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鉄をめぐる話題

JUGEMテーマ:株・投資


 最近、鉄鋼業の復活が言われている。足元では少し落ち着いてきたようだが、それでも数年前に比べて、ホットコイル(熱延鋼板)などでは倍近くの価格にまで上昇している。事実、高炉、電炉ともバブル期を越えて過去最高益を達成した企業もある。ただ、これが一体いつまで続くのであろうか?

 価格高騰の主要因は中国の需要が大幅な拡大を続けていることにある。旺盛な鉄鋼の需要が市況価格を押し上げ、ついては紐付きと呼ばれる需要家との契約注文の価格まで上昇することになったといわれている。


■電炉とスクラップ市況の変調

 ただ、足元の傾向は少し異なっている様子だ。既に電炉各社はお決まりの生産調整に入っている。国内の建設需要が翳りを見せ始め、昨年夏以降は国内の棒鋼の荷動きが悪くなって、価格はピークから下落している。
 また、電炉の減産に伴って、スクラップ価格も下落している。スクラップ市況でよく指標にされがちなH2グレードは2万円を割り込む水準まで低下してきた。

 電炉が作れる商品は実はそれほど多くない。なぜなら製造工程が高炉とは異なるからである。よく電炉では汎用品や高級な鉄が作れないという事が言われているが、一番の違いはスクラップから不純物を取り出し、再度、鋼(はがね)にする工程が電炉にはない場合が多いからである。

 通常、高炉で鉄を作る際には、鉄を鋼にする際に転炉という工程で酸素、炭素、硫黄、その他合金の成分調整を行うが、この工程が電炉ではない。(似たような工程はあるが、転炉のような調整は難しい)

 実は、自動車等に使う鋼板は転炉の成分から作りこみをしており、この作りこみが後の工程、製品加工に大きな影響を及ぼしている。
 電炉ではここの作り込みができないため、自動車用の鋼板を作ることが難しいのだ。

 故に電炉ではあまり成分条件の制約のない、建築用資材や汎用品を作ることが多い。

 もう一ついうと、スクラップは実は不純物が多く、市況の物差しになっているH2というグレードのスクラップだけでは良質のものを作るのが困難である。通常H2より上のクラス、H1や新断(工場からでた切り立てのクズ)を配合しないと成分調整のために余計なコストがかかり、かえって高くつくことが多い。

 ここから言えることは同じ鉄を扱うからといって、マーケットの構造が同じかというとそうではないということがわかる。
 これは恐らく、他の業界でも同じことであろう。

 余談だが、昔どこかのファンドマネージャーが神戸製鋼に高炉をつぶして電炉にすればよいのにと本気で提言したことがあったそうだが、その話を聞いて、物を知らないということは恐ろしいことだと思った。
 なぜ、わざわざ安く、市況に左右されやすい商品などを作る必要があるのか(笑)。


■高炉と自動車の愛憎関係とは

 最近での高炉各社の中で一番のニュースはなんといっても、日産向けの鋼材不足の話であろう。

 なんでも、話によると新日鉄が日産への供給を今までの意趣返しで絞ったとかいう噂がまことしやかにながれてはいるが、真実は藪の中。

 自動車会社と高炉各社はお互いを必要としながらも、自動車からの難題に常に高炉側は受身の態勢、ここ数年間の価格交渉でもいつでも劣勢にたたされてきている。

 今回のこの件については新日鉄には同情的ではある。バブル以降のコスト改善努力のほとんどを自動車側の購買買い叩きのために吐き出し、かつ異常なまでの納期・品質への注文のため、工場側や自動車担当営業はかなり疲弊していたとの話も良く聞く。

 愛憎渦巻く、両者の関係は今後注目すべきところではあるが、そんなにドラマのような話は投資判断には不要なもの(笑)。

 おそらく今回のサプライズの真実はメッキ・薄板ラインの能力不足がネックが理由であろう。事実ヒアリングでも、そのようなニュアンスの回答が得られている。
 これは新日鉄だけでなく、JFEを含む他社もほぼ同じ状況であろう。各社ともここ数年の間に高炉の容積を拡大したものの、他工程の設備投資までは及ばず下工程がボトルネックとなって、各社とも量を出したくとも出せないというのが真実に近いと思われる。

 では、高炉は下工程に投資をするか?
ここが今後高炉各社の競争力を判断する鍵となろう。

 高炉各社は投資には慎重な姿勢を崩さず、今後もタイトな状況が続くであろうと予想されるが、逆に下工程への投資がアナウンスされたときは注意が必要である。


■鋼材調達のアナウンスを裏読みすると

 上記の日産のケースでは、調達できない分は海外からという話もでていたが、はっきりいってこれはうまく行かないものと思われる。

 鉄鋼業はその扱う物品の特性からリージョナルな市場環境におかれることが多い。なぜならば重量があるので、輸出をするのには不向きであり、あえて輸出、もしくは輸入する場合には輸送費を払ってでも、手に入れる必要のあるものに限られる。

 日本の高炉各社の技術はかなり高い技術力を誇っており、なかなか真似が難しい。事実、韓国車の最高級車のボディには日本の鋼板が使われている。
決して韓国の浦項総合製鉄(ポスコ)のものを使っているわけではないのだ。
 ちなみにポスコが得意なのは、作り込みが比較的容易な鋼板を大量に生産して、操業度を上げて、トータルのコストを下げて勝負という戦法を得意としており、決して技術力が高い訳ではない。コスト競争力という意味では特筆すべきだが。

 これはアジアの高炉全般に言えることであり、共通した戦法でもある。
故に世界各地で現地生産をしたい自動車各社は日本の高炉にグローバル供給体制を確保すべく、現地鉄鋼メーカーに技術供与を強く求めているといわれている。

 事実、トヨタの欧州進出にともなって、新日鉄はフランスのアルセロールと技術提携をし、昨年は中国生産をにらんで上海宝山とメッキラインの会社を折半で作る計画を発表している。

 これらを考えると海外から輸入して調達するというのは自動車については困難であると考えたほうがよい。

 日産からまたサプライズがでる可能性は否定できない。
自動車他社についても同様で、注視が必要であろう。
(Kiwi)

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