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減損会計について

JUGEMテーマ:株・投資


◇減損会計とは何か?
 減損会計という言葉、もう既に市民権を得たかのように使われていますが、説明してくださいと言われるとちょっと苦しいという方も多いかと思われます。

会計ビックバンとして近年色々な会計制度の変更がなされてきました。
連結決算、CF計算書、税効果、退職給付会計、今はリース会計のあり方も話題によく上っていますね。その中でもかなり重要なのがこの減損会計です。

減損会計の本格適用は2006年3月期決算からですが、早期適用は既に始まっており、色々な会社が減損会計を適用しています。

では一体減損会計とは何なのか?
一言で言うとすると、「固定資産の時価評価化処理」でしょう。


◇減損会計の本質

では具体的な解説をしましょう。
固定資産の時価評価化処理といってもピンとこない方もいらっしゃるかも知れません。

噛み砕いて言うと、持ってる固定資産の棚卸をして簿価が時価よりかなり値下がりしている場合、その下落分は既に失われた価値としてバランスシートから落としてきれいな状態にして、その損失を認識しましょうということです。

例えるなら10年前に10億で買った自社ビルがあるとします。現在の時価は半分の5億円まで価値が下がっているとします。10億−5億で5億円の損が出ているわけです。

今までであれば、会計上これはこのビルを売却しない限り、この5億の損失は認識されません。なぜなら会計は実現主義を採用しているからです。
(昨年度水曜版でやりましたよね(笑))
つまりこれは含み損といわれるものになるわけです。

しかし、減損会計とはこの損をバランスシートに載せている事を是としません。
つまりバランスシートの中身を時価評価しなさい、それできちんと損がでていれば認識してPLに反映させなさいといっているわけです。


◇時価という評価

今まで上記では時価評価といっていますが、では時価というのは一体なに?
というところに焦点を当てます。

通常、時価といえばその評価を行う時点で市場で売却が可能な評価額ということができると思いますが、この”市場で売却が可能な評価額”というのが曲者です。

例えば株式のようなものは市場があり、多数の参加者がその時点での妥当な金額を提示して売買が成立するわけです。故にそこで形成される価格はおおむね透明性があると考える事ができます。

他の市場があるが透明性に欠ける場合、もしくは取引が頻繁でないため、価格の妥当性が評価できない場合はどう評価すべきなのでしょうか?

減損会計では、その場合には資産の評価をキャッシュフローの創造能力ではかります。つまり収益還元法と言われる方式で評価します。

キャッシュフローを生み出さない資産は価値がないと見なされ、減損対象となります。(正確に言うと、減損の兆候があると見なされ、減損するかどうかの判断を行います。例えばキャッシュフローが一時的に赤字であったとしても、市場での売却価値が高いと見なされる場合は即減損の対象とはなりません。連続してキャッシュフローが赤字でかつその回復が見込めない場合は当然減損対象として考慮すべきです)

市場価格と収益還元法で行った価値がある場合はどちらか高いほうをもって減損額を計算します。


◇減損会計が市場に及ぼす影響は何か

では減損会計が及ぼす影響は一体なんでしょうか?

それは会計数値の透明性が確保されるということにつきます。
故に投資家から見た財務諸表の正確性がより高まるというメリットでしょう。

但し、バランスシートに負の遺産が隠れており、それが一般的に認知されていない場合、サプライズが発生することは避けられないでしょう。

経済的な効用から考えれば、売却時に損失を明らかにするのか、それとも前倒しにするかだけの差なのですが、既に死に体のゾンビ企業をあぶりだすのには有効です。
これにより市場から退場すべき会社が退場させられ、より有効に投資が生かされるというところにこの制度の意義があるわけです。


◇減損適応のためのケーススタディ

では少し考察のためのサンプルを出してみましょう。

○日立キャピタル(8586)

日立製作所はUFJ銀行と2002年7月にITアウトソーシングの契約について合意しています。

内容は

・UFJ銀行の勘定系システムの開発運用業務を日立に委託
・期間は2002年10月から10年間
・金額は10年で約2500億円をUFJ銀行が日立に払う
・UFJ銀が保有していたソフトウェア資産は日立キャピタルが譲渡を受け
 それを日立にリースする契約、金額は約500億程度

となっています。

ここで注目すべきは日立キャピタルがソフトウェア資産の譲渡を受けるということです。

UFJ銀はご存知のとおり、東京三菱FGと2005年10月に合併することで基本合意しています。
その際、UFJ側のシステムがどうなるのか?が問題です。

今回の場合はUFJ救済の意味合いが強いので既存のシステムが廃棄される可能性があります。

その場合当然ながら、譲渡されたソフト資産はキャッシュフローを産まないことになり、上記で書いた減損の兆候があることになり、最終的には減損適用するかどうかの判断がおこなわれることになります。

この場合はUFJ銀のための勘定システムなので、他に転用することが困難かつ、誰も買い取ることもないでしょうから売買価格も成立せず、価値0の評価で減損対象となるものと思われます。

となると日立キャピタルはどういうことが起こるでしょうか?

プレスリリース通りの500億で譲渡を受けたと仮定します。
無形固定資産は通常5年定額償却なので、合併時までの3年分の約300億が償却費になり、残りは200億です。

この時点で減損会計が適用されると200億の特別損失の計上ですね。

日立キャピタルの2004年3月期のPLは

営業収益:1,095億
営業費用:  878億
営業利益:  217億
経常利益:  217億

なので減損会計適用時ではほぼ経常利益が吹っ飛ぶ計算になります。
まさにサプライズ発生というところでしょうか。


◇サプライズシナリオを超えて

ついでなのでもう少し踏み込んで上記シナリオを検討してみます。

通常合併時のシステム統合には以下のパターンが考えられます。

1)両銀行のシステムを並列で構えつつ、ハブアンドスポーク方式で対応
2)どちらか片方のシステムに統合

ここで注意するのはシステム統合が業務系ではなく勘定系というところがネックなのです。
勘定系はまさに銀行の出納業務をつかさどり、全てのお金の流れを把握するためのシステムです。故に勘定系=銀行の命といっても過言ではないでしょう。

もしこれが業務系ならば、UFJ救済の色合いが濃い今回の場合、当然東京三菱側にシステムを切り替えるのが普通なのですが、勘定系はそのようには行かないのではないかと予測することも可能です。

理由はUFJのユーザの多さで、現状の東京三菱側の勘定システムに移行したくても、システムのキャパシティの関係から単純に移行できず、いったんは並列システムで業務を開始という可能性も捨て切れません。(ちなみに東京三菱、UFJのシステムの詳細は私は知らないのであくまでも仮定です)

そうなった場合は移行までにさらに時間が費やされることになり、5年の償却期間をクリアしてしまう可能性があります。この場合は減損会計が適用される可能性は低いでしょう。

減損の適用はその資産の有用性の判断であり、状況によっても変わりうることがあるということです。
ここの部分を見極めるのは難しいですが、もしかすると減損適用→その後資産価値が上昇して含みが発生というような企業も今後でてくるかも知れません。

減損を適用した企業の資産について調べてみるのもバリュー投資の一つの手法として有効になってくるのではないでしょうか。

(Kiwi)

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