JUGEMテーマ:邦画
JUGEMテーマ:株・投資
JUGEMテーマ:ビジネス
億近読者の皆さん、2週間ぶりのご無沙汰です。
先日、何年かぶりに、オールナイトの映画上映を友人二人と見てきました。あの山崎豊子の原作を渡辺謙主演で映画化した話題の「沈まぬ太陽」です。
日本航空の実在の社員がモデルで、映画では「国民航空」、”NAL”という社名で描かれています。あの鶴のマークそっくりの”NALマーク”も出てきます(笑)。
3時間半にも及ぶため、10分の休憩が入るという長編映画です。
睡眠不足気味のところを少し無理して見に行ったため、途中で寝てしまうのが心配でしたが・・・。
結論から言えば、オールナイトとしては珍しく、私も含めて寝ている人がほぼいないという、全編を通して飽きさせない大作だったと思います。
登場人物も、40歳以上の年代の方には、良く知っている実在の人物がモデルになっているのが明白で、思わず「あの大物政治家の本当の姿は、こんな感じだったのか!」と、憤ってしまうシーンがいくつかありました。
特に、まだ御存命の中曽根元総理を演じている加藤剛が秀逸です。明らかに本人のモノマネをしている演技を見ているうちに、似ているはずの無い顔が、似て見えてくるのです。さすが、加藤剛だと感心してしまいました。
また、金丸元副総理を演じている小林稔侍の怪しさ・老獪ぶりも、なかなかのものです。特に、日本産業銀行(興銀がモデル)の頭取と、長期為替予約に絡んだ政治資金供与について話をする場面や、中曽根総理に政治資金疑惑がスキャンダルにならないように、それとなく働きかける「腹芸」の場面が、印象的です。
また、運輸族の大物政治家と言われた三塚運輸大臣は、「道塚運輸大臣」として登場し、名前があまりにもそのまんまなので、思わず苦笑してしまいます。登場シーンはそれほど多くありませんが、その運輸族としての官民との癒着ぶりが、かなり辛辣に描かれています。
まだ見ておられない方のために、「沈まぬ太陽」の主な登場人物、俳優、実在のモデルについて、以下の通り案内を作ってみました。
恩地元(渡辺謙) → 小倉寛太郎(元日航労働組合委員長)
行天常務(三浦友和) → 架空の人物
国見会長(石坂浩二) → 伊藤淳二(日航会長・元鐘紡会長)
三井美樹(松雪泰子) → 架空のスチュワーデス
堂本社長(柴俊夫) → 高木養根(日航社長)
桧山社長(神山繁) → 松尾静麿(日航社長・航空庁初代長官)
小暮社長(横内正) → 朝田静夫(日航社長・元運輸次官)
八馬取締役(西村雅彦) → 吉高諄(後に日航常務・空港グランドサービス社長)
八木労組委員(香川照之) → 架空の人物
和光監査役(大杉蓮) → 服部功(日航監査役)
利根川総理(加藤剛) → 中曽根康弘総理
竹丸副総理(小林稔侍) → 金丸信副総理
十時官房長官(中野誠也) → 後藤田正晴官房長官
道塚運輸大臣(小野武彦) → 三塚博運輸大臣
龍崎一清(品川徹) → 瀬島龍三伊藤忠相談役
青山代議士(矢島健一) → 糸山英太郎代議士
井之山代議士(田中健) → 井上一成代議士
石黒運輸官僚(渡辺いっけい) → 黒野匡彦(後に運輸次官・成田国際空港社長)
(敬称略)
如何でしょう、これだけ実在の人物がモデルになっていると、見に行ってみたくなりませんか?
あまり書くとネタバレになるので詳細は控えますが、一般的には高い評価と称賛を浴びている反面、この映画には微妙な要素も、あるように思います。
制作側は、「全て架空でフィクション」、と謳っていますが、これだけ実在の人物がモデルとして特定できる以上、やはりノンフィクションの要素を、見る側が期待してしまいます。
実際、中曽根首相が当時、伊藤忠の瀬島氏を通して、鐘紡の伊藤会長を日航の会長にスカウトしたのは有名な事実ですし、主人公のモデルになった小倉氏のキャリアも、映画で描かれている通り、東大法学部卒、労組委員長として、当時の池田首相の欧州からの帰国便にストをぶつけようとしたのも、全て事実です。
しかし、ちょっと調べると、以下の通り、フィクションもかなりあることが分かります。
・小倉氏は、御巣鷹山のジャンボ墜落後に遺族担当をしたことが無い
・小倉氏を最も苦しめる、この映画の極めて重要な存在である行天氏は架空の人物
・小倉氏を慕う労組の元部下である八木氏も架空の人物
・金丸副総理が、日本興業銀行から長期為替予約に絡み闇資金供与を受けていた事実は確認されてない
・従って、伊藤会長が中曽根総理によって事実上更迭されたのは、長期為替予約による闇資金供与が発覚するのを恐れたからではない
・腐敗した官僚として描かれている石黒氏が実際に銀座のホステスに接待漬けのあげく、高級マンションに、そのホステスを囲っていた事実は確認されていない
以上のように、ストーリーを面白くするためのフィクションとノンフィクションが混在している映画になっているところが、微妙です。「全て架空の映画」なので、当然、内容を鵜のみにすべきでは有りませんが・・・・。
日航が実際に長期為替予約を行ったのは、85年のプラザ合意の一月前という最悪のタイミングでした。260円程度だった時に、185円で10年の為替予約をしたため、直後のプラザ合意のせいで一気に円高が進み、10年に渡って積み上がった損失が何と2200億円だったことは記憶に新しい方も居られると思います。
当時、プラザ合意に参加した竹下蔵相が、国策企業でもある日航に対して、手遅れになる前に何らかの対策を講じることができなかったのか、悔やまれます。そうしたツケを、24年後の今まさに、日航が払わされようとしています。ちなみに、当時そうした無謀な為替予約の経営判断をしたのは、元大蔵省の役員だったようです。
だいぶ長文になってしまいました(汗)。
以上のようなことを予習して、是非「沈まぬ太陽」をご覧になってみては如何でしょうか?
何も知らずに見るのに比べて、2倍は深く鑑賞することができるかもしれません。
いずれにしても、「沈まぬ太陽」の御蔭で、日航という会社の内情が白日の下にさらされるきっかけとなったことは、称賛に値するかもしれません。
皆さんは、どう思いますか?
渡辺直行
*渡辺直行のプロフィール
トウキョウ・フォレックス株式会社、ソシエテ・ジェネラル証券国内法人先物・オプション部長を経てインターネットベンチャー2社の立ち上げに参加。
その後米系ヘッドハンティング会社を経て起業、2005年1月、エグゼクティブ・サーチ・ジャパン株式会社代表取締役就任。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)
「億の近道」無料購読はこちら ⇒ http://okuchika.net/?eid=5324