ヴァンガード米国本社訪問記〜その1

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 昨年の10月にヴァンガードという世界最大級の資産運用会社(投資顧問会社)に訪問をしてきました。

 場所は米国のフィラデルフィア郊外にありまして、町の中心部から1時間ほど車で離れたところにあります。


 私たちが、毎年参加しているFPのカンファレンスが今年はフィラデルフィアでの開催であったので一緒に都合をつけて訪問させていただきました。


 まず、着いて最初に感じたことはその前年のディメンショナルファンドを訪問した時にも感じましたが、環境の良さです。

 都市郊外という事もあると思いますが、敷地は広大ですし、豊かな緑に囲まれていて資産運用の業界というものは、こうして必ずしも都会の真ん中である必要がないのだと強く感じるとともに、米国の多様性と豊かさを感じ取れます。


 ヴァンガードという会社は、1975年にジョンボーグルという創業者が、インデックスファンドという資産運用業界に新しい概念を持ち込むために作られました。

 インデックスファンドは、いまでこそ大きな存在になっていて、弊社でもお客様に推奨する一番の考え方になっていますが、このヴァンガード創立当初はなかなか世間に受け入れられずに事業が黒字化するまでに創業から6〜7年かかったそうです。

 顧客志向で、なるべく低い報酬でストック型のビジネスモデルというのは弊社も同様ですのでやはり現在世界最大級の運用会社であるヴァンガードでも創業当初は同じだったのだと大変感銘を受けました。


 ヴァンガードは会社の仕組みとしても大変ユニークな構造をしていて、ヴァンガードは自社の株式を自社内で構成しているファンドで保有しているという形式を取っています。

 したがって、外部の株主のために必死に収益を上げる必要がなくファンド保有者の為にしっかりと経営をしていくことが、ひいては自社の価値向上にもつながり、それがまたファンド保有者の為になるという自社のファンドへの投資家と利益相反が起こらないような仕組みづくりをしています。

 これもとてもユニークな発想ですので、ぜひ弊社でも顧問の顧客が引いては弊社の発展の利益を享受できるような仕組みづくりを考えてみたいと思います。


 また、こちらはメルマガなどでも何度かお伝えしていますが、現在米国では独立系のアドバイザー経由でファンドを購入するケースが増えています。


 ヴァンガードでも、

2007年には

1.個人投資家自身
2.機関投資家
3.独立系のアドバイザー

という順位でしたが、10年経過して

2018年には

1.独立系アドバイザー
2.個人投資家自身
3.機関投資家

の順番で資金量が多いとのことでした。


 したがって、ヴァンガードを中心とした最近の運用会社は、こうした独立系のアドバイザーを支援するような部門が急成長しているのが現在のトレンドです。


 次回は、ヴァンガードで見てきた米国運用業界の最新トレンドをお伝えします。


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今後日本が取るべき道は?



 昨年から連載でご紹介しているアジア開発銀行研究所所長の吉野直行さんのメッセージです。

 ⇒初回コラム  http://okuchika.net/?eid=8057
 第1回コラム  http://okuchika.net/?eid=8086
 第2回コラム  http://okuchika.net/?eid=8109
 第3回コラム  http://okuchika.net/?eid=8141
 第4回コラム  http://okuchika.net/?eid=8172


 5回の連載でお届けしてきました吉野直行先生からのメッセージも今回で最終回です。

 最終回は、今後日本社会、経済がどのような点に気を付けていけば持続的成長が可能な社会になるのかという吉野先生の提言です。


●高齢化、労働人口減少に対する対応

 日本の人口動態として、今後ますます労働力人口が減っていくというのは前回もお伝えした通りです。

 これに関して吉野先生は

1)人々がなるべく長く働くこと

2)高齢になっても働けるような労働力サポートのロボットを開発すること

の2点を挙げています。


1)人々がなるべく長く働くこと

 これに関しては、すでに65歳までの雇用延長、現在では70歳までの雇用延長など長く働くことに関して日本でも制度的な議論は起こっています。

 ただ、ここで欠けているのは労働生産性と賃金の関係性です。

 つまり、日本のこれまでの年功序列の賃金体系は、決してその人の労働生産性を評価した賃金体系になっていないので、定年後雇用延長になると、急に賃金が激減するというような現象が起こってしまうのです。

 そもそも、定年になる前から、しっかりとその人の労働生産性に合った賃金体系を組んでいれば、定年だろうが70歳であろうが、労働生産性に見合う賃金を払えば雇用主側は困ることは全然ないであろう。

という事を指摘しています。

 おそらく、私の経験でもホワイトカラーの労働生産性は、30代がピークでその後は管理職スキルでも磨かない限りは生産性は落ちているのではないかと思います。

 つまり、ホワイトカラー事務系は、30代が年収のピークで、その後は管理職でない限りは減退していくような賃金体系に改めるべきだという事になります。


 しかし、こうした賃金体系を見直して、みんなが70歳以上でも働ける体制になれば年金や社会保障の制度も現在のように手厚くなくても済むようになるはずです。


 そうすれば国家財政も大幅に改善するでしょう。


 もう1点は


2)高齢になっても働けるような労働力サポートのロボットを開発すること

です。

 これは、ホワイトカラーではなく、むしろ体を使う仕事

・工場作業
・労働作業

などの場合、70歳を超えても作業ができるようにする補助用のロボット開発が今後の日本を支えるビジネスになりそうです。


 また、こうしたビジネスやロボットの開発が進めば、遅れて高齢化社会に突入するアジア圏の国々でも日本が先端の高齢化国として取り組んできた商品がのちに販売できるようになります。


 こうした、労働体系の見直しと、高齢労働をサポートするようなロボットの開発が今後の日本経済の成長を担う大きな推進力になると見通しています。


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日本の移民政策の可否について



 昨年から連載でご紹介しているアジア開発銀行研究所所長の吉野直行さんのメッセージです。

 ⇒初回コラム  http://okuchika.net/?eid=8057
 第1回コラム  http://okuchika.net/?eid=8086
 第2回コラム  http://okuchika.net/?eid=8109
 第3回コラム  http://okuchika.net/?eid=8141


 第4回目は、はちょっとセンシティブなテーマにはなりますが、移民の議論についてです。


 先日12月8日に国会で「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立し、特定技能と呼ばれてはいますが、実質日本で人手不足の業界に外国人労働力を提供しやすくする法律であることは間違いありません。

 これに関して、吉野先生はあまり賛成していません。


 主な理由として、


・優秀な外国人は主に英語圏が仕事も生活もしやすいので日本語圏である日本には、本当に優秀な人は移住してこない


・したがって、日本で移民政策を拡大すると、いわゆる一流ではない二流、三流の人材が流入してくる可能性が高い


・日本社会では、まだ外国人受け入れについての議論が成熟していないので、社会的なコンフリクトや政治的なコンセンサスを得るのが難しい


ということが挙げられます。


 データを確認すると、平成29年度では、127万人の外国人労働者がいます(厚生労働省「外国人雇用状況」の届け出状況まとめ)。

 これは、日本の人口の約1%にあたります。

 10年前には48万人でしたので、ここ10年で3倍近くに増加しています。

 特に都内で生活している人は、人口比1%どころではないことは実感として持っていらっしゃると思います。

 私の居住するマンションでも、外国人の方が入居されていますが、やはりごみ捨てのルールなど守れませんし、生活面で周囲の日本人と基本的な生活習慣が異なるために、トラブルになるケースも多そうです。

 また、管理を担当する不動産会社の方でも実際には外国人対応まで出来ていない印象を受けます。


 もし、今後も移民受け入れの議論を行うのであれば、それは「人口動態」の議論とセットで行うべきであるというのが吉野先生の主張です。


 日本のように高齢化が進んでしまうと景気を回復させる手段としての金融政策も、労働人口が少なく金融資産(ストック)依存の人が増えるために効きにくい

 財政政策も、高齢化の中で限界消費性向が下がるので、効きにくくなる

 という事で、高齢化は金融政策、財政政策ともに過去ほどには経済をコントロールし難くなります。



 移民を入れる議論は、こうした日本の人口動態に変化をもたらす材料と、その経済効果についても議論した上で長期的に慎重に導入するべきだというのが吉野先生の主張です。


 次回は吉野先生メッセージシリーズの最終回です。

 今後の日本経済が集中するべきポイントについて解説していきます。


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経常収支のバランス



 先月から連載でご紹介しているアジア開発銀行研究所所長の吉野直行さんのメッセージです。

 ⇒初回コラム  http://okuchika.net/?eid=8057
 前々回コラム  http://okuchika.net/?eid=8086
  前回コラム  http://okuchika.net/?eid=8109


 第3回目は、経常収支のバランスについての議論です。



【経常収支のバランス問題は国内問題にあり】


 トランプ大統領が就任後、さかんに

「米国の経常収支の赤字が問題である。特に輸出、輸入に問題がある。」

という事を発言し、貿易不均衡と関税を中心とする貿易政策に熱心です。


 ここで、マクロ経済学をおさらいしてみましょう。
 以下wikipediaの解説を参照します。

「一国の生産水準をYとする。輸入をIM、輸出をEX、消費をC、投資をI、政府支出をGとする。すると、支出面から見たGDP(国内総生産)=Yとすると、Yは次のような恒等式で表わされる。

Y=C+I+G+(EX−IM)

(EX−IM)は経常収支である。

 ここで、租税をTとして上記の式を変形すると

(Y−T−C)+(T−G)−I=EX−IM

となる。(Y−T−C)は民間貯蓄であり、(T−G)は政府貯蓄であるから、貯蓄をS(=民間貯蓄+政府貯蓄)とすると

S−I=EX−IM

となる。つまり、経常収支(EX−IM)の大きさは貯蓄と投資の差に等しい。」


 ということで、経常収支とは国内の貯蓄から投資を引いた金額に等しいという事がわかります。


 ですから、日本としては米国の経常収支の赤字問題は、貿易政策にあるのではなく、米国内の貯蓄と投資のバランスにあるということを主張し、G20などの国際会議でも主張しています。


【日本と米国ではおかれた環境が異なる】


 また、米国は日本の経常黒字について強く非難をしていますが、これは両国の現在の環境によって見方も変わるはずです。

 日本国内の一番深刻な課題は、みなさんもご承知の通りの少子高齢化です。

 これから高齢化で就業人口が減り、少子化で人口自体も減少をしていく社会です。

 このような社会では、近い将来、貯蓄率が減少し、先ほど見たISバランスでも経常収支が赤字化することが目に見えています。

 そして、それは社会構造的な問題ですので、なかなか改善させることのできない経常赤字問題になることが予想されます。


 一方で、米国は海外からの移民流入を含めて、まだまだ人口増加や高齢化とは程遠い社会です。

 日本では、こうした将来に向けて、現在は経常黒字を積み重ねていかなければ、将来は経常赤字のファイナンスが難しいという環境にあります。


【日本の政治家はしっかりと説明するべき】


 結論としては、

 経常収支問題は、貿易不均衡の問題だけに矮小化するのではなく、国内の貯蓄投資バランスの原因についてしっかりと話をすること

 また、日本の場合には将来の人口動態を睨み、現段階ではこうした経常収支を黒字で積み上げていかないと将来の経常収支赤字のファイナンスに備えられない状況である

という2点について、しっかりと米国や国際社会の中で主張していく必要がある


というのが、吉野先生の今回のメッセージです。


 次回はちょっとセンシティブなテーマにはなりますが、移民の議論についてです。


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国有財産の処分方法について



 前回から連載でご紹介しているアジア開発銀行研究所所長の吉野直行さんの メッセージです。

 ⇒初回コラム  http://okuchika.net/?eid=8057
  前回コラム  http://okuchika.net/?eid=8086


 第2回目は、国有財産の処分方針、埋蔵金問題についてです。


 国有財産については村田和彦(財政金融委員会調査室)さんの「立法と調査」2018年9月号に現状がまとめられていたので、引用させてもらいます。

(オリジナルはこちら
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2018pdf/20180907055.pdf


以下引用です。


『国有財産行政の対象となる財産は、国有財産法(昭和23年法律第73号。以下「法」という。)
第2条及び附則第4条に規定されている財産をいい、具体的には不動産、船舶・航空機等の動産、有価証券などがある。法では、国有財産を「行政財産」と「普通財産」に分類している(法第3条第
1項)。

行政財産は、
1)庁舎、国家公務員宿舎、刑務所などの「公用財産」、
2)国道、河川、公園などの「公共用財産」、
3)皇居、御所などの「皇室用財産」、
4)国有林野事業のための国有林野の「森林経営用財産」

の4種類に分けられており、各省各庁の長が管理することとされている(法第3条第2項、第5条)。
また、行政財産は、原則として売払い、貸付け等の処分を行うことはできず、行政財産が不要となった場合は、各省各庁の長はその用途を廃止して普通財産とし、財務大臣に引き継ぐこととされている(法第18条第1項、第8条第1項)。

普通財産は、行政財産以外の一切の国有財産をいい(法第3条第3項)、原則として特定の行政目的に直接供されることのないものであり、例えば庁舎などの跡地、物納された土地、政府保有株式などがあり、原則として財務大臣が管理処分することとされている(法第6条)。

一部の各省庁所管の特別会計所属の国有地は、所管省庁が自ら処分する権限が認められている(法第8条第1項ただし書、同条第2項)。
近年は、国有財産の有効活用を図る観点から、財務省への事務委任を積極的に推進することにより、統一的ルールによる処分等が進められている。

国有財産台帳で管理されている国有財産の現在額は、毎年度、国会に報告することとされており、平成28年度末の国有財産現在額は106兆79億円であり、そのうち、行政財産は23兆4,645億円、普通財産は82兆5,434億円となっている。

また、国有財産のうち、土地の総額は17兆9,693億円であり、そのうち行政財産が13兆932億円、普通財産が4兆8,761億円となっている。
普通財産の土地のうち、在日米軍施設、地方公共団体等の公園用地等がその多くを占め、処分対象となる未利用国有地は4,234億円となっている。

土地の面積で見た場合、国有地の面積は87,650km2、国土面積377,971km2の約23.2%に相当する。
そのうち、行政財産は86,633km2とその約99%を占め、普通財産は1,017km2となっている。

普通財産のうち、山林原野等が845km2と83%を占め、未利用国有地は9km2と普通財産の土地の1%程度を占めるにすぎない。

なお、普通財産の土地のうち特別会計所属のものは、1,502億円、2km2となっている。』

以上 引用終了。


 引用の中でも

「行政財産は、原則として売払い、貸付け等の処分を行うことはできず、行政財産が不要となった場合は、各省各庁の長はその用途を廃止して普通財産とし、財務大臣に引き継ぐこととされている」

「近年は、国有財産の有効活用を図る観点から、財務省への事務委任を積極的に推進することにより、統一的ルールによる処分等が進められている。」

という事からも、国有財産については、なるべく有効活用の観点から、そして国の財政に貢献することを目的に売却処分されることになっています。


 しかし、吉野先生は、この国有財産の売却処分について疑問を持たれています。


 それは、売却処分を行って財政的に改善されるのは一時的な効果しか得られません。それよりもしっかりと国有財産を有効利用して、中長期的に活用できる状況にすることの方が長期的な財政改善に貢献することができるのではないかと考えています。


 つまり、例えば1,000億円の国有財産があるとした場合、

1)これを民間に売却してしまえば、その時点で1,000億円の国庫収入があり、国家財政が1,000億円改善します

2)これを有効活用し、仮に4%程度の収益性のあるものにできれば、年間40億円の収入があり、財政が40億円分改善します。そして、その効果が長く続くほど、国家財政に長期に寄与します。


 ここで、吉野先生が2)の案を支持するのは、主に世代格差や高齢化に伴う影響です。

 1)の案は、一時的に改善しますが、それだけで現在の現役世代にしか影響がありません。
 2)の案では、中期的に改善を促すことで、その効果は現役世代のみならず、将来世代への好影響も考えられます。


 小屋の頭に浮かんだ例は、霞が関コモンゲートです。

 この場所は、文部科学省と会計検査院の跡地を、民間と合同で再開発した事例です。

 現在では、東館に文部科学省、文化庁、会計検査院、西館に民間企業が入っています。

 この土地は官民一体で再開発した結果、国有財産と民間の財産に別れた結果になっていますが、国有財産をこのような形で再開発して、収益性を向上させることのできる例はたくさんありそうです。


 このように単純に売却処分をして、現在の財政改善にしか目を向けないのは、将来世代に対する責任のない行為であると吉野先生はしています。


 同じ指摘を、「埋蔵金問題」として一時期もてはやされた特別会計の剰余金処分問題にもされています。

 埋蔵金問題とは、一般会計ではなく特別会計内に残っていた剰余金や積立金の処分に関する問題ですが、これが、2000年代後半から、一般会計や予算に利用されてきました。

 これも先程の国有財産の話と同じで、

1)これを今利用してしまえば、その時点で予算として利用できる
2)これをしっかりと有効活用し、収益性のあるものにできれば、国家財政に長期に寄与します。

 政治家としては、現時点で予算化してしまった方が、現役世代から支持が得やすいので、短史眼的な1)を選びがちですし、実際にそういう選択がされてきました。

 本来は、これも将来世代に対する責任としては、中長期でしっかりと効果の出る利用方法を検討しなければなりません。


 国有財産の処分、あるいは埋蔵金の活用については、現時点だけの判断ではなくどのような利用方法をすれば将来世代に寄与することができるか?

という視点で議論をしてほしい

というのが吉野先生のメッセージです。


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トランプ大統領の貿易政策



 前回ご紹介したアジア開発銀行研究所所長の吉野直行さんのメッセージです。
 ⇒前回コラム  http://okuchika.net/?eid=8057


 第1回目は、トランプ大統領の貿易政策についてです。


 トランプ氏は今年に入り、鉄鋼・アルミニウムなどで関税を賦課したり、中国からの輸入品に対して関税を賦課したり、貿易赤字の解消が、自国の産業保護や雇用の保護のために米国経済に必要だという主張の元にこれまでのアメリカの貿易政策を大きく転換しています。

 これに対して、日本はどのような行動を取ればよいのでしょうか?

 それには、なぜこれまでのアメリカが自由貿易を選択し、それが世界経済にとって有効に機能してきたのかを考えてみます。


 国際貿易の利点は、一番古典的な理論ではデヴィッド・リカードの比較優位論がわかりやすい説明になっています。(Wikipedia比較優位参照)

 英国とポルトガルの2国で毛織物とワインの2つを生産して貿易することを考えてみましょう。

 具体的には

1単位時間分だけ働いた場合の生産量を
     毛織物 ワイン
英国    36 30
ポルトガル 40 45

 ポルトガルは、ワインと毛織物の双方に関して、英国に対し両方とも生産量が大きいので絶対優位です。

 しかし、毛織物に関してはワインよりも生産効率が良いという意味で英国の方が比較優位であり、ワインに関してはポルトガルの方が生産効率が良いという意味で比較優位です。

 つまり、英国の絶対優位性と比較優位性とは異なるということになります。

 この英国とポルトガル双方が貿易から利益を得られるとはどういうことなのでしょうか?


 これも例として、

各国の労働力人口と労働投入係数が、簡略化の為に、失業者が居ない場合を想定している場合を考えましょう。

 下記のようにそれぞれの国が労働力を持つとします。

     労働力 毛織物 ワイン
英国   220 100 120
ポルトガル170  90  80

 そうすると各国の生産量は

        毛織物     ワイン
英国   100×36=3600 120×30=3600
ポルトガル 90×40=3600 80×45=3600

両国の生産量合計 7200     7200

となります。

 極端ですが、これを比較優位のある産業に偏らせて

     労働力 毛織物 ワイン
英国   220 220   0
ポルトガル170   0 170

とすると各国の生産量は

        毛織物       ワイン
英国    220×36=7920    0
ポルトガル    0        170×45=7650
両国の生産量  7920      7650

となり、先程の両国合計の生産量を上回ります。

 これは、各国の国際分業によって全体的な労働生産性が増大することを示し、さらに、自由貿易を前提とした場合には両国が共に消費を増大させられることを示しています。

 すなわち、比較優位にある財を輸出すると共に比較劣位にある財を輸入すれば、絶対優位に関係なく貿易で利益を享受できるということを意味するのです。

 単純に言えば、このような理屈で、各国が得意な産業に生産を傾斜し、自由貿易を進めていくのが世界全体の生産性の意味では良くなるということで、貿易が振興されてきました。


 一方でトランプ大統領が取ろうとしている保護主義的な政策は主に

・海外からの輸入の拡大は国内生産者の利益を損ねる
・海外からの輸入の増加によって、国内の製品が売れなくなり、雇用が悪化する
・海外から安価な商品の大量流入によって国内の生産の縮小→国内企業の工場の海外移転→国内産業の空洞化が生じる

といった国内の生産や雇用の問題から発生しています。

 こうした、保護主義的な政策は、一時的にアメリカだけのことを考えると有効なのかもしれませんが、先程の自由貿易の理論からすると米国以外の世界的には効率が悪くなり、経済成長の阻害要因になります。

 なので、実際に政策を検討するためには、この自国の産業と世界経済の2つの方程式を連立で検討しなければならないのです。

 しかし、現在のトランプ政権は、まるで自国の一つの方程式しか見ていないように見受けられます。


 日本としては、こうした米国の保護主義的な政策についてWTO(世界貿易機関)などの国際機関を通じて、自由貿易の正当性を訴えていくのが一番の筋道だと思っています。

 自由貿易のメリットという正論を国際機関の中で主張していけば、日本以外の主要国の賛同も得られると思いますし、米国も正論を受け入れざるを得ない場面が出てくるはずです。


 次回は、国有財産の売却や埋蔵金活用の議論についてです。


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吉野直行慶應義塾大学名誉教授からのメッセージ



私の大学のゼミの恩師が、吉野直行さんです。


プロフィールはWikipediaによると

日本の経済学者、アジア開発銀行研究所所長、慶應義塾大学経済学部名誉教授。
東北大学経済学部卒、米国ジョンズ・ホプキンス大学経済学博士課程修了PhD。
専門は財政金融政策。
スウェーデン・ヨーテボリ大学名誉博士、ドイツ・マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク名誉博士、福澤賞。

ということで、日本を代表する経済学者、経済実務家でもあります。


つい先日、その吉野先生から小屋に連絡がありました。


現在世の中で起こっている現象について、吉野先生の見解を述べるので小屋の方で分かりやすく世の中に意見を広めてほしい

という事のようです。


私も新聞や雑誌などマスコミ媒体にも同じ内容を提起していきたいと思っていますが、まずは、メルマガやブログ読者の方々を優先にお伝えしていきたいと思います。


1.国際貿易の議論

・米国のトランプ大統領が採っている「貿易不均衡是正」「保護主義」的な動きはどのように考えたらよいのか


2.日本の国有財産処分、埋蔵金問題

・日本の国有財産処分や埋蔵金利用の論点は将来世代についてどのような影響を与えるのか


3.IS(貯蓄投資)バランス

・米国から日本に対しての経常収支の均衡化の要望は、日本にとってどのような影響を与えるのか


4.日本における移民の議論

・海外から移民を受け入れるという政策は、日本で有効に機能するのか?


5.今後の日本経済に対する提言

・今後の日本が経済的に成長していくためには、どのようなことに取り組めばよいのか?


といった論点について吉野先生の見解について小屋が解説していきたいと思っています。


次回から1以降について連載していこうと思いますので、よろしくお願いいたします。


株式会社マネーライフプランニング
代表取締役 小屋 洋一


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資産形成ダイナミックメカニズム 最終回



 5回にわたってお届けした資産形成ダイナミックメカニズムの解説もようやく最終回です。


 第1回 ⇒ http://okuchika.net/?eid=7926
 第2回 ⇒ http://okuchika.net/?eid=7956
 第3回 ⇒ http://okuchika.net/?eid=7978
 第4回 ⇒ http://okuchika.net/?eid=8003


 前回は、ようやく資産運用のコンサルタントっぽい、主に金融商品や不動産などの資産運用について取り組むべきこと注意することを説明しました。


 最終回は、こんどはお金を使う話です。


(2)支出の抑制

 1)ライフスタイルコストの抑制


 色々なところでよく言われる話ですが、お金を持っている人に

「どうすればお金が貯まるのですか?」

と質問をすると

「入ってくるよりも使わなければお金は貯まります」

と答えられるという話があります。


 お金は、入ってくるお金の額よりも使うお金の額が少なければ自然と貯まっていくものです。

 とても当たり前の話ですが、お金を貯めている人が少ないことからも普通の人がなかなか実践するのは難しいのでしょう。


 一方で、普段お金持ちと接することの多い我々は、当然お金持ちの行動をよく観察します。

 これがまたびっくりするくらい、慎ましく派手なお金の使い方をしない人が多いものです。

 なので、一般的な人が描くお金持ちのイメージと、我々アドバイザーが触れるお金持ちの実像にはかなりのギャップがあります。


   1.固定資産の維持費の抑制
     
          a.固定資産取得に伴うローン元利払い
     b.損害保険料
     c.定期修繕費


 固定資産の代表的なものは「自宅」の不動産です。

 最近、経済学者のロバート・フランクが周囲との比較で満足を得るものを「地位財」、他人との相対比較とは関係なく幸せが得られるものを「非地位財」と整理しました。

 「地位財」の具体例は、所得や貯蓄、役職などの社会的地位、家やクルマなどの物的財。
 一方の「非地位財」は、健康、自由、愛情などです。

 こうした、「地位財」の代表的なものが自宅でもあります。

 ここの比重が高い人は、「地位財」にお金を使う傾向も高く、支出の抑制に苦労するタイプです。

 そもそも、こうした「地位財」の入手による幸福度は長続きしないものです。



   2.生活費の抑制


 生活費の水準は、本当に各家庭まちまちです。

 コンサルティングをしている現場で思うことは

「この家庭は資産運用に取り組むよりも、生活費水準を見直した方がよっぽど効果的だよな」

というケースが多いです。


 例えば、1,000万円の金融資産を保有している人が、資産運用に取り組んで1%の利回り向上ができて資産の増加する額は年間10万円です。(税引き後だと8万円になってしまいます)

 しかし、同じ人が月1万円の生活費の見直しができるのであれば、その効果は年間12万円の資産増加につながります。


 どちらが簡単に取り組めることでしょうか?

 またどちらが効果的でしょうか?


 こう考えると、資産運用に取り組む前に、自らの家庭の支出水準をもう一度考え直す方が資産形成の手法としては簡単で確実になるケースが多いです。



   3.保障性生命保険の効率的購入

 先程、生活費水準の見直しを指摘しましたが、最後は保障性生命保険の話です。

 生命保険の話については、過去にさんざんメルマガでもブログでも書いてきました。
 http://okuchika.net/?eid=7870


 私が相談に乗るケースでも9割程度の家庭は、生命保険の加入額が不必要に多いケースになってます。

 この辺りも合理的に生命保険に加入するだけで、毎月の支出が抑えられ、それが自らの資産の増加につながります。


 こうしてみてきた通り、資産運用に取り組むよりも

・自分の収入を最大化する
・自分の支出を適正に見直す

事の方が、よっぽど重要で確実な方法であることがご理解いただけたのではないかと思います。


 皆さんも、まずは収入、支出についてもう一度見直してみてください。


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資産形成ダイナミックメカニズム その4



 前回に続き、資産形成ダイナミックメカニズムの解説です。

 第1回 ⇒ http://okuchika.net/?eid=7926
 第2回 ⇒ http://okuchika.net/?eid=7956
 第3回 ⇒ http://okuchika.net/?eid=7978


 前回に続き、資産形成ダイナミックメカニズムの解説です。

 前回は、収入を拡大するために必要な時間当たりの生産性を向上させる方法などをご紹介しました。

 ようやく今回が、弊社でもコンサルティングの中心に置いている資産運用についてです。

 日本の個人の多くの人は、こうした保有資産の運用利回りに無頓着ですからここを改善する余地は十分にあるはずです。


2)投資資金の運用利回りの向上

   1.借り入れの圧縮


 まずは、借入の圧縮です。
 借入金のポイントは、なんといってもその金利にあります。

 調達している資金に金利を払うのであれば、その資金の利用方法は調達金利を上回る利用方法をしなければなりません。


 おそらく多くの個人の方は、住宅ローンという借入を行うケースが多いと思いますので、住宅ローンで調達した借入金の金利と、それによって購入した不動産の実質的な利回り(経費控除後の帰属家賃/物件価格)を比較して借入金金利の方が高い場合には、注意が必要です。

 現段階では、住宅ローン金利も低いので、あまり大きな問題にはなっていないと思いますが、住宅ローンを変動金利で借りている場合には、金利上昇局面でキャッシュフローが厳しくならないかどうかもチェックする必要があります。


   2.預金


 現在の日本では、預金に対して、ほぼ金利がゼロです。
 この場合、不必要なお金を現預金で保有していることが、資産の運用効率を落とすことになります。


 私が顧客にアドバイスする際には、

 現預金は年間支出総額の半分〜1年分程度にしておくことを推奨しています。

 それ以上を現預金で保有していてもそれほど当座使う機会もありませんので無駄な預金を保有しているという事になります。


   3.有価証券

     a.流動性のある運用資産
     b.非流動性
     c.自社株


 有価証券で保有すべきは、基本的には株式、債券になります。

 特に上場している株式や国債など流動性のある資産に投資するのが基本になります。

 流動性を犠牲にすることで、運用利回りを上げるような金融商品もありますが、これは一定以上の(例えば1億円)金融資産を保有し、手元の流動性をほとんど気にしなくて良い投資家が購入するべきものです。

 こうした商品には一般の人は、購入する必要性がないと考えます。


 中小企業のオーナーの場合には、自社株というのも保有している有価証券の価値としては少なくないものです。

 ご自身の会社がM&Aで売却できるレベルの会社である場合には、しっかりと会社の時価評価をしておくことが、資産管理の観点からは望ましいと考えます。

 ご自身の会社がM&Aで売却できるという状態にない会社の場合には、まずはしっかりと外部から金額換算で売却できるような組織、体制、ビジネスモデルを構築することが個人の資産形成の観点からも重要になります。


   4.投資目的の不動産


 最後に投資目的の不動産です。

 投資不動産のポイントは、不動産の収益は

 (1)インカムゲイン+(2)キャピタルゲイン(ロス)=トータルリターン

となります。

 個人の投資家の方は、

(1)インカムゲイン
を中心に分析するが

(2)キャピタルゲイン(ロス)
を軽視する、あるいはあまり考えていない人が多いような印象を受けます。


 不動産で一番大事なのは「出口戦略」です。

 購入予定の物件を最後に

いつ
だれに
どのような価格で

売るかという事を慎重に検討したうえで、投資してほしいものです。



 次回は、このシリーズの最終回です。
 支出について解説していきます。


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資産形成ダイナミックメカニズム その3



 前回に続き、資産形成ダイナミックメカニズムの解説です。

 前々回 ⇒ http://okuchika.net/?eid=7926
 前回  ⇒ http://okuchika.net/?eid=7956



 前回に続き、資産形成ダイナミックメカニズムの解説です。

 前回は、収入を拡大するためには、長く、健康的に働き続けられるための努力が必要だという内容を解説していきました。

 今回は、もう一方のすべての人間に平等に与えられている時間の価値をどれだけ高めることができるかというのがテーマになってきます。


 それでは、資産形成ダイナミクスの表を解説していきましょう。


【1】収入を拡大する

2.時間当たり生産性の向上

     a.1時間当たりの効率を向上
      ・稼ぐ仕組みの構築


 まずは、個人の1時間当たりの仕事単価を上げることが必要です。
 サラリーマンでも大企業から中小企業まで、賃金の格差があるとすれば、この企業ごとの「稼ぐ仕組み」がどれくらい強固なものであるかどうかが差になってきます。

 大企業になればなるほど、この「稼ぐ仕組み」が給与に反映されますので個人のパフォーマンスよりも、組織としての仕組みの方の影響が大きくなります。

 なので、個人が優秀でなくても、組織の仕組みが強いので、高給だという事は十分にありえます。


 一方で、中小企業や個人事業の場合には、正反対になります。
 組織としての「稼ぐ仕組み」が弱い企業が多いので、逆に個人のパフォーマンス頼りになりがちです。

 ポイントは、継続的に稼ぎ続けられる「仕組み」を構築しなくては個人の作業は減らないですし、人間の作業や活動時間には限界がありますので収入にも限界が生じます。


 小屋の周囲を見ていても、個人事業で優秀な方々でも、「仕組み」を構築しなければ一人当たり2,000〜3,000万円が収入の限界のように見受けられます。


 結論としては、組織で働く人は、なるべく作業的な仕事に没頭するのではなく「仕組み」を構築する側に回らなければ仕事の付加価値は高くならないと考えるべきでしょう。


      ・時間当たりの付加価値の高い活動に集中


 ということで、収入を高めたいと思うのであれば、先程述べた「仕組み」を構築する側、言い換えれば付加価値の高い作業を仕事にする必要があります。

 そのためには、なるべく自分の時間の中で作業的な仕事に取られる時間を減らす必要があります。

 これを考えるには、自分の時間当たりの労働単価を計算して把握しておくことが重要です。


 例えば、月収が50万円の方が、

週5日×4週×8時間=160時間

を労働に時間を割いているとします。

 この方の時間当たりの単価は

50万円/160時間=3,125円/時給

となります。


 この方の時給は3,125円になりますので、その単価よりも低い単価でできる仕事にはなるべく時間を割かない方が効率的だという事になります。

 例えば、

Excelに数字を入力する、集計する
会議の議事録を作る

など時給1,000円前後でアルバイトにも頼める仕事をしていては、付加価値が高まらないという事になります。


 特に、中小企業や個人事業主ほど、組織としての力が弱いので、こうした時間当たりの単価を意識して仕事をするとパフォーマンスの大きな改善につながります。


 例えば、私は今年から「スーパー秘書」というサービスを利用しています。
http://super-hisho.jp/

 これは、外部の秘書さんに事務系のお仕事をアウトソースできるオンラインサービスです。

 月10時間の作業を35,000円で利用しているので、時間当たりの単価は3,500円という計算になります。

 こうしたサービスを利用しながら、私自身は時間3,500円以上の付加価値を生むような「仕組みづくり」の仕事に専念できるような体制を作るようにしています。


     b.ネット労働時間の向上
      ・時間当たりの集中力向上
      ・移動時間削減      


 この辺りは、仕事時間の使い方になりますし、仕事術的な本も沢山ありますので、その方が詳しいテクニックは理解できると思います。

 私が個人的に意識しているのは移動時間の削減です。

 普段は、顧客に事務所に来ていただく体制を作ることと、移動するのではなくオンラインを活用しながらミーティングなど行うことで移動時間を極力少なくしようと心がけてはいます。


 前回の記事で解説した

「長くしっかりと働く」

ことと

今回紹介した

「働いている時間の付加価値を向上させること」

の2点をしっかり取り組めば、仕事をすることによる収入の増加が間違いなくもたらされます。


 多くの人は、こうした労働価値(ヒューマンキャピタル)を向上させることが資産形成の一番大きな原動力になりますので、もう一度前回の記事を合わせて見返して取り組んでみてください。


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