<< 株式投資で人生を変える(39) | main | 億の近道2007/02/21 >>

やる気を考える その2−能力の差は2倍 意識の差は100倍

〜凡人をプロフェッショナルに育てる〜

前回は、やる気のあるものとないものの差について書きました。
やりたいことを見つけた者とみつけられない者の差について。
本当に好きなことに打ち込める幸せについて。
それは株式投資でも同じことではないかと。

「好きこそものの上手なれ」

株式投資が好きでしょうがないという人に投資をしてもらいたいと。

さて、もう何年も前のことですが、日本電産の永守社長とお会いしたときに、
「人間、能力の差なんてせいぜい2倍。でも、意識の差は10倍、100倍。人の採用でもっとも大切なことは、やる気」であるとおっしゃった。

こんな話もされた。
ある大手大企業を辞めて、永守さんの日本電産で働きたい優秀なエンジニア(=能力の高い人)がいたので採用した。

しかし、そのエンジニアは、
「少し長めの休暇がほしい。長年働き詰めだったので、家族サービスがしたい」
「前の会社では家族サービスがままならなかった。」
「せっかく辞めるので、今度、家族をつれて世界一周旅行に行きたい。」
「職場には旅行後に、参ります」と。

採用がその場で取り消された。

そのエンジニアは、優秀だったのかもしれませんが、やる気、意識の差で、不合格となったのです。

会社が好きで、働きたくてうずうずしているなら、
「月曜日の朝が一番楽しく、金曜日の夜がもっとも悲しい」(永守社長)はずだ。

■凡人を一流にする好循環を意識的に再現することはできるのか

確かに、やる気は大事です。
やる気は、長期的に、能力を高め、スキルを磨きます。
スキルが高まり、能力が開花すれば、さらにやる気になります。

この好循環が、ただの凡人を一流のプロフェッショナルに押し上げるポジティブなフィードバックであるといえましょう。

しかし、「やる気、意識の差は、大切だ」なんて、わかりきったこと。

わたしたちにとって、最大の問題は、
「やる気はないとはいわないが、いまは、どうもやる気になれない事柄が多い」
ことです。
やる気を阻害する職場の環境や人間関係を取り上げたらきりがありません。

前回、野球少年の話をしました。
やりたいこと、本気で打ち込みたいことが見つかった人は強い。

しかし、どうしたら、それほど打ち込めるものが見つかるのでしょうか。
今回は、やる気について、少し考えてみたいと思っています。
「凡人を一流にする」人事教育システムはあるのでしょうか。

好き→本気で取り組む→スキルが高まる→評価が高まる→ますますやる気になるというフィードバックをどう組織としてサポートできるのでしょうか。
一流を育てるプロセスは再現可能なのでしょうか。

企業の長期的な業績基盤は、現場の士気にかかっており、企業にとっては、そこで働く社員が、企業内で、生きがい、やりがいを見出してくれることが、企業の発展に寄与するでしょう。

また、社員にとっても、やりたいことをひとつだけに定め、専門性を高め、スキルを磨くことが、当人の長期的な人生の目的に適うはずだからです。

わたしのこのコラムでの示唆は、
「やる気を導く方程式は存在する」です。

それは、個々人の資質を活かすための職場の環境つくりがもっとも重要である、
というものです。
職場の環境とは、まさに、人間関係です。
上司、先輩、部下。
それぞれがどう振舞えば、みなに「魂をインスパイアする」ような組織ができるのでしょうか。

魂がインスパイアされた、やる気でみなぎる人間とそうではない人間。
まずは、わたし自身の限られた経験談からスタートしたいと思います。

■ 目的のない時間

最近、就職活動が始まったようで、よく黒いスーツを着た女子学生を電車で見かけます。
わたしたちが学生だったときに比べれば、今の学生は、勉強をするようになっています。
資格も在学中に取っている人も多く熱心な学生が多いので感心します。

わたしは結局、13年間も大学に通ったのですが、最初の大学を卒業するとき、就職のことをまったく考えていませんでした。
ただ、「好きなことをして暮らしたい」と漠然と考えていました。

卒業しても、具体的に、どうしたらよいのか、どうしたいのか、本当にわからなかったのです。

ピアノ弾きのアルバイトをしていたので、漠然とジャズミュージシャンになりたいと思っていました。

音楽仲間は、アマテュアとして活動を続けるために、時間に余裕がある公務員になりました。
しかし、わたしは、音楽をやるために公務員試験を受けたり、試験勉強に打ち込んだりすることはできませんでした。

どうしたらよいのかわからないまま − 時間だけが過ぎていきました。

ピアノが少し弾けるぐらいでは、技術の差は一流のプロと比べれば、歴然。
何十年と練習しても、プロの境地には行けないのではないかと思っていました。

あるいは、これだけ音楽に打ち込むことができたのだから、音楽をあきらめても、何か他のものにだって本気で打ち込むことができると考えていました。

しかし、打ち込めるものが見つかりません。

■ プロになった同級生

その一方で、友達は、USのバークレー音楽院に留学。
そのままNYに住み着き、数年前にようやくCDデビューを果たしました。
学生のとき、それほど実力に差はなかったのですが、強い意志で道を切り開いた友達をうらやましいと思いました。

わたしだってやる気はあったのですが、それを形にするだけの資金力もありませんでした。
友達も資金力はありませんでしたが、夢を語り、奨学金や地元のロータリークラブや親や親戚から援助を引き出し、留学をしました。

わたしには、結果的に、それだけの熱意がありませんでした。
いま思えば、技術の差は、やる気や意識の差で乗り越えることができたのにと悔やむこともあります。

あきらめるべきではなかった。

■ アホな妄想で時間を浪費

卒業にあたって、「いかによいところに就職するか」ではなく、「いかに就職しないか」がテーマでした。
なぜ、働くのか?
そのころ、働く気、つまり、やる気なんて、全然ありませんでした。

「いかに人に使われずに人生を生きられるか」、
「いかに働かないで暮らすか」という可能性を求めていました。

寂れた漁村で300万円の空家があると聞けば、現物を見て、この村で哲学者になれないかと思っていました。
食べ物は、海に潜ばなんとかなる。
村の人たちと人生について語り、野菜をもらえないかな、などと本気で考えて
いました。
いや、やっぱり山にしよう。廃屋のような山荘で森で暮らすというのはどうだろうか、などと考えていました。
いや、やっぱり世界中を放浪してみたい。
いや、有り余る時間を勉強につぎ込み、司法試験でも目指してやろうか、などと思ったりもしました。
要するに、箸にも棒にもかからない世間知らずのアホだったのです。

夏になれば、どれだけ黒く日に焼けるかに挑戦し、真っ黒になってはみたものの、黒人には到底かなわない。

秋には、海に毎日行き、沈む夕陽をみるために、あるときは友達を誘っていろんな話をしました。
また、あるときは、ひとりで、海辺で寝転がって星が出るまで考え事をしていました。

単なる暇人だったのです。

■ やる気なし

就職活動のことを就活というらしい。
想定問答集や身なりやOB訪問など、活動は何ヶ月も続くようです。
何社も受けたりするようです。

しかし、時代によっては、まったくやる気も能力もないような若者に対しても、企業が門戸を広げていた時期がありました。
バブル期です。
わたしは運がよかった。
振り返って、わたしが思いつきで就職できたのは、バブル絶頂期だったからでしょう。

わたしのような「やる気のない」学生は、他には見当たりませんでした。
来3月卒業生にとって、10月ごろといえば、内定がとっくに出ている時期なのでしょう。
わたしは、卒業まであと数ヶ月というとき、同級生に「就職って、どうやってするの?」と聞いてみました。
教授に相談すると、「電話帳で探して企業に電話したら?」と一言。
下宿で電話帳を開いて、証券会社に電話をして、採用してくれと頼んだら、すぐにOKがでました。
電話一本です。

放浪資金をためるために、ボーナス目当てで証券会社に行き、2−3年で辞めるつもりでした。
人事部の方が、熱心に証券業界の魅力を語るのを、ふーんと聞いているだけで、
何を言っているか、ちんぷんかんぷんでした。
(本当の話、就職するとき、証券会社の中で、どの証券会社が一番大きいのかも知りませんでした。)

就職しても、全然、働きませんでした。

■ やりたいことを見つけた

上司は、新ビジネスを開発する責任者でしたので、新しい証券ビジネスのアイデアを出すような仕事でした。

まわりの先輩は、一芸に秀でた人で、デリバティブの信託業務知識なら負けないとか、会計の知識なら負けないとか、プロの専門家が回りに沢山いました。

その専門家たちは、「全然、やる気なんてあらへんでー」「アイデア浮かばんから、さっさと帰ろうー」といって、定時の5時に帰ってしまう。

これがよかったのです。
新人にも、プレッシャーがない。

お局さんから、「あなた、新人。がむしゃらにがんばって、倒れるぐらいでちょうどよい」とはっぱをかけられました。
そんなアドバイスをいただいても馬の耳に念仏です。
「いえ、結構です。だって仕事、つまりませんから」と答えていました。

わたしは、オプションの理論にはまってしまい、朝から晩まで本を読んでいました。
上司が、何を読んでるの?と机の上を除くので、ばれてしまったのですが、そのとき、高校生が読むようなレベルの低い「確率統計の問題集」をやっていたのです。

上司は、ふむふむといいながら、その本を取り上げて、読み始め、「これ、ちょっと貸してくれー」といって行ってしまいました。
上司は、「この会社にいるうちに、2−3回、仕事してくれよー」なんていっていました。
(証券会社は、ワンショットのディールが何百億、場合によっては何千億なので、1つや2つのディールをまとめると生涯賃金程度の利益が会社に入る)。

その後、自分で、新商品を開発したり、自分でつくった商品を自分で営業に行ったりしたのですが、あるとき、寮に帰る途中、歩いているときに、急にアイデアが浮かんだのです。
先輩から与えられたプロジェクトだったのですが、歩いているときに、「そのプロジェクトは、こうすれば上手くいくはずだ」という確信が得られたのです。
すぐに職場に戻って、先輩の姿を探しました。
先輩が、「お、どうした?」とびっくり。
一度、「お疲れー」といって、帰ったはずの新人が戻ってきたからです。
わたしは、いきなりアイデアを先輩に話し始めました。
先輩は、「面白いな、やってみろよ」とゴーサインを出しました。

そのとき、わたしは、証券業界でやりたいことを自分から見出したのです。
その後は、仕事は面白いと思え、職場に行くことが楽しくなってきました。
村の哲学者になりたいと、たわごとを言っていたときから、3年もかかったのです。

結局、わたしは、ひとつのことしか熱中できない性格でした。
ひとつのことをやりたいようにさせてくれれば、それが何であろうと、面白おかしく考えることができたからです。

■ 職場の環境

やる気のない新人にとって、職場環境がどれだけ助けになったかわかりません。
上司は、以下のことを守り、導いてくれました。

1)やる気のないものには、なにも強制しない 

遊んでいても注意しませんでした。
コピーやワープロ打ちなどの雑用もやらせませんでした。
給料もらって遊んでいるのですから、上司にとっては相当の忍耐が求められます。

2)長いスパンでコミットする

やる気のないものにすぐにやる気を出せと命令しても逆効果。
5年間はものにならないとあきらめて、「20年間で2−3回の仕事をしろ」といわれていた。
特に「最初の2年は、何をやっても箸にも棒にもかからないので、給料泥棒になれ」といわれていた。

3)プロセスに文句をつけない

新人はガイダンスが必要です。
しかし、人によってやり方は違う。
わたしの場合は、初歩の初歩、高校の数学から自学しなければなりませんでした。
しかし、その高校の参考書をデスクで勉強していても、咎められることはありませんでした。

4)上司自らが楽しく仕事をする

先輩や上司は、いつもリラックスして、他人に当たることはありません。
先輩同士、仕事中に将棋をしたりしていました。

5)上司が早く帰る

上司は心がけて定時に帰っていました。
5時にはいません。
わたしも5時に帰って、英会話に通ったり、単語を覚えたりして、自学を続けることができました。

6)他の部からの防波堤になる

上司は、他の部の目を気にしませんでした。
批判を封じ込めていました。

■ やる気が生まれた後

やる気が生まれた後は、もう、なんでも楽しく、覚えなければならないことも率先して覚えるようになります。
しまってくるし、労働時間も自分から進んで長くなっていきます。

わたしの場合も、上司の態度が明らかに変わりました。
逆に厳しくなったのです。
議論すれば、甘いところをコテンパンにし、ボロカスにいいます。
これは、わたしにとっては、発奮材料でした。
やる気になった者へは、逆に、厳しく。
プロの厳しさ、仕事の奥深さを教えるのです。

やる気になったと認めるかわりに、厳しくプロ根性を植え付ける方針に変わったのです。
今思えば、すごい人でした。

1)ノウハウはすべて他人に教えろ

こうすれば手数料が上がる、このビジネスは上手くいくというノウハウ。
また、自分が勉強してわかったことはすべて他人に公開せよと教わりました。

今でも覚えています。上司はいいました。
「お前にいいことを教えてやろう。」
「ノウハウをすべて惜しみなく公開するのがノウハウ」と。

このメルマガもそういう意味で、そのときの上司の教えを守って書いています。

サラリーマンの中には、自分の知りえたことを隠す、あるいは、株の運用でも、ノウハウを隠す人がいます。

しかし、ノウハウなど、たかが、数ヶ月1年や2年で身に付くもの。
ノウハウなんて知れているのです。
そうではなく、ノウハウを他人に教えることで、それ以上に自分が成長する。

プロになるためには、ひとつのノウハウに留まっていては駄目です。
数年間だけ食って行けるだけのノウハウに何年も留まっていては何十年という人生を台無しにしてしまいます。

手に職をつけるといいますが、それだけでは圧倒的に足りない。
ひとつのノウハウは、人にすべて公開して、忘れ去り、捨て去る。
捨て去り、次のステップに行く勇気を持つ。

捨て、見つけ、捨て、見つける。
その繰り返しを何十年と積み重ねて、その道のプロになれるのです。
そのことを一言でいえば、

ひとつのノウハウだけに留まるな − でしょうか。

(株の運用をノウハウであると思っている人が多いことには唖然とします。
運用はノウハウではありません。運用とは価値観であり、ハートで行うものです。)


2)他人を助けろ

上司は、手数料の上がっていない部門の生産性をいかに向上させるかを考えていました。
バブルがはじけて、事業法人が財テクをやめたため、証券会社の事業法人部は手数料が落ちていました。

「事業法人マンと対話しろ」ということで、よく事業法人の方に、いろんな会社に連れて行ってもらいました。
昔は手数料が上がった人が、今は上がらないとなると、わたしのような若造の話でも聞いてくれます。
弱った人、困っている人の助けになる仕事やニーズを創出できれば、一石二鳥です。

*ノウハウはすべて公開せよ。
*困った人は助けよ。

この2つの教えは、職場では徹底していました。
社内で勉強会を開催し、自分が学んだこと(ノウハウ)を法人部(困っている人々)の前でプレゼンするのです。

■ やる気のない人はいない

「やる気はあるが、いまは、やる気にならない。」

そういう方が大多数ではないでしょうか。

ここで書いたわたしの経験など、特別なもので、一般化できないとお叱りを受けるでしょう。
第一に、商品を開発したり、コンサルをしたり、そのようなクリエイティブな職場ばかりではありません。
配属先が、ルーティンワーク中心であったり、事務作業を黙々とこなすような職場だったらどうなのでしょうか。
あるいは、かっこいい先輩ばかりではありません。
嫌な先輩もいます。後輩に仕事を押し付ける人もいるでしょう。
不要な雑用をやらせて、不必要な仕事を「急ぎでね」なんていう人もいるでしょう。
本質でないこと、身なりや服装や対応を注意されたりするでしょう。

わたしがたまたま運がよく、よい上司で最高の職場だったのかもしれません。
嫌な上司がいれば、すぐにやめていたでしょう。
嫌な先輩がいれば、やりたいことなど、見つからなかったかもしれません。

そう考えると、せっかく、企業が、能力あふれる若者を大量に面接し、その中から、やる気のありそうな者を採用したとしても、本当に大切なことは、「その後」なのでしょう。

企業は人なりと申しますが、全くそのとおりなのです。

職場の環境が個人のやる気に密接に関わっているのです。
あるいは人間関係が良好ではない職場では、どんなにやる気のある、モチベーションの高い人であっても、萎えてしまうでしょう。

人間であれば誰でもある程度の能力があり、本質的には、やる気は誰にでも備わっています。
そうであれば、どんな人だって、すばらしい戦力になるはずです。
やる気を持続させるためには、ビジネスの環境だけではなく、職場の環境こそが大きく影響するのではないでしょうか。

■ 就活 アドバイス

わたしが証券会社をボーナスの高さで選んだというのに、「楽して儲けたい」という気持ちが、若者の間にあったとしても、それを否定できません。

就職活動をしている方に、助言したいことは、企業ではく、上司を選べということです。

この人となら、一緒に働けるという人を選べ。

実際に、職場を見て、インターンを直接、その職場の先輩に申し込み、企業ではなく、職場に雇ってもらうことです。
いや、職場ではなく、その先輩、その上司に雇ってもらうことです。

企業の現場では、人事部ではなく、職場の要請に基づき、中途採用を行っています。
新人だから新人枠で入るという発想ではなく、中途採用の窓口で、職場の人に新人として会うのもよいでしょう。

わたしは就職のアドバイザーではないのですが、長く働いた経験から、上司や先輩といった要素が、職場をつまらなくもし、楽しくもするということを知っています。
上司は選べません。運悪く嫌な上司に当たってしまうことが多いのです。
ですから、君たち(就職活動をしている学生)が、企業ではなく、上司を選べたらいいのになあと思ってしまうのです。

■ 雑務をやめる勇気

わたしは、ボトムアップで企業調査をして投資判断をするリサーチャーです。
製品の評価や企業訪問を重視しています。
ですから、企業主催の説明会に出席することは滅多にありません。
自分の興味が向かう、取材をしてみたい人や企業に直接会いにいきます。
しかし、どうしても、個別取材ができない場合には、決算説明会に出席することがあります。
説明会会場には、50人から、場合によっては100人を超えるアナリストが集まることがあります。

質問するのは、ほんの数人です。
一番前に座っている人たちです。

残りの95%の人たちは、あまり熱心には見えません。
20%ぐらいの人たちは、眠っています。
アナリストの中には、個別取材を行わず、説明会にだけ行くようなアナリストもいるようです。

運用業界も沢山の問題をかかえ、職場環境も劣悪な場合もあるのでしょう。
不要と思える雑務、報告義務、年々強化される管理強化やコンプライアンスなど。
「買い」とも「売り」とも思えない銘柄を分析するのは疲れます。
アナリストというものは、「買い」ではないかと思って、調べるときは、本気モードになります。
ですから、「買い」ではないかなあと思える銘柄を自分で探させ、自分のちからで推論し、その推論を取材によってテストしていく自己完結型システムを用意してあげなければ、アナリストは成長しません。

また、長時間労働は、発想能力を落とします。
アウトプットがインプットよりも多い時期が長引けば、アナリストは「擦り切れて」「使い捨て」になります。
いつ、いかなるときも、アナリストとは、インプットがアウトプットの10倍以上必要な職業なのです。

働く人たちが、ベストコンディションにはなく、いつも疲れて(過労気味)いるというのが日本の問題のひとつではないでしょうか。

雑務の中でやめたいけど、やめられないものを、この際、思い切ってやめてほしいものです。

そして、
余裕を取り戻し、
精気を取り戻し、
よい仕事をして、
物事を極めるロードマップを着実に歩いてほしいと思っています。

■ 再現性

凡人をプロフェッショナルへと昇華するシステムの根幹的な哲学とは「余裕」ではないかということが、今回のコラムの示唆です。
ただ、わたしの個人的な経験からの限定的な見解ではありますが。

■ 今回、示唆したかったポイント

プロフェッショナルを再生産する組織的な基盤は、「余裕」なのかもしれません。
なぜならば、
1)時間的な余裕はアウトプットよりもインプットを可能にする
2)精神的な余裕は正しい推論、ゆっくり考え、ゆったり決断することを可能にする
3)余裕は、やる気をインスパイアする
4)余裕は、ベストコンディションを可能にする
5)余裕は、アイデアを豊富にする
6)余裕は美しく、不敵
だからです。

■ まとめ

●職場のさまざまな「余裕」が、プロフェッショナルを再生産するシステムではないのか。
●ただの凡人をプロフェッショナルにするには、やる気と熱意、さらに時間的余裕と精神的な余裕が必要だ。
●やる気のない人はいない。ただ、やる気にならないだけである。
●やる気は本人だけの問題ではない。周りのサポートが必要である。
●サポートは長期で、かつ、見返りなしの無制限に与えられるべきだ。
●ノウハウを捨て、捨てたノウハウはすべて公開せよ。
●困った人を助けたいという気持ちでニーズを具現化せよ。
●楽しくなければ会社じゃない。Do enjoy every moment!
●企業ではなく、職場を選べ。職場ではなく、上司や先輩を選べ。
●結果を出せるだけの実力を長期にわたって磨く努力を。
●やる気がでれば、能力やスキルは自然と高まり、スキルや能力が高まればやる気もますます出る。


■「株式の運用にとって、運用のノウハウとはそれほど重要ではない」
■「ノウハウさえあればよい運用ができると思うのは間違い」
■「ノウハウには限界もあり賞味期限もある」
■「テクニックよりも投資家マインドが重要だ」
■「株式市場は、長期的には、よい職場環境にある運用者が、そうでない者よりも、よい結果を残すところ」


■ P.S. 上司からの手紙

和光証券時代に、上司は、
「君のやりたいこと、将来希望する業務について、レポートを書くように」
指示しました。

互いに議論し、やりとりは、4ヶ月間に渡り、4−5回、レポートは行き来しました。
今後やりたいことを数ヶ月間も議論しているなんて!
わたしの給料の3分の1が、ただ、「何をやりたいか」ということを考えるだけに費えたのです。

そのレポートを押入れから出して、13年ぶりに読み返しました。
わたしは、入社した年(90年)に、新人ながら、すぐに日本興行銀行に出向になり、その後、2年間は、銀行で雑務を行うという「冷や飯」を食わされました。
本当にやりたいことができるようになったのは、和光証券に復帰した92年からでした。

わたしは上司にこう訴えています。

★わたしからのレポート
「●●部長、平素は心配をおかけし申し訳なく思っております。部長の置かれている状況、当部の置かれている状況、そして、当社の置かれている状況を考えると、楽観的で希望的で、現実的でない空論を依然として振り回しているわたしのことを、さぞ、にがにがしく思っているのでしょう。
〜中略〜
わたしは、最も非合理的で無駄の多い人生を送りたいと切に望んでいます。
わたしが人生に望むことは、人間らしさの実感です。
ですから、当社の状況を知れば知るほど※、見込みがないことをやってみたくてたまりません。(※これが書かれた94年当時、和光証券は経営環境が非常に悪かった)

〜新しい事業についての説明〜(省きます)
(つまり、上司に、なんとか社長を説得して、この事業を認めさせてくれと切望している)」

★上司からの返信
部長からの返信はこうでした。

「許可はします。経営陣への説明も君がするようにします。作ってみてください。しかし、君の思う結論がでない場合、君は次の行動をどうとるのでしょうか。会社は可能性が低いこと対して人・カネ・モノを投入できないだろう。そうなったとしても、結論は早く出すな。なぜなら君には、まだ時間がある。後、2−3年は早い。
違う上司、違う部署の窓から、物事を再度、見つめなおせば、違う見方になるかもしれません。
〜中略〜
早いもので、君とのつきあいは4年以上たちました。
君は、思っていたよりも優秀なのだろう。順調に成長している。
このレポートで書いているとおりの君のファイトなら、どこでも生きてゆけるであろう。
しかし、ひとつだけ、もう一度、考えてもらいたい。
つまり、時間的な余裕がなければ、結局、アウトプット部分が多すぎて、君の才能は擦り切れて行くのだということを。
〜中略〜
全体的な感想は、現実と乖離している面が多い。
それは、君の経験、年齢からみてよいと思う。
〜中略〜
もっと専門性が身に付き、同時に、時間的余裕が持てる部への転勤を考える。※
(※上司は会社をやめて独立する計画だった。彼が去った後、残した部下をどうするかを考えていた)

最後に、一言いわせてもらいたい。君のレポートのように大きな仕事をやりたいと思っているなら、一時の感情で「営業でも」というようなことは言わない方がよい。自分の目標はもっと大事にしてもらいたい。」

わたしは、その後、株式調査営業の部に転勤し、株式調査の仕事を始めたことが、現在につながっている。

やる気とは、なんであろうか。

それより、わたしは、わたしの人生を形作ってくれた人生の恩人に対して、どうお返しをすればよいのであろうか。

■短期の停滞が長期の展望をつくる

大学とは、古い世代にとっては、人生を決めなくてもよいモラトリアムでした。
「いまは、何をやりたいのか、決めなくてもいい。わからなくてもよい。大学に行って、本当に何がやりたいのかを見つけて来い」
多くの親はそんなことを言って、こどもを送り出したものです。

大学は、生徒や生徒の親がお金を払う。
しかし、会社は、社員はお金をもらう。
お金をもらっている以上、「何がやりたいか」などと、考えられるような余裕はないのかもしれません。

確かに、若者は、
フリーターになる前に、
派遣社員になる前に、
学校に行っている間に、
何をやりたいかを決めておくべきなのでしょう。

ですが、社会を知らずして、企業を知らずして、業界を知らずして、職業を知らずして、やりたいことを決めることは、無理であることもまた事実です。

日本企業は、歴史的に、人材の育成には、とことん時間をかけていました。
ローテーション人事を行ってきたのも、視野を広げる意味合いもあったでしょう。

各企業がビジョンを定め、ミッションステートメントを採択しているにも関わらず、その企業の理念や理想社会への具体的なステップを、個々の社員が踏み出せずにいるのは、社員の責任ではありません。

職業人としての人生は40年も続くのです。
最初の数年間なんて、しれています。
会社といえども、自分のちからで、やりたいことを自力で見つけさせる、そんな会社が1社でも増えてくれればよいのになあと思っています。

わたしは、入社したその日のことをよく覚えています。
上司はこういいました。

「ここで、やりたいことが見つかればいいね」と。

Enjoy Every Moment!
〜Slow Investment ゆっくり考え ゆったり投資 〜
山本 潤


■変わらぬメッセージ:長期の読者に感謝■

99年に始まった億の近道は、16000人程度の読者で成り立っています。
長期間購読を続けていただいた読者が多い、古い読者が多いことが特徴です。

このメルマガ(火曜日版)では、多くの株式投資メルマガにあるようなことは行いません。
つまり以下のことはやりません。

●手っ取り早い情報(証券会社の格付けの変更など)
●何を買うべきか
●投資指南
●お勧め銘柄
●マーケットをどうみているか

わたしたちは「タダなのにすごいことが書いてある」メルマガを志向しません。
また、編集に時間をかけることもできません。

わたしたちが伝えたいことは、

●日本が欧米に並ぶ金融大国になるために日本人がもっと学ぶべきこと
●若い世代がワーキングプアにならないためにすべきこと
●株式市場は手っ取り早く儲けようとする投資家を貧乏にするという教え
●株式市場はゆっくり考え賢明に投資するものに富をもたらすという教え
などです。

いわば投資の実務家としての哲学や歴史観・人生観です。

わたしたちが目指すのは、「ファンダメンタル分析」宗教の普及です。

Enjoy Every Moment!
by 山本 潤 (やまもと じゅん)

<著者紹介>

億の近道に2000年3月に執筆を開始。
およそ7年間 毎週執筆してきました。
継続は力です!
昨年、念願の独立を果たす。
日本株ロングショートのヘッジファンドマネージャー。

(職歴)
1990−1997年
 和光証券国際本部
(1990−1992年日本興業銀行外国為替部および国際資金部へ出向)
1997年−2005年
 米系投資顧問クレイ フィンレイ インク ポートフォーリオマネージャー。
2006年1月より独立起業。
 エイム インベストメントでファンドマネージャー。
(学歴)
コロンビア大学院 電気工学科 工学修士。
(六本木裏通りの人生大学 夜間部卒。専攻は夜間泥酔行動経済学)
(主な著書)
 「インベストメント―米系バイサイド・アナリストの投資哲学と投資技法」(2001年イーフロンティア)
 「投資家から「自立する」投資家へ」(2003年パンローリング)
 「マンガ ファンダメンタルズ分析 入門の入門」(2004年パンローリング)

(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。)

calendar
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28      
<< February 2010 >>
selected entries
オススメ書籍

「投資実践ノート」
億の近道火曜版に執筆している石川臨太郎氏の実践を継続することによる投資手法の確立をテーマにした本。
億の近道有料メルマガ!
火曜日執筆者の石川臨太郎氏の有料メルマガです。 大好評配信中! 購読者を大募集しています。詳細は以下のページを参照下さい。
  なお、この有料メールマガジンの売り上げの一部は億の近道の発行運営に活用 されます。皆様のお申し込みをお待ちしております。
categories
archives
links
profile
search this site.
others
mobile
qrcode
powered
無料ブログ作成サービス JUGEM