本日は、リーマンショックで儲けたヘッジファンドがなぜ今年は不調なのか?今年のヘッジファンド動向について解説いたします。
2011年の上半期は、米国経済が上向く明るい見通しをもつファンドが多く、8月5日の米国格下げを発端とした、8月〜9月の市場の下落とボラティリティに対応できなかったこと、さらには、株式市場の下落によりリスク回避で現金化を行った後、10月にS&P500が10%反発し、それに乗り切れなかったことが、今年リターンが不調な要因としてあげられます。
銀行が欧州債務危機に関連した損失を被る懸念が強まる中、特に、7月〜9月に年初来から半値に下落した、バンク・オブ・アメリカやシティ・グループなどの金融株で損失を出したファンドが多くありました。シティ株でやられたヘッジファンドの全損失額は約40億ドル(約3,100億円)とも言われ、サブプライム危機で大儲けをしたジョン・ポールソンやデービッド・テッパーなどスターファンドマネージャーもシティ株により大きな損失を出したようです。
特に絶不調として騒がれているのは、2010年にヘッジファンドマネージャーランキングで1位を獲得し、約49億ドル(約4,200億円)の報酬を得たジョン・ポールソンです。今年のリターンは、期間ファンドがマイナス40%以上と大きく負けています。彼は、08年のサブプライム危機を予測しての住宅ローン関連商品や金融株への空売り、09年の銀行への投資、10年の金への投資と、ここ3年の市場の動きを完全に予測していましたが、今年の彼の戦略は外れることも多かったようです。
彼の大きなミスは、シティ株の上昇にかけたポジションと、中国の木材事業会社シノフォレスト株の不正会計を見抜けなかったことです。シノフォレスト株で5億〜7億ドルの損失を出したと報じられています。
一方で、金投資は大成功におわり、2年以上に渡って保有していた、金のポジションを7月〜9月に売り始めました。11月半ばには、デルファイ・オートモーティブのIPOで取得額の30倍以上で値がつき340億円のリターンをだしました。心配された解約率も8%以下にとどまったようです。
今年の不調が伝えられるもう一人は、09年の報酬ランキングのトップ、昨年も4位だったデービッド・テッパーです。「落ちているお金を拾うのが最良の取引」という超逆張りのスタイルで、09〜10年のサブプライム危機の直後に、株価が暴落していたシティー株やバンク・オブ・アメリカ株など金融機関への投資で、大きなリターンをあげました。今年は裏目にでて、これらの銀行株でやられているようです。
一方で、大物のファンドマネージャーで、大きく勝っているファンドは聞かないものの、ジョージ・ソロスが率いるクオンタムファンドは、今年の上半期で6%のマイナスになったことから、「現在の状況は金融危機のさなかよりもはるかに不可解で予測しにくい」と、7月までにほとんどの資金を現金化し、資金の償還に備えていたので、8月、9月の市場急落を免れました。
また、ヘッジファンドランキングで昨年2位のレイモンド・ダリオが運営しているブリッジウォーター・アソシエイツ、ケン・グリフィンが率いるシタデル・インベストメント、ダニエル・オクテが率いるオク・ジフ・キャピタルマネジメンなどの大手ヘッジファンドは今年のリターンがプラスに浮上しており、様々な運用手法を用いたマルチストラテジーのファンドの成績が良いようです。
バンク・オブ・アメリカに50億ドルを出資したウォーレン・バフェットは、株価が大きく下落した8月に、今年最大の資金を投じました。さらに11月には、IBMに約8,300億円と大型投資をしたことを発表しました。バフェットが購入してからバンク・オブ・アメリカ株は反発の兆しが見えてきており、IBMは直近い史上最高値を更新するなど、割安なタイミングで投資をして長期で持ち続けるという、彼のスタイルはまたしても巨額のリターンを生みそうです。
米国のカルパースや欧州などの先進国の年金基金は、低金利や景気減速下でも、計画された給付義務を果たすように圧力をかけられており、ヘッジファンド投資を加速しています。ヘッジファンドの約2兆ドル運用残高の半分は、年金などの機関投資家からの資金です。ヘッジファンドへの新しい金融規制が進む中で、どのように戦略を拡大していくか目が離せません。
S&S investments
岡村 さとみ
■プロフィール
早稲田大学理工学部卒、早稲田大学大学院理工学部経営システム工学科卒。
外資系証券会社の自己勘定部門&ヘッジファンドにおいて、5年半日本株の運用に携わる。計量的分析を用いて、マーケットに左右されない絶対的リターンを追求したトレードを行う。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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2011年の上半期は、米国経済が上向く明るい見通しをもつファンドが多く、8月5日の米国格下げを発端とした、8月〜9月の市場の下落とボラティリティに対応できなかったこと、さらには、株式市場の下落によりリスク回避で現金化を行った後、10月にS&P500が10%反発し、それに乗り切れなかったことが、今年リターンが不調な要因としてあげられます。
銀行が欧州債務危機に関連した損失を被る懸念が強まる中、特に、7月〜9月に年初来から半値に下落した、バンク・オブ・アメリカやシティ・グループなどの金融株で損失を出したファンドが多くありました。シティ株でやられたヘッジファンドの全損失額は約40億ドル(約3,100億円)とも言われ、サブプライム危機で大儲けをしたジョン・ポールソンやデービッド・テッパーなどスターファンドマネージャーもシティ株により大きな損失を出したようです。
特に絶不調として騒がれているのは、2010年にヘッジファンドマネージャーランキングで1位を獲得し、約49億ドル(約4,200億円)の報酬を得たジョン・ポールソンです。今年のリターンは、期間ファンドがマイナス40%以上と大きく負けています。彼は、08年のサブプライム危機を予測しての住宅ローン関連商品や金融株への空売り、09年の銀行への投資、10年の金への投資と、ここ3年の市場の動きを完全に予測していましたが、今年の彼の戦略は外れることも多かったようです。
彼の大きなミスは、シティ株の上昇にかけたポジションと、中国の木材事業会社シノフォレスト株の不正会計を見抜けなかったことです。シノフォレスト株で5億〜7億ドルの損失を出したと報じられています。
一方で、金投資は大成功におわり、2年以上に渡って保有していた、金のポジションを7月〜9月に売り始めました。11月半ばには、デルファイ・オートモーティブのIPOで取得額の30倍以上で値がつき340億円のリターンをだしました。心配された解約率も8%以下にとどまったようです。
今年の不調が伝えられるもう一人は、09年の報酬ランキングのトップ、昨年も4位だったデービッド・テッパーです。「落ちているお金を拾うのが最良の取引」という超逆張りのスタイルで、09〜10年のサブプライム危機の直後に、株価が暴落していたシティー株やバンク・オブ・アメリカ株など金融機関への投資で、大きなリターンをあげました。今年は裏目にでて、これらの銀行株でやられているようです。
一方で、大物のファンドマネージャーで、大きく勝っているファンドは聞かないものの、ジョージ・ソロスが率いるクオンタムファンドは、今年の上半期で6%のマイナスになったことから、「現在の状況は金融危機のさなかよりもはるかに不可解で予測しにくい」と、7月までにほとんどの資金を現金化し、資金の償還に備えていたので、8月、9月の市場急落を免れました。
また、ヘッジファンドランキングで昨年2位のレイモンド・ダリオが運営しているブリッジウォーター・アソシエイツ、ケン・グリフィンが率いるシタデル・インベストメント、ダニエル・オクテが率いるオク・ジフ・キャピタルマネジメンなどの大手ヘッジファンドは今年のリターンがプラスに浮上しており、様々な運用手法を用いたマルチストラテジーのファンドの成績が良いようです。
バンク・オブ・アメリカに50億ドルを出資したウォーレン・バフェットは、株価が大きく下落した8月に、今年最大の資金を投じました。さらに11月には、IBMに約8,300億円と大型投資をしたことを発表しました。バフェットが購入してからバンク・オブ・アメリカ株は反発の兆しが見えてきており、IBMは直近い史上最高値を更新するなど、割安なタイミングで投資をして長期で持ち続けるという、彼のスタイルはまたしても巨額のリターンを生みそうです。
米国のカルパースや欧州などの先進国の年金基金は、低金利や景気減速下でも、計画された給付義務を果たすように圧力をかけられており、ヘッジファンド投資を加速しています。ヘッジファンドの約2兆ドル運用残高の半分は、年金などの機関投資家からの資金です。ヘッジファンドへの新しい金融規制が進む中で、どのように戦略を拡大していくか目が離せません。
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岡村 さとみ
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早稲田大学理工学部卒、早稲田大学大学院理工学部経営システム工学科卒。
外資系証券会社の自己勘定部門&ヘッジファンドにおいて、5年半日本株の運用に携わる。計量的分析を用いて、マーケットに左右されない絶対的リターンを追求したトレードを行う。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
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