書評:フリードリヒ・ハイエク



書評:フリードリヒ・ハイエク
   ラニー・エーベンシュタイン 著、春秋社
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 フリードリヒ・アウグスト・フォン・ハイエクは、1974年にノーベル経済学賞を受賞したオーストリア学派の重要人物です。1976年に同賞を受賞したシカゴ学派のミルトン・フリードマンとともに、共産主義(ファシズム)などの全体主義に徹底抗戦し、「自由」「市場」に重点を置いた理論を追求した人物です(ちなみにフォンは下級貴族の尊称なのですが、第1次世界大戦後のオーストリア・ハンガリー帝国の崩壊後使用が禁止されます。ところが、ハイエクが渡英した際に戸籍に掲載されているということで、英国政府の証明書
等にフォンがつけられたのでそのまま使っていたとのことです)。
 二人がしばしば触れることですが、現代では全体主義(共産主義・ファシズム)などの左翼思想を信奉する人々が自らを「リベラル」と名乗るのは皮肉なことです。まさに言葉の乗っ取り(背乗り)であり、彼らはいわゆる「偽リベラルであり」、「自由」や「市場」を追求したハイエクやフリードマンこそが、本当の「リベラル」です。

 また、ハイエクは1950年にシカゴ大学の社会科学ならびに道徳科学の教授に就任しています。シカゴ大学の経済学部が外部からの教授の招聘を拒んだなどの裏事情があるようですが、本人はこのことを誇りにしていました。
 なぜかといえばアダム・スミスもグラスゴー大学(映画ハリーポッターのロケ地にもなった名門)の道徳哲学の教授(最初は倫理学教授)であったからです。

 実際、彼の代表書籍かつ最大のベストセラーが「隷従への道」であることからも分かるように、経済学よりも「(政治経済)哲学者」としての活躍が目立つ人生でした。

 「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャーは、ハイエクを尊敬し彼の信奉者であることを公言していました。1975年に保守党党首、1979年に英国首相。サッチャリズムと呼ばれる<新自由主義>の背景にはハイエクが控えていました。

 ハイエクは1944年(「隷従への道」の出版を行った)当時から英国が<高福祉国家>路線を歩むことの危険性に警鐘を鳴らしていたのですが、案の定「ゆりかごから墓場まで」と呼ばれる高福祉政策のおかげで英国は破綻の危機に瀕しました。そのつぶれかけの英国を救ったのがサッチヤリズムであり、その政策の根本理念はハイエクの思想にあったのです。
 ただし、具体的な個々の政策に関してサッチャーがハイエクの助言を受け入れることはほとんどなく、彼女独自の政策を推進しました。

 高福祉政策でにっちもさっちもいかなくなっている現在の日本は、サッチャーやハイエクに学ぶべきであるといえます。

 また、第40代米国大統領ロナルド・レーガン(1981年就任)にハイエクを紹介したのもサッチャーです。すでにハイエクの本を読んでいて共感していたそうですが、ミルトン・フリードマンとともに「レーガノミクス」に大きな影響を与えました。

 先進資本主義諸国は、サッチャーとレーガンのおかげで繁栄し、ベルリンの壁崩壊(1989年)、ソ連邦崩壊(1991年)によって共産主義(ファシズム)陣営を打ち負かしました。


 ところが、現在の先進資本主義国はもう一つパッとしません。
 それは共産主義(ファシズム)が崩壊した後、カビの胞子が飛び散るように全体主義(共産主義・ファシズム)的な考え方が先進資本主義国に広がったからです。

 具体的にはフリードマンの「資本主義と自由」の詳しく述べられているように、先進資本主義国において、政府の力が肥大し政府が(民間に任すべき)すべてのことに口を出す全体主義的傾向が強まったのです。

 共産主義陣営の崩壊によって明らかになったように、政府が中央で集権的にコントロールするシステムは極めて非効率で、決して豊かな国にはなれません。共産主義中国が毛沢東の大虐殺(大躍進政策と文化大革命)で崩壊寸前の状態から甦ったのも、客家(はっか)の逸材小平が「改革・解放」政策を断行したからです。
 「市場」は共産主義の天敵ですから、これは驚くべき英断でした(もっとも、習近平の反動政治によって元の「北朝鮮状態」に戻りつつありますが・・・)。


 全体主義は共産主義、ファシズムだけの問題ではありません。
 民主主義国家、資本主義国家においても、特殊利権集団(労働組合、弁護士会、医師会、全農等など・・・)の圧力によって、保護政策、免許制度、補助金などの形で国家の関わり(権力の増大)が常に増加する圧力かかります。

 また、フリードマンが鋭く指摘するように政府は「(官僚・役人から見て)他人のお金を他人のために使う」存在ですから、支出の抑制が困難です。

 民主主義において有権者は、増税には反対するけれども(補助金など)をもらうことには賛成です。したがって、人気取りをしたい議員はばら撒く約束を繰り返し、増税はしないので借金が増えることになります。
 これは日本だけではなく、民主主義国家共通の現象です。

 例えば(日本の)野党は自分自身では何もしないで、政府(行政)の「あれが悪い・これが悪い」という批判を繰り返しますが、その批判によって政府が「改善」するたびに政府の関与は増大し権力が肥大するのです。


 本書は400ページを超える大著ですが、ハイエクの人物と思想、さらにはハイエクが生きた時代を的確に描写した良書といえます。


(大原 浩)


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書評:市場・知識・自由 自由主義の経済思想



 市場・知識・自由 自由主義の経済思想
 F.A.ハイエク ミネルヴァ書房
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●政府は必要である

 本書は、ハイエクが1945年から1973年までの間に行った講演、雑誌、事典類への寄稿論文を抜粋してまとめたものです。

 ハイエクの思想を知るうえで重要な文書がたくさん掲載されていますが、あくまで<寄せ集め>ですので、一本筋の通った<体系>を求めている方には向いていないかもしれません。

 第5章は<デイビッド・ヒュームの法哲学と政治哲学>というタイトルですが、ハイエクが、アダム・スミスの盟友(後援者)であり、かつ当時を代表する賢人であったデイビッド・ヒュームの影響を強く受けていることがよくわかります。

 徹底した「自由主義」「市場主義」を強く主張したことで知られるハイエクですが、決して「無政府主義者」ではありません。国民が豊かな生活を享受するために、政府が行うべきことがあるということも述べています。アダム・スミス同様、軍事(外国からの国民の防衛)、警察(犯罪からの防衛)を主張していますが、通貨に関してもコントロールすべきではないが(この点がミルトン・フリードマンと異なります)、経済成長に十分な量の通貨を遅滞なく供給すべきであると述べています。

 アダム・スミスが強調した特殊利権組織(スミスの表現では商工業者)のカルテルを打破する「独占禁止」の政府の役割については、当然ハイエクも同意すると思いますが、私の知る限りでは積極的な論述はありません。

 また、ヒュームの「人間本性論」(1740年にヒュームが29歳で出版)から次の引用を用いて、国民に対して社会ルールを順守させる機関である国家の重要性も説いています。「…定まった規則が無ければ次のような結果をもたらすであろう。…そうだとすれば人間社会に無用の混乱が生み出されるであろうし、人間の貪欲と偏愛は、もしいくつかの普遍的原理によって規制されなければ、世の中にたちまち無秩序をもたらすであろう」


●共産主義の無性生殖(クローン)、自由主義の有性生殖(多様性)

 アダム・スミスの国富論が1776年に発刊された後、80年以上も経った1859年にチャールズ・ダーウィンの「種の起源」が刊行されましたが、「人間社会・経済の進化」の概念が確立した後に、その思想をダーウィンが自然界(生物)に応用したのです。そして、「人間社会・経済の進化」という概念を生み出したのがデイビッド・ヒュームだとしています(アダム・スミスはヒュームの影響を受けた…)。

 それまでのキリスト教などのカルト宗教(一神教)では、「人間は楽園から追い出されたから、この世もその理想の楽園に近づけなければならない」との考えが支配的でした。

 つまり、「社会や経済にはあるべき姿が存在し、そのあるべき姿から外れた社会や経済を特定の人間のリーダーシップによって<人為的に修正>しなければならない」ということです。

 しかし、<あるべき姿>というのはいったい誰が決めるのでしょうか?
 それは、所詮不完全な人間が思い描いた一種の妄想にしかすぎません。

 そもそも、人類がこのような高度な思考が可能な「脳」を獲得したのは誰か(神も含めて)がデザイン・設計したからではありません。進化の過程の<自然選択>によって高度な能力を得たのです。

 ファシズム、共産主義、絶対王政、福祉国家(大きな政府)などの基本的な考えは「正しいやり方が存在し、その正しいやり方を国民に強制する」というものです。しかし、これは生物学で言えば単細胞(無性生殖)生物の手法です。自らと全く同じ(正しい)遺伝子を寸分たがわずコピーすれば、あっという間に個体数を増やすことができます。共産主義やファシズムで「優生学」が発達したのも偶然ではありません。

 しかし、このような単細胞(無性生殖)生物が生物界の覇者ではありません。
 なぜなら、金太郎飴のようなクローンを量産すれば、予想外の事態に直面したときにすべての個体が対応できず全滅する可能性が高いからです。

 我々人間も含めたほとんどの多細胞生物が有性生殖を行うのは、「多様性」を確保するためです。人間が恋愛に注ぎ込むエネルギーを考えれば<有性生殖>の非効率さがよくわかりますが、それでもオス(男)とメス(女)の遺伝子を混ぜ合わせることによって起こる<偶然>が生物の進化の原動力なのです。
 そして、その有性生殖という七面独臭いことを延々と続けてきた生物が、生物界で重要な位置を占めておりその頂点に立つのが我々人類なのです。

 人間社会でも、共産主義、ファシズムのように単性生殖でクローンを量産したほうが効率的だという議論がよく見受けられます。しかし、そのような社会はまったく進化せずに、あっという間に時代の変化に置いてきぼりになります。

 手間がかかるようでも「市場」や「民主主義」で有性生殖を行う社会こそが、持続的発展を行うことができるのです。


(大原 浩)


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孫子と三賢人のビジネス その4




産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
1月号連載記事


■その4 国王と将軍、株主と経営者


●会社はだれのものか


 よくある議論のテーマですが、その際に混同されているのが、「会社はだれのものか」ということと、「会社はだれのためにあるのか」ということです。この二つの内容は全く異なっています。
 まず、「会社はだれのものか」という問いに対する答えは明快です。「会社は所有者たる株主のものである」と断言してかまいません。例えば、不動産に例えれば新宿駅前のアルタビルはだれのものかといえば、(不動産登記簿に記載された)所有者のものであることに意義を唱える人はいないでしょう。もしそうでなければ、アルタビルを買いたいと思う人は一体誰から買えばよいのか皆目見当がつきません。

 会社でも同じです。会社が株主名簿に記載された株主のものであることに疑いの余地はありませんし、だからこそ株式の売買が可能なのです。

 しかし、「会社はだれのためにあるのか」という問いに対する答えは全く別です。例えば、前記の不動産(アルタビル)のオーナーが、「自分のものだから」と言って、好き勝手に土地を使っていいというわけではありません。まず、建築基準法などにしたがって、容積率・耐震性などの制限を受けなければなりません。また、ビルで働く人々やテナントにやってくる顧客、さらには隣接するビルの関係者などの安全を図るため、消防法などに従って適正にビルを管理しなければなりません。不動産(ビル)は所有者のためだけに存在するのではなく、関係するすべての人のためにあるからです。一戸建ての住宅の場合でもそれは変わりません。近隣の住民やコミュニティとの関係無しに生活などできませんから、日影規制やゴミ出しのルールなどを守らなければなりません。

 会社も、その会社で生活の糧を得、自己実現を図る役職員はもちろん、その会社の製品やサービスを利用する顧客がいなければ成り立ちませんし、逆に言えば彼らのためのものでもあるのです。株主が所有者であることが明確ではあっても、社会あるいは市民に受け入れらない企業は価値を持ちません。さらには、ドラッカーが述べる「知識社会」での従業員は、「知識」という生産財を会社に提供しているわけですから、会社が従業員のためにあるという側面はより強まっているといえるでしょう。


●国王と将軍

 さて、このような「会社はだれのものか」というという問いに対して、孫子は「軍隊はだれのものか」という形で答えています。もちろん軍隊の所有者は国王ですが、将軍がきちんと統制し、将兵がその任務を遂行しなければ役に立ちません。持っているだけでは何の意味も無いのです。

 孫子はこのように述べています。
「国王にとって将軍は助け役であり、二人の関係が親密であればあるほど、良い成果を出せる。もしそのコミュニュケーションがうまくいかなければ、国家は弱くなる」。
 そして、三項目の注意すべき事柄を上げています。
1)戦争のことをよく知らないのに、軍隊を直接指揮しようとしてはならない。
2)戦争のことをよく知らないのに、将軍と一緒に軍隊を動かそうとしてはならない。兵隊はどちらの指示に従うか迷うことになる。
3)実戦のことも分からないのに、最前線で軍隊の指揮を行おうとしてはならない。兵士は迷い疑うことになる。


続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
1月号をご参照ください。


(大原 浩)


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書評:トコトンやさしいロボットの本




書評:トコトンやさしいロボットの本
日本ロボット工業会 監修、 日刊工業新聞社
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●誰も3K労働を好んでやらない

 現在人手不足が騒がれている。いわゆる外国人労働者に関して、拡大政策を行う方向である。

 確かに、介護、建設・工事などの分野で「人手」が足りないのは事実である。
 しかし、それは単純に「厳しい労働に対して給与が安い」からに過ぎない。
 例えば、介護や建設などの分野の給与を3倍とか4倍(現在年収400万円であれば1200万円〜1600万円)にすれば、現在事務職をしている人々からも応募が殺到して、あっという間に人手不足など解消する。

 外国人労働者も「きつい」仕事を好んでやるわけでは無い。母国の賃金(物価)水準に換算すれば、数年働けは御殿が建つような高級に惹かれてやってくるに過ぎない。

 だから、外国人労働者にとって日本は「仕事場」にしか過ぎない。地方から東京にやってくる出稼ぎ労働者の心が故郷にあるのと同様に、外国からやってくる出稼ぎ労働者の心も母国にある。

 もちろん、それは心情的に理解できるが、日本にやってくる外国人労働者(移民)の多くが(一部を除いて)、日本に恋い焦がれて「日本人」になりたくてやってくるわけでは無いということは重要だ。

 欧米の移民問題の本質も移民先の法律やルール、そして文化を尊重し順守する気持ちを移民(外国人)たちが十分に持たないことが問題を悪化させている。


●日本人は異邦人に寛容である

 よく日本は「島国根性」で排他的であるというが、「おもてなし」という言葉にも代表されるように、たぶんどんな国の人々よりも「他人に親切」である。

 例えば、渥美清演じる「フーテンの寅さん」。日本全国各地、どこに行ってもあたたかく迎えられ、心温まる交流が繰り広げられる。

 また、漫画・アニメの中に、私が「居候漫画」と呼ぶ一大ジャンルがある。「オバケのQ太郎」に始まって、「ど根性ガエル」(居候するのはシャツの中だが・・・)、「ドラえもん」、さらには、地球侵略を目指す宇宙人が居候(家の地下だが・・・)する「ケロロ軍曹」に至るまで、異邦人をおもてなしし、快く居候させるのが日本の文化である。

 これは、日本という国が諸外国に比べれば歴史的に平和(戦後70年間はもちろん、江戸時代の300年近く、海外との戦争を行わなかった)であったことが大きな原因であろう。

 逆に、欧米の映画やドラマでの「訪問者」の描き方は恐ろしい。
 1939年に最初に映画化され、1981年のジャック・ニコルソン主演の4度目の映画化が印象的な「郵便配達は二度ベルを鳴らす」はもちろん、最近でもキアヌ・リーブスが主演した「ノック・ノック」(2016年)や「ザ・ギフト」(2015年)に至るまで「訪問者」には気を付けろというメッセージが満載だ。

 日本人同士の中では「居候漫画」のようなほんわかした世界を実現できても、外国人たちは異なった文化の中で育っている。

 やみくもに外国人を受け入れたり、安易に移民政策を推進したりすることは決して行ってはならない。


●高度成長期の人手不足が日本をロボット大国にした

 高度成長期にも現在と同じ人手不足が叫ばれ、中学卒業生は「金の卵」と呼ばれ、激しい争奪戦が起こった。この時に日本は外国人労働者を基本的に受け入れず、ロボット化・自動化で乗り切った。

 現在ファナックや安川電機などを筆頭に、日本のメーカーが工場用ロボット(機械)で圧倒的なシェアを誇っているのも過去の人手不足の際に移民や外国人労働者を受け入れず、自動化・ロボット化の努力を最大限に行ったからである。

 逆に、当時は安価で豊富な資源だと思われていた外国人労働者や移民を大量に受け入れ、ロボット化・自動化を怠った欧米は、製造業が衰退しただけでは無く、巨額の社会的コストというつけを払わなければならなくなってきている。

 今回の人手不足においても、経営者たちが政府に泣きついて外国人労働者を受け入れさせようとするのは、社会にとって大きなマイナスである。外国人労働者や移民が後々、日本にとっての大きなコストになるのももちろんだが、経営者が怠けて自動化・省力化・ロボット化が遅れれば、日本は競争に取り残される。

 例えば、低価格の飲食店ではタブレットによる注文が普通になってきているが、これは「適応」の好例である。

 銀行窓口や営業の現場でもタブレット端末による省力化が急速に進んでいる。さらには、介護の現場でも、センサーやGPSをフル活用した見守り、監視サービスやアシスト・スーツによる重労働からの解放も行われつつある。

 また、パラマウントベッドは医療用ベッドの大手だが、最近同社が発売する新製品には各種センサーが搭載され、まるで医療用機器のようになりつつある。

 工場の自動化・ロボット化が必然であったように、これまで日本では特に生産性が低かったサービス産業において自動化・省力化が急速に始まりつつある。

 海外での(工業用)ロボットの使用は、自動車産業が中心だが、日本では電子部品産業においても同じくらいの規模がある。すそ野の広いニーズに幅広く対応してきたことが、日本をロボット大国にしたのだ。

 せっかく「人手不足」に背中を押されてこれまで極端に生産性が低かった産業において省力化・自動化が進んでいるのに、怠慢な経営者と政府が「安い人間」を輸入し、その流れを止めるようなことがあってはならない。

 政府が行うべきは、人手不足を解消すべく、省力化・ロボット化で立ち向かおうとしている企業の支援である。

 本書は、我々が目指すべき「ロボット化」がどのようにあるべきなのかを考察する上で、極めてわかりやすい入門書である。

 ちなみに、本書にもあるように、製造業のロボット化によって各メーカーの雇用は増えた。海外に工場が移転する前までの、日本の各メーカーの成長を見れば明らかである。

 例えば、溶接のような過酷な環境で行う仕事がロボット化されても、それらのロボットを開発・管理する人間が増えるのである。また、新製品の開発やマーケティングを行う人間も増強される。

 サービス産業におけるロボット化においても、同じように雇用の総数は増えるのではないかと考えている。


(大原 浩)


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書評:ノーベル賞経済学者の大罪






書評:ノーベル賞経済学者の大罪
ディアドラ・N・マクロスキー 著、ちくま学芸文庫
 https://amzn.to/2LgLkdj


 私と財務省OBの有地浩が、「人間経済科学研究所」(https://j-kk.org/)を発足したのは今年(2018年)の4月である。
 「すでに終わった」マルクス経済学はともかく、その他既存の経済学も、やたら数式を振り回して「意味のないこと」を真剣に論じるのはばかげたことであると感じたのがその理由である。

 アダム・スミスが国富論と道徳感情論(二つの本は一体のものとして企画された)で述べているように、<経済とは人間の営み>であり、人間性=徳とは切り離せないものである。


 本書の著者も、間違った前提(意味の無い前提)を基にながながと論証する「ノーベル賞受賞経済学者」の大罪を暴いている。

 著者が述べる「黒板経済学」がなぜこうもはびこるのか?それは、生殺与奪の権利を握った学生たち(単位で支配している)を前にして威張っている方が、実際の経済に触れて泥まみれになるよりも、学者たちによって心地よいからである。

 米国の主要大学の学生を対象にした調査では、「現実の経済の知識を持つことは経済学にとって望ましい」と答えた割合はわずか3%であることが、問題の深刻さを示している。

 <経済学者の予想は当たらない>ことはほぼ正確に予想できるが、著者は「経済学者が借金をして自分の予想にかけて大富豪になったことは無い」と論破している。

 このような経済学者が、国民の血税や企業などの費用を浪費することはまさに大罪である。

 また、「人間は利己的存在である」というアダム・スミスの言葉が世間ではねじ曲がって伝わっている。アダム・スミスは<勇気、節度、実用知(自己利益)、正義、愛>という五つの徳目体系と一体化した場合にのみ自己利益を肯定しているに過ぎない。人間が自己利益だけで生きているなどという考え方は、アダム・スミスの考えとは真っ向から対立する。

 興味深いことは、<実験経済学において、「最も利己的」な行動を行うのは、経済学部の学生グループである>ことである。人間は利己的存在であると教授から洗脳されている学生が利己的行動(入学前は平均的な少年・少女であったはずである)をとるようになるのは恐ろしいことであり、大罪の一つでもある。

 このような現状を見ると「人間経済科学」の研究は急を要すると実感する。

 また、<数学専攻の学部生を経済学部の大学院に入学させるのをやめさせるべきである。歴史学、物理学、生物学の学生を増やすべきである>との著者の主張には大いに共感する。

 経済学に必要なのは、数学では無く生物学、歴史学、物理学などの<観察から結論を導く帰納法>であり、根拠の不明な前提から始まる数学もどきの<演繹繹法>では無い。

 その点、トヨタ生産方式の「現地現物」という手法は大いに示唆に富む。研究室や役員室で机上の空論を述べるだけでなく、工場などの生産現場や販売店に赴き理論の正しさを確認するからこそ、トヨタの判断は間違いが少ないのである。

 経済学者がいままさに行うべきなのは大学版「現地現物」である。


(大原 浩)


★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」(JKK)を設立しました。HPは<https://j-kk.org/>です。

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書評:人口論







書評:人口論
マルサス 著、 光文社古典文庫
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■現代の経済は食糧(農業)に制約されるのか?

 トマス・ロバート・マルサスによって1798年に匿名の小冊子で発刊された本書が、人口の増減と世の中の繁栄(人々の幸福度)の相関関係に関して述べた本であることは間違いが無い。

 しかし、本書において彼が親しかったデヴィット・ヒュームや、先人のアダム・スミス(ヒュームと親しかった)にしばしば(特にアダム・スミスに)言及しているように、底流に流れるのは「人間の営みと経済」に関する考察である。

 人口が等比数的に増えるのに対して、人間に必要な生活物資(主に食糧)は等差級数的にしか増えないから、あるがままに人口が増えれば、増加した人口に対して必要物資がいきわたらなくなり、人口が抑制され均衡状態にまで減少する。これが永遠に繰り返されるというのが、マルサスの主張である。

 資源や食料によって人口が限定されるという考え方は、歴史的には間違っていないだろう。

 例えば、衛生管理が行き届き、死亡率が(当時の諸外国に比べて)低く大きな人口を抱えていた江戸時代の人々の生活が物質的には非常に貧しく、逆に恐ろしいほど不衛生でペストなどによる人口の激減を経験した欧州の人々が物質的に比較的豊かであったのは事実である。

 ただ、マルサスの時代には考えも及ばなかったことだが、戦後の「緑の革命」も含めて、現代において単位耕作面積あたり、あるいは単位労働あたりの生産性が飛躍的に向上した。

 彼の時代には、英国などの先進国でも人口の大部分は農民であったが、今や米国や日本の農民人口は数パーセントである。そのわずかな人口で人々の食料を賄っている(米国は余った農産物を大量に海外に輸出している)

 アダム・スミスも「ジャガイモ」の効能を国富論で延々と述べているし、彼の同時代のフランスの学者たちも「重農主義」であり、この時代において食糧生産や農業は経済の中心的課題であった。

 だから、マルサスが農業や食料に執着し、アダム・スミスが重視する交易などは結局「諸国民の富」を増やすことにはならないと述べているのも不思議では無い。

 ただし、現代の先進国の経済を語るときにマルサスの人口論の主張は当てはまらない。もっとも、氷河期が突然やってきて農業生産が壊滅状態になれば別だが・・・・


■「人口論」は生まれつつあった<邪悪なお花畑理論>=共産主義に対する警鐘である

 本書でしばしば登場するゴドウィン氏とは、無政府主義の先駆者とされるウィリアム・ゴドウィンである。彼の妻は女権論者のメアリ・ウルストンクラフトである。そして、2人の間に生まれた娘は、あの有名な小説『フランケンシュタイン』の作者で詩人シェリーの妻であるメアリ・ウルストンクラフト・ゴドウィン(メアリ・シェリー)である。

 本書で指摘されている内容を読む限り、ゴドウィン氏の主張は<邪悪なお花畑理論>の先駆、つまり現在の共産主義的な考えの持ち主であったようである。

 それに対してマルサスは、いくら「お花畑ファンタジー」を語っても、「人類を存続させる(人口増加に伴う)食糧問題さえ解決できなければどうしようもない」という冷徹な現実を突きつけたわけである。

 したがって<邪悪なお花畑>理論の共産主義者が本書を忌み嫌い、後のカール・マルクスも本書に対して批判的な評論を書いているのも当然である。


■人間は満ち足りていないからこそ頑張る

 本書が共産主義者に嫌われるのには、別の理由もある。

 人類には人口と食料の関係のような難問(少なくとも当時は・・・)が山積しているが、その「難問があるからこそ人類は発展してきた」という主張をマルサスが行っているからである。

 例えば、自然が豊かで食べるのに困らなければ、心地よい午後の昼寝をあきらめて働こうと思うだろうか?逆説的だが、飢えや寒さを克服しようと努力しなければ、人類はチンパンジーとさほど変わらない文明しか築けなかっただろう。

 マイケル・ポーターも「経済の発展は<基礎的条件>にあまり左右されない」と述べている。例えば広い国土、産油国、若い人口が多いということは基礎的条件に恵まれているということだが、それらの国々のどれほどが先進国入りをしただろうか?

 英国は北海油田が見つかったが、産油国とは言えないだろう。日本、ドイツ、さらにはシンガポール、台湾など基礎的条件に恵まれない国々の方が、はるかに発展している。むしろ基礎的条件に恵まれた産油国で先進国入りをしたのは米国だけと言ってよい。

 「欠乏を埋めるために懸命に働くことが<諸国民の富>を増やす」という現実は、共産主義者にはまったく都合が悪い。彼ら武装したキリギリスは、勤勉なアリから暴力で資産を奪い贅沢をしている。

 しかし、共産党に搾取されるアリたる国民もいつまでも勤勉であり続けるわけでは無い。国民たちもいずれはキリギリス化する。自分や家族の「欠乏」を埋めるために一生懸命に働いても、その成果を共産党にピンハネされるのではやっていられないからだ。

 「結果の平等」をうたいながら、国民の財産を共産党がネコババする「結果の不平等」を推進する共産主義に対して、「機会の平等」が「結果の不平等」(つまり努力と実力の結果)を生み出すことを前提に、本書は人口・経済・人間について論じている。


(大原 浩)


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孫子と三賢人のビジネス その3



産業新潮
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
12月号連載記事


■その3 戦わずして勝つべし

◆何もしないおじさん

 私の友人で、メディア業界で長年働いた後、現在は自身の事業を行いながら大学の講義で教えている人物がいます。彼は毎年の授業で必ず学生たちにこのように言うそうです。
「君たち、社会人になったら会社というところには、何もしないおじさんがたくさんいるんだよ!」。
すると、学生たちは
「へぇ・・本当ですか?働かないおじさんがたくさんいたら、会社が成り立たないと思うのですが・・・」
と怪訝そうな顔をします。
 ところが、彼らが卒業して2〜3年後に彼のところへ遊びに来ると
「先生のおっしゃったことは本当でした」
と口をそろえて言うそうです。

 このような会話はあちこちで交わされていると思いますが、この「学生」や「先生」の考え方は根本的に間違っています。

 まず、江戸時代や明治時代ならともかく、現代の先進国の仕事はドラッカーが述べるように「知識労働」がメインですから、「分析」・「思考」・「発案」が重要です。まだぺいぺいで、得意先回りや雑務を担当して汗を流している若者たちから見れば、上司たちはデスクにかじりついているだけで何もしていないように見えるのは仕方がないかもしれません。しかし、彼らには、(現代の)ビジネスの本質がわかっていないのです。

 もっとも、年功序列システムが維持されている会社では、「分析」・「思考」・「発案」の評価がほとんどおこなわれませんから、モチベーションを失った本当の「何もしないおじさん」が大量発生しているかもしれませんが・・・


◆経営者・幹部は片目を開けて寝ていればよい

 最近はあまり聞きませんが、かつては日本型経営の特質の一つとして「おみこし型経営」が良く取り上げられていました。要するに、若いときにはおみこしを担いで汗を流し、歳をとって上司になれば、逆に担がれて楽ができるというわけです。このシステムは、年功序列と結びつけられたため、ポスト不足によりピラミッド型の社員構成が維持できなくなるとともに廃れました。

 しかし、このおみこし型経営は「実力主義」の「知識労働」においても十分機能するのです。ドラッカーは「知識労働者は、マネジメント(上司)よりも、その専門分野においてより多くの知識を持っているから雇われるのである。だから、その点においてマネジメントが口をはさむことができない」といいます。つまり、専門家集団である部下をマネジメントするには、具体的な仕事の指示を行うのではなく、彼らにおみこしを担いでもらうしか方法が無いということです。

 最近は、株主からのプレッシャーがきつくなり、経営者も「私はこんなにたくさんの仕事をしました」とアピールすることに汲々としていますが、本来マネジメントが優れていれば、経営者の仕事など微々たるものです。マネジメントに問題があるからこそ、社長や役員が駆けずり回って問題解決を図らなければならないのです。

 素晴らしい経営を行っている企業は、マスコミに取り上げられることなど滅多にありません。「事件」や「スキャンダル」とは無縁だからです。逆に、マスコミからその手腕を賞賛される「危機を救った経営者」は、前任者たちが危機を起こしたからこそ(場合によっては本人)、誕生するわけですから、企業にとっては恥ずべきことです。

(続く)


(大原 浩)


続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
12月号をご参照ください。


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書評:EU崩壊 秩序ある脱=世界化への道




書評:EU崩壊 秩序ある脱=世界化への道
ジャック・サピール 著、 藤原書店
https://amzn.to/2PBJDfE


 タイトルは「EU崩壊」だが、内容的にはサブ・タイトルの「秩序ある脱=世界化への道」がメインである。

 EUも、グローバリズム(世界化)から欧州を守る存在では無く、むしろグローバリズムを推進する組織であり、それゆえにEUは崩壊への道を歩んでいるというのが論旨である。


■グローバリズムは共産主義国家を救済した

 もちろん、本書でも述べられているように、古代エジプトあるいは縄文時代にはすでに「世界交易」が行われていた証拠は無数にある。江戸時代鎖国をしていた日本でさえ、長崎の出島でオランダ・ポルトガル・中国との交易は制限付きながら行っていた。

 しかし、現在我々が「グローバリズム」と呼んでいる国家の枠を超えた広範囲にわたる大量の交易が普遍的になったのは、1980年代以降であろう。

 1989年のベルリンの壁崩壊、1991年のソ連邦の消滅、さらには小平が指揮した改革・開放政策は1978年にスタートしたが、1989年の天安門大虐殺を経て1992年に南巡講話が行われてから本格化した。

 グローバリズムの利益を享受したのは、それまで西側先進国と隔離されて貧しさに悩まされていた、ロシアや中国などの共産主義国家である。

 武装したキリギリスの集団が支配する、つまりアリが額に汗して蓄えた財産を暴力で奪うことが合法化された、共産主義圏ではだれもアリにはなりたくない。だから、武装するのは共産党員に限られるが、一般国民もキリギリス化して生産力は落ち、国家が成り立たなくなる。

 実は自給自足が成り立たず崩壊しようとしていた共産主義を救ったのがグローバリズムなのだ。特に共産主義中国は、2001年に143番目のWTO加盟国になってから我が世の春を謳歌した。WTOの機能不全は以前から問題視されているが、共産主義中国は、その制度の不備をつき、自由貿易の利益を享受しながらも、国内の規制を温存し、外資系企業に対して公式・非公式に様々な圧力を加えてその活動を妨害した(事実、現在の共産主義中国の輸出依存度は約25%(米国は一ケタ)であり、輸出無しでは国が成り立たない)。

 その被害を受けたのは、日本企業だけでは無く米国を含む世界中の企業である。しかし、グローバル企業といえども、巨大な共産主義中国政府に真っ向から刃向かうことはできず泣き寝入りしていただけなのだ。

 その世界中の「声なき声」を代表して、中国と闘う姿勢を明示したのがトランプ大統領のアメリカである。


■民主主義の基本は「国民国家」である

 トランプ大統領が掲げる「自国第一主義」に対する非難をよく聞くが、「自国第一主義」は民主主義の原則に従った行為なのである。

 民主主義の基本は主権者と被支配者(国民)が一致することである。したがって、国民の代表が統治するのが民主主義だが、この国民の中には外国人はもちろんグローバル企業も含まれていない。一部で「外国人参政権」などという奇妙な運動が行われているが、これはもちろん、反民主主義的行為である。

 「国家は国民のものである」という民主主義の大原則に立ち戻っているのがトランプ大統領の「自国第一主義」である。

 この流れで言えば、受け入れを拒否しているのに押し寄せる人々を「移民」と呼ぶことはできない。

 例えば、独立後間もない時期の米国や一時期の欧州などのように「どうぞ来てください」と宣言すれば、移民と呼ぶことができるが、国境に壁を作ったり軍隊を配備して流入を阻止しようとする国に不法に侵入する人々が犯罪者であることは言うまでもない。ましてや、数千人単位でグループを作れば「侵略者」とでも呼ぶしかないことは、トランプ氏の言葉を待つまでもない。

 個人レベルで言えば、パーテーィーに招待されて家を訪問するのは合法だが、呼ばれてもいないのに、家のドアをこじ開けて入るのは「強盗」であり撃ち殺されても仕方が無いということである。


■賃金が上がらないのはグローバル化の影響である

 例えば、人手不足だと騒いでいるのに、日本の若者(労働者)の賃金はさほど上がらない。グローバル化によって広がった市場において、多くの発展途上国(後進国)が「人間の安売り」=低賃金労働力の供給を行っているからである。

 この「低コスト」の恩恵を受けているのは、もちろんグローバル企業である。彼らはどこの国に人間であれ、コストが安いほうが都合がよいのである。「高い賃金を払ってみんなで幸せになろうね!」などという古き良き日本(古き良き米国も・・・)の哲学は全く通用しない。

 安倍政権の「移民政策」が色々議論されているが、介護、建設、飲食などの人材が不足しているのは給料が安いからである。だから給料をあげれば(例えば倍にするとか極端なことをすれば・・・)、人手不足などすぐに解消する。

 そもそも、外国人がそのように日本人が敬遠する仕事を自ら進んで行うのは、本国の貨幣価値に換算すれば高給であるからに過ぎない。彼らも、(本国換算で)給料が安ければそのような仕事に見向きもしない。

 長期的には、移民(外国人労働者)政策よりも少子化対策に国民の血税を使うべきだし、より短期的には、そのような業種の企業の経営者が業務の生産性をあげる努力をすべきである。

 最近、居酒屋などの飲食店でタブレットによる注文が標準となりつつあるが、介護、建設、飲食などの業種ではこのような生産性向上のタネがいくらでもある。これまでカイゼンされなかったのは、低賃金労働者が十分供給されてきたからである。

 したがって、このような業種の経営者は甘えを捨てて、移民(外国人労働者)などをあてにせず、生産性の向上による従業員給与の引き上げに努力すべきである。

 実際、日本の高度成長期には、中学卒業生が「金の卵」と呼ばれるほどの人手不足が生じたが、(基本的に)移民や外国人労働者を受け入れていなかった日本は、「自動化」「機械化」で乗り切った。逆にそのことが、日本の機械産業やロボット産業を刺激し「高度成長」を牽引した。

 逆に欧州では安くて豊富な(少なくとも当時はそう見えた)移民(外国人労働者)を潤沢に使えたため、機械産業やロボット産業で日本の後塵を拝し、しかも「移民問題」という、現在の欧州における最大級の問題の原因を作ってしまった。
 日本政府は、このような歴史に学ぶべきである。


■EU崩壊

 本書でEUに関する問題に割くページは、題名の割には少なく、私の意見と近い部分も多いので、下記現代ビジネスのコラムを参照いただきたい。

★「ブレグジッドは大正解 英国よ沈みゆくEUからいち早く脱出せよ!」
 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57876


(大原浩)


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書評:選択の自由 自立社会への挑戦その2






書評:選択の自由 自立社会への挑戦
M&R・フリードマン 著、 日本経済新聞出版社
https://amzn.to/2ySI0jx


■学問(学習)の自由と特殊利益団体

 アダム・スミスは国富論の中で、「ギリシャ・ローマ時代には、優秀な(家庭)教師を自由に選んで雇うことができた。ところが、現代の大学では<卒業証書>を人質にした教授たちは、生徒と(授業料を支払う)親を思いのまま支配している」と嘆いています。そして250年ほど経過した現在でもその状況は変わらないどころかむしろ悪化しています。

 教育も医療や年金などと同様に独占の被害が大きい分野です。国家が教育にかかわるようになったおかげで「競争原理」が働かず、生徒や親の選択の自由が侵されているのが最大の原因です。これに対してフリードマンは、「教育クーポン制度」を提案し、過去米国のいくつかの地域で実験も行われ成功しています(ただし、教職員組合のような特殊利益団体の圧力でつぶされています・・・)。

 教育クーポン制度では、政府から発行されたクーポン金額の範囲内(足りなければ自分自身で加算することができるのが原則)で、公立・私立を問わず一定以上の水準の授業を行っている学校であればどこにでも自由に通学できますし、転校にも制限がありません。

 学校が自由市場で評価され格付けされるだけではなく、その学校に所属する教師たちの能力も厳しく評価されるわけです。


■負の所得税

 最近「ベーシックインカム」の議論が盛んになってきていますが、その背景にあるのは「世界中の先進国が肥大化する社会保障に悲鳴を上げ、負担できなくなりつつある」ということです。

 財政支出の歯止めがきかないのも民主主義の特徴です。もちろん、すでに述べた様に特殊利益団体の強欲さに歯止めがきかず、補助金・補てんなどが際限なく増えていくのが大きな原因の一つです。しかし、より本質的な原因は民主主義そのものの中に内在します。

 例えば「子供議会」で次の提案をするとします。
「三時のおやつのショートケーキのイチゴを2個から3個に増やすのに賛成な人?」もちろん満場一致で可決されるでしょう。少しだけ高くなるおやつ代を払うのは、親たちですから子供たちの懐は痛まないというわけです。フリードマンは、このように「誰のお金」を「誰のために」使うのかについて、次の4つに分類しています。

 1)自分のお金を自分のために使う。
   いわゆるポケットマネー。これまでの経済学の<合理的経済人>はこの部分だけにスポットを当てて、人間の経済行動は合理的であるとする。
   たしかに、他の三つのケースに比べて合理的判断が行われやすいが、この活動は全体の一部であるし、完全に合理的でもない。

 2)自分のお金を他人のために使う。
   子供や親だけではなく、赤の他人のためにも人間は理念に基づいた慈善活動などを通じてこのような行動をする。

 3)他人のお金を自分のために使う
   前述の子供議会だけではなく、国から何らかの補助金などを獲得する行為も他人のお金(国民の税金)を自分のために使う行為といえる。会社の経費で飲み食い(接待)する場合も、自分の飲食代についてはこれが当てはまる。

 4)他人のお金を他人のために使う
   財団の管理者が慈善事業を行う場合や、弁護士や信託銀行が「信託」を受ける場合、さらには金融商品の「投資信託(ファンド)」もこの例である。この場合、「他人のお金を他人のために使う」管理者が自分の得になるよう行動するという点がフリーマンが指摘する重要点である。
   例えば弁護士が信託された財産を使い込むという事例はよく聞くし、投資信託は投資家が儲からなくても運営会社は着実に儲かる商品である(その具体的手法についてはここでは述べない)。

 国の財政支出というのは、実は3)と4)が合わさったものであり、特殊利益団体の欲望には限りが無く、官僚・役人が税金を自分の有利になるように使おうとすることも止められないのです。

 結局、複雑怪奇に絡まった財政支出を解きほぐし、整理したうえで減らすなどというアクロバットはだれにもできないということです。

 したがって、解きほぐせなくなった糸をすべてご破算にし、新たにまっすぐなベーシックインカムという一本の糸を垂らすほうがはるかに合理的だということです。

 さらに、フリードマンは一歩踏み込んで負の所得税というものを提案しています。簡単に説明すれば、次のとおりです。

 1)世帯の最低限の生活に必要な金額を例えば生活保護水準の月額約16万円・年額200万円とします。

 2)負の所得税の税率を50%とします。

 3)もし該当世帯の収入が100万円であれば負の税率50%×(基準値200万円−実際の所得100万円)=50万円が支給されます。

 4)もし基準金額の200万を上回れば、通常の所得税を払います。

 5)この負の所得税以外のあらゆる補助金・支援、強制加入の年金・健康保険もすべて廃止します。

 少なくとも理論的には素晴らしい案ですが、実際に導入するとなると特殊利権組織や、既得権益で潤っている人々が暴動を起こすかもしれません・・・。

 しかしながら、このシステムであれば、100万円の所得の世帯が頑張ってもう百万円稼げば、負の所得税50万円を上回るわけですから「補助金をもらって勤労意欲が衰える」ということはかなり少なくなります。

 経済発展の究極的な原動力は「国民の勤労意欲」であるわけですから、この負の所得税は多くの困難が予想されるにせよ、導入を目指すべきであると考えます。


■輪転機で紙幣を擦り続ければインフレになるか?

 よく言われるのが「1万円札の製造コストはせいぜい20円ほどである」ということです。20円以下の原価の商品を500倍の1万円で販売するのですから、日本銀行をはじめとする中央銀行は笑いが止まりません。さらに最近数多く登場した仮想通貨(電子マネー)は、100億円であろうが、1000億円であろうが電気代だけで維持できるシステムですからさらに利幅の厚い商売です。

 このような摩訶不思議な「貨幣の本質」について論じるには字数が足りないので、拙著「銀行の終焉」(あいであ・らいふ)などを参照いただくとして、誤解を恐れずに単純化すれば「紙幣(仮想通貨)」は「狸に化かされた人が見ている木の葉」です。紙切れにも電子信号にも本質的な価値はまったくありません。通貨として流通しなければ、福沢諭吉の肖像が描かれたちっぽけな紙切れと、1万円分の金を交換する人はいませんし、コンピュータ上の電気信号についても同じです。

 フリードマンは、政府(中央銀行)の通貨供給量の増減によって、金融市場(経済)をある程度コントロールできると考えています。確かに、通貨供給とインフレとの関係はあるように見えますし、これまでの金融政策においても通貨供給量のコントロールは極めて重要なものとされてきました。しかし、フリードマンが両者の相関関係の典型例として取り上げる1973年からの物価上昇においても、顕著な通貨供給量の上昇は1971年から始まっており、2年ほど遅行しています。しかもそれ以前の通貨供給量も決して少なくは無く、しかも1973年の第1次オイルショックの影響も考えなければなりません。

 また、日銀が2014年4月に始めた巨額に上る国債買い入れを主軸とする金融緩和政策もすでに5年目に突入しますし、それ以前の金融緩和を考えれば延々と資金を供給しているわけですが、一向に物価が上がる気配がありません。

 もちろん、歴史上まれな15年に及ぶデフレやマイナス金利への突入など特殊要因はたくさんありますが、そのような特殊要因に左右されること自体<資金供給とインフレの関係の公式>が存在しない証明となるのではないでしょうか?

 冒頭で申し上げた様に、通貨は葉っぱであり「人間の心の反映」です。いくら葉っぱ(通貨)を供給しても、人々がインフレが起こると考えて「買い急ぎ」という行動を起こさない限り、インフレは起こらないのではないでしょうか?現在の日本は、1990年頃のバブル崩壊以来、デフレマインドが沁みついているので、容易なことではインフレマインドに転換しないため、いくら資金供給を行ってもインフレが簡単には起こらないと考えます。


■供給した資金はどこに消えたのか?

 そこで疑問が生じるのは「有り余るほど供給した資金はどこに消えたのか?」ということです。

 フリードマンは、(国民)生産と通貨供給の関係を重視します。つまり、経済成長に見合った資金を供給すれば、世の中はうまく回るということです。多すぎても少なすぎてもいけません。この理論は非常に説得力がありますが、一つ見落とされていることがあります。それは、供給された資金は実体経済に投入されるだけではなく、金融商品にも投入されるということです。

 金融商品の中でも、実物株式や不動産などの実物に連動している商品は、資金の受け入れに限度があります。ところが仮想通貨や派生商品などの実態のない投資商品の場合はブラック・ホールのように資金を吸い込みます。日本銀行がいくら資金を供給してもインフレにならないのは、この点が大きな理由ではないでしょうか?

 仮想通貨や派生商品の実態というのはつかみにくいのですが、一度しっかり考察する価値はあるのではないかと思います。


(大原浩)


★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」(JKK)を設立しました。HPは<https://j-kk.org/>です。

★夕刊フジにて「バフェットの次を行く投資術」が連載されています。(毎週木曜日連載)


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書評:選択の自由 自立社会への挑戦その1






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M&R・フリードマン 著、 日本経済新聞出版社
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■なぜ国営なのか?

 共産主義ファシズムが横行するチャイナや朝鮮半島の国々をはじめとする発展途上国(後進国)などは論外として、米国や日本などの先進国(資本主義・民主主義)において、「国民の自由は保障されている」と多くの人々が信じています。

 しかし「本当に国民の自由が保障されているのですか?」ということが、本書の投げかける重要なテーマです。

 例えば年金・医療。ほとんどの先進国で、年金・医療は国家が担当するものと相場が決まっていますが、本当に「国営」でなければいけないのでしょうか?年金も医療保険も民間企業が多くの商品を発売しており、その中には少なくとも「国営」よりはるかにましなものがたくさんあります。

 それなのになぜ、年金や医療保険が国営(強制加入)なのでしょうか?かつての、郵便局対ヤマト(宅急便)の競争でも明らかなように、国民に安くてより良いサービスを提供できるのは、自由競争の中で淘汰されて生き残った民間企業です。逆に旧社会保険庁のような信じられないほど非効率で腐敗した組織は、その問題のすべてを国民の税金(および保険料)によって負担し、しかも日本年金機構と全国健康保険協会(協会けんぽ)という二つの祖息に分かれ「焼け太り」となりました。

 つまり、国営(官僚組織)である限り、どのような失敗をしても、組織自体が民間企業のように「倒産」することなく、すべての失敗の責任は国民(主に税負担)に押し付けられます。逆に、問題が生じると自分たちの無能さはそっちのけで、ほとんど関係が無いような原因を探し出してきて「この問題の原因を解決するためにはもっと人員を増強しないといけない」という主著を行い「焼け太り」します。これが「国営」の標準的な姿です。

 わかりやすいのが、今でも毎年3月末になるとよく見かける道路工事をはじめとする公共事業です。民間企業であれば「できる限り少ないコストで、できる限り充実したサービスを提供する」ように努力するのは当然のことです。そうしなければ、民間企業は繁栄しません。ところが「国営」では「一度獲得した予算は、どのようにくだらないことに対してでも使い切った方が良い」というのがルールです。事業を効率良く運営してコストを下げ余剰金でも出そうものなら大変なことになります。翌年から予算をその分減らされ人員もたぶんカ
ットされるでしょう。彼らにとって「効率的な事業運営は悪夢」にしか過ぎないのです。

 国営企業(ビジネス)が非効率なのは、官僚(役人あるいは公務員)個々人の能力の問題では無く、「成果をあげると評価されるどころか、むしろ非難される」組織のシステムそのものに大いなる問題があるのです。


■我々は本当に自由なのか?

 強制加入の国営ビジネスが、我々国民の選択の自由を奪うだけではなく非効率・腐敗の責任を税負担という形で我々に押し付けるのは明らかです。しかし、我々の自由を奪う国家の政策はそれだけではありません。

 フリードマンが指摘するのは「免許制度」です。医師・弁護士・(公共教育の)教師に国家の(公的な)免許が必要なことは誰もが当たり前と思っていますが、これもまったく理由がありません。

 まず、免許制度は国民に与えられた職業選択の自由を奪うわけですから、慎重に考えなければなりません。また、ユーザーである国民の側からしても国営の免許制度は極めて不便です。例えば医師免許。免許を与える基準が本当に正しいのかどうかは、国営以外に比較の対象が無いのでわかりません。少なくとも、何十年も前に免許を取得した医師の技量や知識が現在どのようなものであるのかはまったくわかりませんし、外科医の手先が器用であるのかどうかもまったくわかりません。さらには、救急隊員や看護師がただ単純に医師免許を持たないがために、必要な治療を行えなかったことによってどれほどの尊い命が奪われたのかわかりません・・・

 それに対して、民間企業が金融における格付け会社のように医師の技量を認定したり、格づけすれば、様相は一変します。命にかかわる医療だから、やはり国の免許が・・・という人には、国営の免許制度を残してもかまいません。郵便事業のように、国営の事業を実質的に残しつつ、民間の参入を促せばよいのです。国営事業と民間事業と、どちらが患者の役に立つ医師の技量の評価(ライセンス付与)や格付けを行うことができるのかは火を見るよりも明らかです。


■特殊利益団体と民主主義

 「民主主義は国民の総意を反映する」という話があります。確かに理念あるいはある一面だけを見ればこの意見は正しいでしょう。しかし、米国や日本をはじめとする民主主義国家の運営の実態について述べるとしたら、これはまったく間違った意見です。

 民主主義の運営の実態から言えば、「少数派の特殊利益団体が多数集まって国の政治を動かしている」のです。

 この「特殊利益団体」は、アダム・スミスが国富論の中で「商工業者」と述べているものと基本的に同じです。ビジネスの世界でいう「業界団体」というものに相当します。

 特殊利益団体は、自らの少数の仲間の利益を図るために、大多数の国民の利益を侵害する点に特徴があります。わかりやすいのが「コメ問題」でしょう。

 昔に比べればはるかにましになりましたが、日本国民は国際価格に比べて異常に高い値段のコメを売りつけられ、そのコメを買う以外の選択はありません(パンを買う場合も異常に高い小麦を使ったパンを買うしかありません)。

 望んでこのような高い商品を買う消費者はいないはずですが、国民の声によってこの制度の改革が行われることはありません。なぜなら、国民が1年間に使う米代はそれほど大きくなく、それぞれの消費者が怒りを募らせて「一般利益」団体を設立しないからです。それどころか、「特殊利益団体」を設立するほどの人数さえ集まらないでしょう。

 それに対して、国民の数%以下の農民がこの異常に高いコメ価格から受ける恩恵ははかりしれませんし、農業補助金などすべて合わせれば、農家一戸当たり数百万円から数千万円程度の利益は出るのではないでしょうか?

 それだけ儲かるのなら特殊利益団体の活動にも熱が入り、資金力にものを言わせて政治家を思いのまま自由に操り、大多数の国民に害を与える政策を延々と続けさせるのです。

 もちろん、国会の審議は最終的に多数決によって決まりますから、あまり露骨な自己利益を主張できません。そのため「食糧自給」など色々な屁理屈を広めるわけです。ちなみに、農産物を自給しても、肥料や農産物を運ぶ流通のための原油輸入がストップすれば国民が食糧を手に入れるのが困難になりますし、有事に農家が国民に「適正価格」で農産物を売ってくれるという保証もありません。

 結局、民主主義の運営においては、数限りない特殊利益団体が強い力を持ち、国民全体の利益は尊重されにくいし、「選択の自由」は常に危険にさらされているのです。


(大原浩)


★2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
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