩恵、円安の恩恵を受けるため、半期で50億円、通期で100億円規模への利益への回帰が期待できる状況となった(あくまで机上の計算でわたしの予想ではありません)。
仮に、営業利益100億円を超えれば、会社としては過去最高益を4年ぶりに更新することになる。現状の同社の時価総額300億円(2013年2月25日現在)に対して、100億円規模の営業利益は、もし、そうなれば、PERでみれば5倍程度であり、低位の部類に入るといえよう(でも、そうはならないかもしれない!!)。
■BPSの成長率
赤字にならない体質の同社は、株主の持ち分である純資産を、過去15年で積み上げてきた。純資産は140億円台から400億円弱まで積み上がった。一株当たりの純資産(BPS)は、同期間600円台から1500円台へと3倍弱になった。
ちなみに、過去10年のBPSの平均成長率は年率9%だ。
■資産効率の高いビジネス
ポイントその1)付加価値の高い製品。ヘッドセットやヘッドフォンは、音が命であり、見た目のファッション性も重要だ。音作りはアナログ技術であり、オーディオメーカとしての長年のノウハウが必要である。また、デザインのよさが、売れ行きに直結するため、まず、「デザインありき」で設計が始まる。デザインが決まった状況で、最良の音を保証していくためには、高度なノウハウが必要になる。
ポイントその2)振動板、磁石、コイルなど、部材の小型化が進む。また、ノイズキャンセリング機能や無線機能(ブルーツースなど)、スイッチ機能、マイクロフォン機能など、新しい機能が付加される傾向がある。そのため、付加価値が向上し、製品の価格は上昇傾向となる。
ポイントその3)製品の組み立て工程は、ライトアセット型、労働集約的であり、費用はほとんど変動費化できる。資産が軽いため、償却負担などで、赤字に転落することはない。雇用調整すればよいため、低稼働率に泣くことがない。価格が維持できる、資産効率の高いビジネスである。
同社のビジネスは、ヘッドセットスピーカの製造である。これは労働集約型の産業である。つまり、組立事業である。設備投資負担は金型投資がメインであり、低水準だ。総資産400億円弱に対して売上が1400億円。回転率は3倍を超える。組立ビジネスは参入障壁が一般的には低い。安くて豊富な労働力のある中国、ベトナム、ミャンマーなどが同社の製造拠点である。海外の労働力は変動費化できる。期間工が中心であり、需要の増減に合わせて雇用調整ができるからだ。
組立は人手を伴う労働集約的な工程だ。
労働力が豊富にある中国やアセアン地域で大規模な工場を建設するが、製造設備については、製品が小型のため、電動軽量の射出成型機が設備の中心となる。キーデバイスは、音質を左右する振動板(スピーカとなる)とよばれるメンブレム(樹脂)の製造である。また、付随するものとしては、プラスチック筐体、コード(被覆線)、銅線、ピン、ボイスコイル、磁石、ヨークなどがヘッドセットを構成する部材である。コイルを構成する銅線は、巻き線装置において、コイル化されるが、半自動で人手を介する軽機械作業となる。コードの接続や筐体組立などは、手作業で行っていると推定している。音質検査なども、多くの人手がかかる工程であろう。組み立て自体にはあまり付加価値はない。だが、ヘッドセットの出来、つまり、よい音を保証する製品の設計はアナログ技術(磁気回路技術)である。音作りの世界では、振動板の出来が音質を左右する。振動板の樹脂成型による大量生産により、安価で安定した音質のヘッドセットが設計できるようになった。歩留まり良く、安定的に大量生産するノウハウがフォスター電機の強みである。
同じ樹脂成型品であっても、金型と成型機があれば、大量につくれるエンプラ部品などは、付加価値が低い。
一方、アナログ技術(磁気回路設計技術)を介した高音質を保証するヘッドセット・ヘッドフォンは、流通段階では1000円を超える価格で取引されている。ブランドものになれば、数万円というヘッドフォンも存在する。さらに、ヘッドセットは、デザインや見た目も重要であり、いわゆる「かわいい」、「かっこいい」というファッション的な要素も重要である。
ファッションには流行りがあり、ヘッドセットについても、毎年のように、新デザインが投入されている。スマートフォンの大量製品に伴い、スマフォに梱包されるヘッドセットも大量に生産されるものの、新モデルに次々に切り替わるため、ヘッドセットの価格は維持されている。今後も、磁石、コイル、振動板の高性能化による付加価値の維持に加えて、デザインの変化、また、ノイズキャンセリング機能、スイッチ機能、無線機能、防水機能などといった新機能の追加により、付加価値は維持されている。
上記の付加価値があるため、フォスター電機は、他の部品メーカのように急激な製品単価の下げに苦しむことはなかった。また、労働集約的なビジネスモデルでiphoneのような一機種に何千万台に対応し、大量に受注するスキームは、新製品の投入サイクルや季節的な需要変動、新製品の売れ行きによる需要の見通しの変化を考えると、設備集約的な生産工程ではリスクが高すぎる。FAの活用や自動巻き線機などの投入による自動化は、多額の設備投資を必要とする。組立ラインの自動化は、小さな部品を三次元の不安定な筐体組立には向かない。丸みを帯びたプラスチックの小さな容器は向きや角度を一定に固定することが難しく、機械(マウンター)にコイルやメンブレムや音響部品の配置させることは割に合わない。例外はコイル工程だろう。自動巻き線機による省人化効果は見込めよう。また、コードのような形状のものを上手く筐体に接線することは機械でやらせようとすれば極めて割高になることは容易に想像できる。
そういう機械化とは一線を画して、労働力を変動費化できる地域で大量に人を雇い、仕事に応じて、雇用量を調整するというビジネスモデル(組立ビジネス)がフォスターには合っている。
多額の設備投資を行えば多額の償却費が発生する。多額の償却費が発生すれば、稼働を維持するためには、安値でも受注しなくてはならない。そのやり方とは一線を画し、固定費をできるだけ抑えるというフォスター電機の戦略は、高い売上高・資産回転率となって表れている。
■ヘッドセットというプロダクトについて
ポイントその1)ヘッドセットはカスタムメイドで顧客とのコミュニケーションが必要(付加価値を顧客にともに創造していく工程がある)
ポイントその2)音作りはアナログ技術で誰でもできるものではない
ヘッドセット、ヘッドフォンは、磁界の中で音声電流が流れるボイスコイルにローレンツ力が発生し、コイルに取り付けた振動板を振動させる。低歪と広い再生周波数帯域が求められる。
スマートフォンなどの携帯端末からの入力信号(アナログ信号)をボイスコイルを通して、力学的な振動に変換し、振動板を通して音声信号を空気に伝播させて音を再現する。
デザインにより、空気穴を開ければ、音がこもらないが低音に弱くなる。密閉すれば、低温はしっかりするが音がこもってしまう。高音を活かせば、低音が犠牲になる。低音を活かせば高音が犠牲になるというトレードオフがある。ロック、ポップス、クラシックなど様々な音楽ジャンルに対応したすべての好みを満足させることはできない。そのため、どういう音作りを志向するかは、メーカとオーディオ機器メーカ(スマートフォンメーカ)との協業作業、あるいは、フォスターから顧客に対する提案になる。
ヘッドセットの心臓部は振動板であり、低い周波数から高い周波数まで、振動板がリニアに振動しなければならない。
しかしながら、振動板の重量をMとし、バネ係数をkとすると、必ず、振動板には特有の共振周波数がある。
f0(共振周波数)=1/π*(k/M)^0.5
M:受動部の質量(振動系の質量)、k:振動板のバネ定数
この共振を避けることが重要だ。だが、最低共振周波数は上記のように固有の共振周波数であり、その倍音周辺、1/2や1/4といった周波数ゾーンでは、音の特性が悪くなる。(悪い音が鳴る状態)。つまり、周波数特性がなめらかにならない音域(周波数帯)がある。共振現象を防止するために、様々な方法があり、それが振動板が適度な内部損失を持たなければならない理由である。伝播速度は周波数とちゃん比例すること、内部損失は共振(ノイズ)を抑えること、に関係している、と考えてもらえばいい。ここについても、特性をどうするかは、顧客との打ち合わせが必要になる。共振(キーンといった固有音)を防ぐためには、内部損失を持たせる以外には、振動板を真円ではなく、エッジ部分を切ったり、孔をあけたり、振動板を円ではなく楕円形にしたりなど、様々な工夫がある。
(でも、何をやっても何かが犠牲になるんだよ!)
振動板を薄くすれば、一般的に共振周波数f0が下がり、低音再生を広げることができる。これは、低音を低圧で再生できる、ということだ。
少ないエネルギーで音を再生できる、ということ。
しかし、同時に、高音域に、共振周波数の影響が出てまう。高音と低音の両方を同時に満足させることはできない。
ここで、フォスターのイノベーティブなヘッドセットを紹介する。
その前に、まず、振動板の特性には伝播速度とよばれる特性について説明しなければならない。
これは、ヤング率(E)/密度(ρ)であらわされる。現在ヘッドセットで主流となっている樹脂の振動板の伝播速度(E/ρ)^0.5 は4000m/s以下であり、実は、木材パルプよりも低く、充分な高域再生及び高忠実度再生は期待できない。共振周波数f0は上記の曲げ剛性の平方根(E/ρ^3 )^0.5 と質量mとの積に比例する。次の式で表すことができる。
f0 ∝ m(E/ρ^3)^0.5
(共振周波数は振動板の重さとヤング率に比例し、密度の3乗に反比例する)
フォスターがアップルに提案し、採用されたのが、iphone5のヘッドセットであるが、その振動板はバイオ材料だ。このイノベーションについて説明する。
バイオセルロースにカーボン繊維を加えることにより、密度(上記式でρ)を下げ、かつヤング率Eを上げた。フォスターでは、高伝播速度,高曲げ剛性が得られるとしている。
一般的に、金属やセラミックスは弾性率は大きいものの、密度が高く内部損失が小さいため、高域再生用には使用できるが、軽量高剛性が求められる中低音域や全帯域用には向かない。また、合成樹脂を用いたものは樹脂にフィラー
(filler)を混合したもの、他の樹脂とアロイ(alloy)したもの等をシート化し、これを成形加工(主に真空成形)したものや、ペレットにして射出成形機にて射出成形したもの等がある。これらの最適に設計された樹脂の振動板は、比弾性率も高く、適当な内部損失も持っており、量産時のバラツキも小さいことから比較的優れた性質を有する。が、熱に弱く、厚みのコントロールが容易でないため設計上の自由度の小さいことが欠点である。
前述のように、ヤング率Eと密度ρは互いにトレードオフの関係にある。金属はヤング率は高いが密度も高い。密度が低いものは柔らかくヤング率も低い。
例を上げれば、ダイヤモンドはヤング率は高く、ゴムはヤング率が低い。
それを打破したのが、バイオ振動板だ。
バイオ振動板にはバイオセルロースが使用されている。
バイオセルロース繊維は、バイオテクノロジーによって作られており、1本の太さがナノメーター単位の極細。
バイオセルロース繊維は、中高音域の再生に優れた能力を保有しており、これに各種の繊維を適切な配合で組合せると、各々の繊維の特徴を複合させた音質が得られ、水準の高い音創りが可能になるという。
同社によれば、低音域の拡大においては、エッジ部のコンプライアンスを上げる必要があるという。一体型の振動板では、振動板の厚さを薄くすることで対応している。
しかし、離解したバイオセルロースはヤング率が高いため、厚さ40ミクロンでも必要なコンプライアンスを得ることができないらしい。
更に薄くすると振動板としての材料の持つ長所が失われる。
ヤング率が高すぎて、限りなく薄くしなければ(前述の式でいえばmが小さくなければ)、f0共振周波数が上がってしまうという。
こうした難題をどうやって解決したのかは開示資料もないし、同社はOEMなので、守秘義務があり、投資家にはわからない。
ああやったんだろうなあと推定することしかできない。でも、結構、フォスター、がんばったということはいえよう。
■振動板のイノベーション
以下は、平成22年の同社のプレスリリースだ。
「当社は日本放送協会(NHK)放送技術研究所と共同で、超軽量スピーカを開発しました。コイルやマグネットを使わず、ポリウレタン高分子膜の収縮を利用して音を出す仕組みのため、軽量で自由な形状のスピーカを作ることができます。
この新開発のスピーカは、ゴムと同等の弾性を持つポリウレタン高分子膜両面に、導電性高分子塗料を塗布して電極を形成し、この電極に電圧をかけて電極同士を引き合わせて膜を伸縮させ、膜を張り合わせて形成した振動板を振動させて音を出すというものです。
このような構造のため、試作では直径16センチのスピーカで全重量約60グラム、従来構造の約1/20の軽量化を達成しました。また、高分子膜の音響特性を補償する信号処理回路を通すことによって、周波数80ヘルツから15Kヘルツまでの広帯域再生ができます。自由な形状が作れますので、家庭の中の様々な場所で目立たない形で使われることが期待できます。」
ちなみに、NHKと同社の共同特許として同技術は申請されている。
これは、ただちに普及するようなものではないが、発想としては面白い。
このように、音作りの世界は、絶え間ない新材質の開発や形状の工夫などが期待できる。奥が深い分野である。
■フォスター電機のビジネスリスク
リスクは中国・ベトナムの人件費増。変動費の増加。
これを生産性の向上でどれだけオフセットできるか。また、ミャンマーや中国内陸部への生産シフトでどれだけオフセットできるかがキー。
それに、受注したヘッドセットが、売れないリスク。いま、iphoneはだめですよね。顧客が駄目になってしまうリスクがある。
かつて、同社の主要顧客はノキアでしたが、ノキアはだめになってしまった。
いま、ウインドウズフォンで二桁の勢いでノキアは売れているらしいけど。
それでは、また!!
山本 潤
証券アナリスト
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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イノベーターズフォーラムの山本 潤です。
現役のFMとして、これまで個別銘柄のレポートは発表していませんでした。
12年前には大原部長として、いろいろ個別株も書いていましたが・・・・
今となっては懐かしくもあり、恥ずかしくもある思い出です。
今後は、新規連載として、売り買いとは直接関係ない、銘柄メモを発表していきたいと思います。
このレポートは銘柄の売りとか買いを推奨するものでは全くありません。
売りでも買いでもない、純粋に企業研究メモです。
現役のファンドマネージャが、
こんな感じで企業を分析している、というテイストを味わってください。
■■銘柄メモ フォスター電機 6794■■
■フォスター電機の過去の損益動向と収益構造
1)過去を振り返ると、フォスター電機は成長企業だ(だった?)。
多くのテクノロジー企業がITバブルのピーク売上を抜けなかった中で、同社はいち早く携帯端末のヘッドセットという成長分野に資源を投入し、成長軌道に乗った。その結果、2006年にはITバブル時の売上、利益を抜いた。また、スマートフォンの普及を見越し、スマフォ向けのヘッドセットの開発に注力した結果、着実に売上成長を成し遂げている。今期売上は過去最高であり、ITバブル時と比べて2倍の売上を達成している。アップル関連株と見られる傾向がある同社であるが、確かにアップルの売上に占める割合は30%程度と見られるが、三星やノキアなど、世界の携帯大手を顧客に持つ。
2)フォスター電機の収益構造の特徴は、赤字にならないことにある。需要の急激な減少に耐性がある点だ。つまり、固定費が低い。労務費の変動費化により、需要の急減、急増に対応できること、固定費が低く、損益分岐点が低いこと。総資産額の3倍以上の年間売上を上げることができる。固定資産の5倍の売上を上げる(売上高固定資産回転率が5倍)ことができる。売上高回転率指標からみると、効率的な経営といえよう。
■過去の業績の推移と来期の見通し
1999年3月期のITバブル時であるが、フォスター電機は、売上700億円、営業利益57億円を稼いた。当時のBPSは621円。純資産は149億円であった。
ITバブル崩壊で、多くのIT関連企業が赤字に転落した。しかしフォスター電機は、一度も営業赤字に陥ることはなかった。バブル崩壊後、2001年3月期には、業績は低迷したものの、売上551億円、営業利益は15億円と健闘した。この営業利益15億円が過去15年間の最低の利益水準である。
アップルコンピューターがipodを投入。音楽携帯機器の市場拡大と共に、フォスター電機の業績は持ち直し、06年3月期には、ITバブル期の利益を更新し、売上660億円、営業利益58億円を計上した。
08年3月期には、売上867億円、営業利益は71億円を計上した。
09年3月期に減益となり、翌2010年3月期には売上884億円、営業利益91億円という過去最高の利益を更新することになる。
11年3月期以降、減益傾向となり、昨年度2012年3月期には、売上は過去最高の1013億円を計上するが、営業利益は10年ぶりの低水準に落ち込み、18億円へと落ち込んだ。その原因は、希土類金属の急騰にある。ヘッドセットのキーデバイスのひとつである磁石に使われるネオジウムが急騰。製品への価格転嫁が進まなかった。ネオジウム価格は、2010年3月期を100とすると、2011年3月期は150、2012年3月期上期は1000まで上昇、その後、下落に転じ、2012年3月下期には、800まで下落した。2013年3月期の上期には、400まで下落。今2013年3月期下期には、300を割る水準で落ち着いている。
かつて、ネオジウムは、ヘッドセットの部材である磁石の材料であり、売上の0.5−0.7%を占めるにすぎなかった。それが、一時的とはいえ、10倍に上がったため、売上の5−7%を占めるようになった。およそ50−70億円の減益要因が2012年3月期には発生した。会社側は、一部磁石をフェライトへ切り替えるなど、打てる手を打ってきた。だが、ネオジウムの使用をゼロにすることはできず、2012年3月期の大幅減益の主な要因がネオジウム価格の高騰にあった。実際の市況と材料在庫の回転月数を考えると、4−5カ月のタイムラグが発生する。ネオジウム高は、2013年3月期の上期まで影響が残った。ようやく2013年3月期の下期に40−50億円規模の利益を6カ月で上げられるようになった。2013年3月期通期の営業利益は60億円程度で着地しそうだ。
さらに、2014年3月期は、原材料安の恩恵、円安の恩恵を受けるため、半期で50億円、通期で100億円規模への利益への回帰が期待できる状況となった(あくまで机上の計算でわたしの予想ではありません)。
仮に、営業利益100億円を超えれば、会社としては過去最高益を4年ぶりに更新することになる。現状の同社の時価総額300億円(2013年2月25日現在)に対して、100億円規模の営業利益は、もし、そうなれば、PERでみれば5倍程度であり、低位の部類に入るといえよう(でも、そうはならないかもしれない!!)。
■BPSの成長率
赤字にならない体質の同社は、株主の持ち分である純資産を、過去15年で積み上げてきた。純資産は140億円台から400億円弱まで積み上がった。一株当たりの純資産(BPS)は、同期間600円台から1500円台へと3倍弱になった。
ちなみに、過去10年のBPSの平均成長率は年率9%だ。
■資産効率の高いビジネス
ポイントその1)付加価値の高い製品。ヘッドセットやヘッドフォンは、音が命であり、見た目のファッション性も重要だ。音作りはアナログ技術であり、オーディオメーカとしての長年のノウハウが必要である。また、デザインのよさが、売れ行きに直結するため、まず、「デザインありき」で設計が始まる。デザインが決まった状況で、最良の音を保証していくためには、高度なノウハウが必要になる。
ポイントその2)振動板、磁石、コイルなど、部材の小型化が進む。また、ノイズキャンセリング機能や無線機能(ブルーツースなど)、スイッチ機能、マイクロフォン機能など、新しい機能が付加される傾向がある。そのため、付加価値が向上し、製品の価格は上昇傾向となる。
ポイントその3)製品の組み立て工程は、ライトアセット型、労働集約的であり、費用はほとんど変動費化できる。資産が軽いため、償却負担などで、赤字に転落することはない。雇用調整すればよいため、低稼働率に泣くことがない。価格が維持できる、資産効率の高いビジネスである。
同社のビジネスは、ヘッドセットスピーカの製造である。これは労働集約型の産業である。つまり、組立事業である。設備投資負担は金型投資がメインであり、低水準だ。総資産400億円弱に対して売上が1400億円。回転率は3倍を超える。組立ビジネスは参入障壁が一般的には低い。安くて豊富な労働力のある中国、ベトナム、ミャンマーなどが同社の製造拠点である。海外の労働力は変動費化できる。期間工が中心であり、需要の増減に合わせて雇用調整ができるからだ。
組立は人手を伴う労働集約的な工程だ。
労働力が豊富にある中国やアセアン地域で大規模な工場を建設するが、製造設備については、製品が小型のため、電動軽量の射出成型機が設備の中心となる。キーデバイスは、音質を左右する振動板(スピーカとなる)とよばれるメンブレム(樹脂)の製造である。また、付随するものとしては、プラスチック筐体、コード(被覆線)、銅線、ピン、ボイスコイル、磁石、ヨークなどがヘッドセットを構成する部材である。コイルを構成する銅線は、巻き線装置において、コイル化されるが、半自動で人手を介する軽機械作業となる。コードの接続や筐体組立などは、手作業で行っていると推定している。音質検査なども、多くの人手がかかる工程であろう。組み立て自体にはあまり付加価値はない。だが、ヘッドセットの出来、つまり、よい音を保証する製品の設計はアナログ技術(磁気回路技術)である。音作りの世界では、振動板の出来が音質を左右する。振動板の樹脂成型による大量生産により、安価で安定した音質のヘッドセットが設計できるようになった。歩留まり良く、安定的に大量生産するノウハウがフォスター電機の強みである。
同じ樹脂成型品であっても、金型と成型機があれば、大量につくれるエンプラ部品などは、付加価値が低い。
一方、アナログ技術(磁気回路設計技術)を介した高音質を保証するヘッドセット・ヘッドフォンは、流通段階では1000円を超える価格で取引されている。ブランドものになれば、数万円というヘッドフォンも存在する。さらに、ヘッドセットは、デザインや見た目も重要であり、いわゆる「かわいい」、「かっこいい」というファッション的な要素も重要である。
ファッションには流行りがあり、ヘッドセットについても、毎年のように、新デザインが投入されている。スマートフォンの大量製品に伴い、スマフォに梱包されるヘッドセットも大量に生産されるものの、新モデルに次々に切り替わるため、ヘッドセットの価格は維持されている。今後も、磁石、コイル、振動板の高性能化による付加価値の維持に加えて、デザインの変化、また、ノイズキャンセリング機能、スイッチ機能、無線機能、防水機能などといった新機能の追加により、付加価値は維持されている。
上記の付加価値があるため、フォスター電機は、他の部品メーカのように急激な製品単価の下げに苦しむことはなかった。また、労働集約的なビジネスモデルでiphoneのような一機種に何千万台に対応し、大量に受注するスキームは、新製品の投入サイクルや季節的な需要変動、新製品の売れ行きによる需要の見通しの変化を考えると、設備集約的な生産工程ではリスクが高すぎる。FAの活用や自動巻き線機などの投入による自動化は、多額の設備投資を必要とする。組立ラインの自動化は、小さな部品を三次元の不安定な筐体組立には向かない。丸みを帯びたプラスチックの小さな容器は向きや角度を一定に固定することが難しく、機械(マウンター)にコイルやメンブレムや音響部品の配置させることは割に合わない。例外はコイル工程だろう。自動巻き線機による省人化効果は見込めよう。また、コードのような形状のものを上手く筐体に接線することは機械でやらせようとすれば極めて割高になることは容易に想像できる。
そういう機械化とは一線を画して、労働力を変動費化できる地域で大量に人を雇い、仕事に応じて、雇用量を調整するというビジネスモデル(組立ビジネス)がフォスターには合っている。
多額の設備投資を行えば多額の償却費が発生する。多額の償却費が発生すれば、稼働を維持するためには、安値でも受注しなくてはならない。そのやり方とは一線を画し、固定費をできるだけ抑えるというフォスター電機の戦略は、高い売上高・資産回転率となって表れている。
■ヘッドセットというプロダクトについて
ポイントその1)ヘッドセットはカスタムメイドで顧客とのコミュニケーションが必要(付加価値を顧客にともに創造していく工程がある)
ポイントその2)音作りはアナログ技術で誰でもできるものではない
ヘッドセット、ヘッドフォンは、磁界の中で音声電流が流れるボイスコイルにローレンツ力が発生し、コイルに取り付けた振動板を振動させる。低歪と広い再生周波数帯域が求められる。
スマートフォンなどの携帯端末からの入力信号(アナログ信号)をボイスコイルを通して、力学的な振動に変換し、振動板を通して音声信号を空気に伝播させて音を再現する。
デザインにより、空気穴を開ければ、音がこもらないが低音に弱くなる。密閉すれば、低温はしっかりするが音がこもってしまう。高音を活かせば、低音が犠牲になる。低音を活かせば高音が犠牲になるというトレードオフがある。ロック、ポップス、クラシックなど様々な音楽ジャンルに対応したすべての好みを満足させることはできない。そのため、どういう音作りを志向するかは、メーカとオーディオ機器メーカ(スマートフォンメーカ)との協業作業、あるいは、フォスターから顧客に対する提案になる。
ヘッドセットの心臓部は振動板であり、低い周波数から高い周波数まで、振動板がリニアに振動しなければならない。
しかしながら、振動板の重量をMとし、バネ係数をkとすると、必ず、振動板には特有の共振周波数がある。
f0(共振周波数)=1/π*(k/M)^0.5
M:受動部の質量(振動系の質量)、k:振動板のバネ定数
この共振を避けることが重要だ。だが、最低共振周波数は上記のように固有の共振周波数であり、その倍音周辺、1/2や1/4といった周波数ゾーンでは、音の特性が悪くなる。(悪い音が鳴る状態)。つまり、周波数特性がなめらかにならない音域(周波数帯)がある。共振現象を防止するために、様々な方法があり、それが振動板が適度な内部損失を持たなければならない理由である。伝播速度は周波数とちゃん比例すること、内部損失は共振(ノイズ)を抑えること、に関係している、と考えてもらえばいい。ここについても、特性をどうするかは、顧客との打ち合わせが必要になる。共振(キーンといった固有音)を防ぐためには、内部損失を持たせる以外には、振動板を真円ではなく、エッジ部分を切ったり、孔をあけたり、振動板を円ではなく楕円形にしたりなど、様々な工夫がある。
(でも、何をやっても何かが犠牲になるんだよ!)
振動板を薄くすれば、一般的に共振周波数f0が下がり、低音再生を広げることができる。これは、低音を低圧で再生できる、ということだ。
少ないエネルギーで音を再生できる、ということ。
しかし、同時に、高音域に、共振周波数の影響が出てまう。高音と低音の両方を同時に満足させることはできない。
ここで、フォスターのイノベーティブなヘッドセットを紹介する。
その前に、まず、振動板の特性には伝播速度とよばれる特性について説明しなければならない。
これは、ヤング率(E)/密度(ρ)であらわされる。現在ヘッドセットで主流となっている樹脂の振動板の伝播速度(E/ρ)^0.5 は4000m/s以下であり、実は、木材パルプよりも低く、充分な高域再生及び高忠実度再生は期待できない。共振周波数f0は上記の曲げ剛性の平方根(E/ρ^3 )^0.5 と質量mとの積に比例する。次の式で表すことができる。
f0 ∝ m(E/ρ^3)^0.5
(共振周波数は振動板の重さとヤング率に比例し、密度の3乗に反比例する)
フォスターがアップルに提案し、採用されたのが、iphone5のヘッドセットであるが、その振動板はバイオ材料だ。このイノベーションについて説明する。
バイオセルロースにカーボン繊維を加えることにより、密度(上記式でρ)を下げ、かつヤング率Eを上げた。フォスターでは、高伝播速度,高曲げ剛性が得られるとしている。
一般的に、金属やセラミックスは弾性率は大きいものの、密度が高く内部損失が小さいため、高域再生用には使用できるが、軽量高剛性が求められる中低音域や全帯域用には向かない。また、合成樹脂を用いたものは樹脂にフィラー
(filler)を混合したもの、他の樹脂とアロイ(alloy)したもの等をシート化し、これを成形加工(主に真空成形)したものや、ペレットにして射出成形機にて射出成形したもの等がある。これらの最適に設計された樹脂の振動板は、比弾性率も高く、適当な内部損失も持っており、量産時のバラツキも小さいことから比較的優れた性質を有する。が、熱に弱く、厚みのコントロールが容易でないため設計上の自由度の小さいことが欠点である。
前述のように、ヤング率Eと密度ρは互いにトレードオフの関係にある。金属はヤング率は高いが密度も高い。密度が低いものは柔らかくヤング率も低い。
例を上げれば、ダイヤモンドはヤング率は高く、ゴムはヤング率が低い。
それを打破したのが、バイオ振動板だ。
バイオ振動板にはバイオセルロースが使用されている。
バイオセルロース繊維は、バイオテクノロジーによって作られており、1本の太さがナノメーター単位の極細。
バイオセルロース繊維は、中高音域の再生に優れた能力を保有しており、これに各種の繊維を適切な配合で組合せると、各々の繊維の特徴を複合させた音質が得られ、水準の高い音創りが可能になるという。
同社によれば、低音域の拡大においては、エッジ部のコンプライアンスを上げる必要があるという。一体型の振動板では、振動板の厚さを薄くすることで対応している。
しかし、離解したバイオセルロースはヤング率が高いため、厚さ40ミクロンでも必要なコンプライアンスを得ることができないらしい。
更に薄くすると振動板としての材料の持つ長所が失われる。
ヤング率が高すぎて、限りなく薄くしなければ(前述の式でいえばmが小さくなければ)、f0共振周波数が上がってしまうという。
こうした難題をどうやって解決したのかは開示資料もないし、同社はOEMなので、守秘義務があり、投資家にはわからない。
ああやったんだろうなあと推定することしかできない。でも、結構、フォスター、がんばったということはいえよう。
■振動板のイノベーション
以下は、平成22年の同社のプレスリリースだ。
「当社は日本放送協会(NHK)放送技術研究所と共同で、超軽量スピーカを開発しました。コイルやマグネットを使わず、ポリウレタン高分子膜の収縮を利用して音を出す仕組みのため、軽量で自由な形状のスピーカを作ることができます。
この新開発のスピーカは、ゴムと同等の弾性を持つポリウレタン高分子膜両面に、導電性高分子塗料を塗布して電極を形成し、この電極に電圧をかけて電極同士を引き合わせて膜を伸縮させ、膜を張り合わせて形成した振動板を振動させて音を出すというものです。
このような構造のため、試作では直径16センチのスピーカで全重量約60グラム、従来構造の約1/20の軽量化を達成しました。また、高分子膜の音響特性を補償する信号処理回路を通すことによって、周波数80ヘルツから15Kヘルツまでの広帯域再生ができます。自由な形状が作れますので、家庭の中の様々な場所で目立たない形で使われることが期待できます。」
ちなみに、NHKと同社の共同特許として同技術は申請されている。
これは、ただちに普及するようなものではないが、発想としては面白い。
このように、音作りの世界は、絶え間ない新材質の開発や形状の工夫などが期待できる。奥が深い分野である。
■フォスター電機のビジネスリスク
リスクは中国・ベトナムの人件費増。変動費の増加。
これを生産性の向上でどれだけオフセットできるか。また、ミャンマーや中国内陸部への生産シフトでどれだけオフセットできるかがキー。
それに、受注したヘッドセットが、売れないリスク。いま、iphoneはだめですよね。顧客が駄目になってしまうリスクがある。
かつて、同社の主要顧客はノキアでしたが、ノキアはだめになってしまった。
いま、ウインドウズフォンで二桁の勢いでノキアは売れているらしいけど。
それでは、また!!
山本 潤
証券アナリスト
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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