日本の年金は、GPIF年金積立管理運用独立行政法人という厚生労働省所管の独立行政法人で運用されており、運用資産は117兆円で世界最大です。予定運用利回り4.1%と公表されているポートフォリオを調べてみたところ、国内債券が7割を占め、国内株式が10.7%、外国株式9.7%、外国債券8.2%と世界的に見て保守的なアロケーションです。国内債券を7割も入れていて、運用利回りを4%以上も出せるのか難しいと感じましたが、実際、直近9年の利回りは、年率平均約2.2%でした。
続いて、運用資産2000億ドル(17兆円)の米国最大の公的年金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)の運用ポートフォリオに目を向けると、グローバル株式49.8%、オータナティブ14.5%、グローバル債券24.3%、不動産7.3%、インフレ連動債3%というアセットアロケーションになっております。株式が半分を占め、債券が25%、残り25%をオータナティブ、不動産などで運用をしております。
カルパースは、年金基金としては、その運用方法はかなり積極的だといわれており、プライベートエクイティファンド、ヘッジファンド等へも投資を行っているのですが、2008年のリーマンショックでは、その積極的な運用が裏目に出て、年率マイナス27.8%になりました。それでも、過去20年は年率平均8.68%、日本と同じ直近9年間は、年率平均4.7%という成績でした。
続いて、ソブリンウエルスファンド(Sovereign Wealth Fund、SW)と呼ばれる政府系ファンドで有名なアブダビ投資庁(ADIA)とシンガポール政府投資公社(GIC)を見てみましょう。
アブダビ投資庁(ADIA)は、運用総額が5000億ドル(43兆円)、過去20年のリターンが年率平均6.5%といわれています。詳細な情報開示を行っていませんが、資産の80%を外部のファンドマネージャーが運用し、60%をパッシブ運用で行っているようです。公表しているポートフォリオは、最大、最少の場合のアロケーションで表示されているので平均でみたところ、先進国株式40%、新興国株式15%、小型株3%、国債15%、クレジット7.5%、オータナティブ7.5%、不動産7.5%、プライベートエクイティ5%でした。株式だけで、6割を占め、オータナティブ、プライベートエクイティ、不動産と色々な商品に幅広い投資を行っているのが分かります。
シンガポール政府投資公社(GIC)は、日本の不動産やプライベートエクイティファンドにも積極的に投資をしております。運用資産は、3300億ドル(28兆円)といわれており、その1割を日本に投資しているようです。過去20年のリターンは、年率平均5.7%です。先進国株式28%、新興国株式10%、債券24%(うちインフレ連動債5%)、不動産12%、プライベートエクイティ11%で、オータナティブ、不動産への割合が高いのが特徴です。
一時、日本版政府系ファンド設立の話も出ましたが、世界に目を向けると、日本の公的年金運用が非常に保守的かつリターンが低いことが分かります。
最後に、私たちもその運用手法を参考にしているハーバード大学とイエール大学の基金運用について見てみましょう。
初めにびっくりするのが、ハーバード大学基金運用は、過去20年で年率平均11.9%、イエール大学は年率平均13.4%という非常に素晴らしい運用成績を叩き出していることでしょう。全米トップのハーバード大学の資金は、276億ドル(2.3兆円)、イエール大学の資金は163億ドル(1.4兆円)と、年金運用と比べるとその金額は小さいのですが、腕の良いファンドマネージャーを雇い、報酬も高額だそうです。
ハーバード大学のアセットアロケーションは、株式46%(国内株式11%、先進国株式11%、新興国株式11%、プライベートエクイティ13%)、コモディティ14%、不動産9%、債券13%となっております。一方、イエール大学は、株式17%(国内株式7.5%、外国株式9.8%)、ヘッジファンド24.3%、プライベートエクイティ24.3% 、不動産32%、債券4%とヘッジファンドとプライベートエクイティでポートフォリオの半分を占めているアグレッシブな運用が分かります。特にイエール大学は、その運用方針を書いた本も出版されており、20年で16.1%という驚異的な運用成績を残したファンドマネージャーは、大学で経済学とファイナンスのクラスも受け持っているそうです。
市場に打ち勝つアクティブ運用は、類まれなスキルが必要となってくると思いますが、私たちもこういった世界的な運用方法というのを学んでいきたいと思います。
(岡村さとみ)
■プロフィール
早稲田大学理工学部卒、早稲田大学大学院理工学部経営システム工学科卒。
外資系証券会社の自己勘定部門&ヘッジファンドにおいて、5年半日本株の運用に携わる。計量的分析を用いて、マーケットに左右されない絶対的リターンを追求したトレードを行う。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
このコラムはいかがでしたか?面白かった・役に立ったと思った方は
是非ワンクリックをお願いいたします!
http://clap.mag2.com/bouuowaeveクリックだけでも結構ですし、コメントをいただけるともっと嬉しいです!
続いて、運用資産2000億ドル(17兆円)の米国最大の公的年金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)の運用ポートフォリオに目を向けると、グローバル株式49.8%、オータナティブ14.5%、グローバル債券24.3%、不動産7.3%、インフレ連動債3%というアセットアロケーションになっております。株式が半分を占め、債券が25%、残り25%をオータナティブ、不動産などで運用をしております。
カルパースは、年金基金としては、その運用方法はかなり積極的だといわれており、プライベートエクイティファンド、ヘッジファンド等へも投資を行っているのですが、2008年のリーマンショックでは、その積極的な運用が裏目に出て、年率マイナス27.8%になりました。それでも、過去20年は年率平均8.68%、日本と同じ直近9年間は、年率平均4.7%という成績でした。
続いて、ソブリンウエルスファンド(Sovereign Wealth Fund、SW)と呼ばれる政府系ファンドで有名なアブダビ投資庁(ADIA)とシンガポール政府投資公社(GIC)を見てみましょう。
アブダビ投資庁(ADIA)は、運用総額が5000億ドル(43兆円)、過去20年のリターンが年率平均6.5%といわれています。詳細な情報開示を行っていませんが、資産の80%を外部のファンドマネージャーが運用し、60%をパッシブ運用で行っているようです。公表しているポートフォリオは、最大、最少の場合のアロケーションで表示されているので平均でみたところ、先進国株式40%、新興国株式15%、小型株3%、国債15%、クレジット7.5%、オータナティブ7.5%、不動産7.5%、プライベートエクイティ5%でした。株式だけで、6割を占め、オータナティブ、プライベートエクイティ、不動産と色々な商品に幅広い投資を行っているのが分かります。
シンガポール政府投資公社(GIC)は、日本の不動産やプライベートエクイティファンドにも積極的に投資をしております。運用資産は、3300億ドル(28兆円)といわれており、その1割を日本に投資しているようです。過去20年のリターンは、年率平均5.7%です。先進国株式28%、新興国株式10%、債券24%(うちインフレ連動債5%)、不動産12%、プライベートエクイティ11%で、オータナティブ、不動産への割合が高いのが特徴です。
一時、日本版政府系ファンド設立の話も出ましたが、世界に目を向けると、日本の公的年金運用が非常に保守的かつリターンが低いことが分かります。
最後に、私たちもその運用手法を参考にしているハーバード大学とイエール大学の基金運用について見てみましょう。
初めにびっくりするのが、ハーバード大学基金運用は、過去20年で年率平均11.9%、イエール大学は年率平均13.4%という非常に素晴らしい運用成績を叩き出していることでしょう。全米トップのハーバード大学の資金は、276億ドル(2.3兆円)、イエール大学の資金は163億ドル(1.4兆円)と、年金運用と比べるとその金額は小さいのですが、腕の良いファンドマネージャーを雇い、報酬も高額だそうです。
ハーバード大学のアセットアロケーションは、株式46%(国内株式11%、先進国株式11%、新興国株式11%、プライベートエクイティ13%)、コモディティ14%、不動産9%、債券13%となっております。一方、イエール大学は、株式17%(国内株式7.5%、外国株式9.8%)、ヘッジファンド24.3%、プライベートエクイティ24.3% 、不動産32%、債券4%とヘッジファンドとプライベートエクイティでポートフォリオの半分を占めているアグレッシブな運用が分かります。特にイエール大学は、その運用方針を書いた本も出版されており、20年で16.1%という驚異的な運用成績を残したファンドマネージャーは、大学で経済学とファイナンスのクラスも受け持っているそうです。
市場に打ち勝つアクティブ運用は、類まれなスキルが必要となってくると思いますが、私たちもこういった世界的な運用方法というのを学んでいきたいと思います。
(岡村さとみ)
■プロフィール
早稲田大学理工学部卒、早稲田大学大学院理工学部経営システム工学科卒。
外資系証券会社の自己勘定部門&ヘッジファンドにおいて、5年半日本株の運用に携わる。計量的分析を用いて、マーケットに左右されない絶対的リターンを追求したトレードを行う。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
このコラムはいかがでしたか?面白かった・役に立ったと思った方は
是非ワンクリックをお願いいたします!
http://clap.mag2.com/bouuowaeveクリックだけでも結構ですし、コメントをいただけるともっと嬉しいです!
JUGEMテーマ:株・投資
JUGEMテーマ:ビジネス