書評:量子コンピュータとは何か



書評:量子コンピュータとは何か
 ジョージ・ジョンソン 著 早川書房
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 これまで株式市場などで「革新的技術」だとの評判を得て、「今すぐにも実用化」されそうな話をマスコミがたれ流した事例は数え切れません。

 「(常温)超電導」、「(常温)核融合」、「人工知能(AI)」などいくらでもあげることができます。「(完全)自動運転」もたぶんその一つになるでしょう(その理由の詳細は述べませんが、はるかに簡単な飛行機でさえいまだに「完全自動運転」が実現していません)。

 特に「AI」は過去何度目かのブームがやってきていますが、今回もそれは実現できないと思います。簡略に述べれば、「人間の脳が電気で動いているというのは間違った考えであり、実際には生体の化学反応の結果電気が生じている」と考えるべきだからです。

 また、人間の脳はあくまで体の一部であり、人間の脳の情報(ソフト)だけを移し替えるということも(SFではよくある設定ですが・・・)できません。例えば人間の脳はコンピュータの世界で言えば「IoT」のように体の各部分と情報交換を行っており、脳が各部分に指令を出すだけではなく、各部分が脳
に情報を送り影響を与えます。

 「臓器移植」をしたら「食べ物や娯楽の趣味が変わり」<調べてみるとその臓器の持ち主の嗜好と同じであった>という話があります。十分あり得ることで、脳が人間の体の各パーツとつながっているからには、むしろ必然といえます。

 人間の脳はウィンドウズのようにソフトとハードが分離しているのではなく、MAC以上にOSとハードが一体化しているといえます。

 さらに、本書でも簡単に触れられていますが、人間の脳細胞どころかその細胞を構成するたんぱく質などの分子、さらにはその分子を構成する原子(核や電子)が、「計算」=「思考」している可能性があります。

 限られた条件下の限られた内容の計算ですが、実際に量子(原子・光子・イオン・電子など)による計算が成功しているので、人間の脳細胞を構成する量子が「思考(計算)」していて、それが人間の「意識」を生み出している可能性は否定できません。しかし、数百年、数千年後(人類が滅亡していなければ・・・・)に解明するかも知れない事実でも、現状は雲をつかむような状況です。

 量子そのものの性質がまだ未解明なわけですから、量子の不思議な性質は実は(現在物理学会では常識となりつつある)多元宇宙(宇宙は一つではない!)の証明だと説明されることになったら、現在の量子論は大幅な修正を迫られます。

 もっとも、原理が分からなくても、ニュートン以前から人類はいろいろなエネルギーを活用する道具を生み出してきましたし、蒸気機関が発明された時もその動作の原理の詳細は未解明でした。

 ですから、原理が完全に解明されなくても(実用的)量子コンピュータが完成しないわけではありません。

 しかし、本書のオリジナル(英文)が執筆された2000年頃と、量子コンピュータ開発の現状を比べるとあまり進歩していないことが気になります。

 確かに初期の(古典的)コンピュータは真空管を使用していて、ビル一つほどのサイズで電卓以下の性能でした。当時の人々が現在のIT化を予想できなかったのも当然です。トランジスタが登場しなければ、現在のモバイル端末やインターネットに通じる大ブレイクは無かったかもしれません。

 しかし、量子コンピュータにおいてトランジスタに匹敵するブレイクがおこるのかどうかもわかりませんし、もし起こるにしても今すぐでは無いようです。


(大原浩)


*2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
 (JKK)を設立しました。HPはこちら https://j-kk.org/


【大原浩の書籍】

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書評:大収縮 1929−1933



書評:大収縮 1929−1933 「米国金融史」第7章
ミルトン・フリードマン+アンナ・シュウォーツ 著、日経BP社
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 米国の金融に関する歴史を詳細に論じた「米国金融史」の中で、いわゆる「大恐慌」に関する部分をピックアップした書籍です。

 今からは考えられないことですが、この時期にFRBが行った「金融引き締め」的政策についても詳細に論じられています。歴史の「たら・れば」は意味が無い議論だとは思いますが、フリードマンは、当時発足したばかりの連邦準備制度(それまではNY連銀が事実上その機能を果たしていた)が円滑に機能していれば、過去の大型不況と同程度の打撃を受けたにしても、今日まで「大恐慌」と呼ばれ<恐怖感>を持って論じられるような深刻な事態にはならなかったであろうと結論づけています。

 公開市場操作をはじめとする金融政策、さらにはハイパワード・マネーのコントロールがうまくいったとして、「本当に大恐慌が起こらなかったか?」という点について、私は懐疑的です。本書を読む限り机上の空論以上のものではありません。本書巻末の<全米経済研究所理事の所見>においても、金融実務家(市場関係者)の観点から、同じような疑問が提示されています。

 もう一つの重要ポイントは、当時の金融政策が稚拙なこともあって多数の銀行を倒産させてしまったという事実です。現在でも<金融機関の自己責任>については厳しい議論が続いています。金融機関にも一般企業と同じような経営上のモラル(経営責任)を求める声があるのは当然のことですが、<金融システムの維持>を中心に考えるのであれば<金融機関は倒産させてはならない>というのが本書の結論であり、私も同感です。

 この大恐慌の教訓から、モラルの問題があるにもかかわらず、金融機関は倒産させない(あるいは預金保険機構で守る)のが一般的政策です。また、不況期には過剰ともいえるほど資金を供給します。

 1990年のバブル崩壊以来、ひたすら資金供給と低金利政策を続けてきた日本の政策が典型でしょう。史上まれに見るバブルの崩壊にも関わらず、人々が路頭に迷うような大恐慌が起こらなかったのは、日本政府(日銀)の金融緩和政策のおかげです。
 また、大部分の金融機関は合併などで生き残りましたが、1997年の北海道拓殖銀行を皮切りに金融機関を倒産させた時期に不況は深刻化しました。この時期の方がバブル崩壊直後よりも危険な状態であったのは事実です。
 おおむね2003年の「りそなショック」(実質国有化)以降、銀行を救済する方向に転換してから日本経済が持ち直してきたといえるでしょう。

 しかし、この超金融和政策は「大恐慌」こそ引き起こさなかったものの日本に20年以上もの経済停滞をもたらしました。本格的に日本経済が回復の兆しを見せ始めたのは、2012年末のアベノミクス開始以降です。第2次世界大戦があったとはいえ、1929年に始まった大恐慌が16年後の1945年には終わっているわけですから、どちらを選択すべきは実のところ微妙な問題です。

 2008年のリーマンショックでも、日本型の超金融緩和政策がとられ(当時米国で倒産させた主要金融機関はリーマン・ブラザースだけです)、歴史上未曽有の<金利バブル=マイナス金利>を世界中に引き起こしました。おかげで、今回も「大恐慌」は免れましたが、この処理には日本のバブル同様20年くらいはかかると考えています。現在リーマンショック後10年目ですからまだ折り返し地点です。

 金利引き上げによる正常化が盛んに議論されていますが、実際のところは本格的に実行できる段階ではないと思います。

 特に、欧州とチャイナなどを含む発展途上国(後進国)が、世界経済の足を引っ張るのではないでしょうか?

 逆に、日本や米国は低金利を有効に使って益々繁栄すると考えています。
 日本は1994年にダウ・ジョーンズが4000ドルを超えたあたりにいると思います(現在のダウ・ジョーンズは2万5000ドル近辺です。日経平均を6倍すると12万円くらいの感覚です)。

 また、1980年代のダウ・ジョーンズは1000ドル程度ですから、現在は約25倍。日経平均の底値を8000円とすれば20万円のイメージです。

 もっとも、世界中で超金融緩和によって問題を解決しようとする流れが続けば<金融システム>そのものが危うくなるリスクは常にありますから、その点は十分注意する必要があります。

 なお、本書巻末の元FRB議長ベン・S・バーナンキのコメントは、本書の内容を熟読したうえで、重要なポイントを的確に指摘していますので、大いに参考になると思います。


(大原浩)


*2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」
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書評:資本主義と自由



書評:資本主義と自由
ミルトン・フリードマン著、日経BP社
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●自由こそ資本主義の源流

 1962年にそれ以前の講義内容を基に出版された本ですが、60年近く昔の内容であるにも関わらず、現代我々が直面している諸問題に関して鋭く切り込み、かつ明確な解答を与えている名著です。

 1776年に国富論の初版が発刊されてからほぼ250年、その輝きを失っていないのと同様、本書も風雪に耐えながら残っていく古典となるでしょう。また、アダム・スミスに関する言及もしばしば登場しますが、きちんと彼の主張を理解したうえでのコメントであり、本来の内容を捻じ曲げて伝えている自称<スミス派>の人々とは一線を画しています。

 また、本書の内容そのものがアダム・スミスの正当な後継者であることを示しています。スミスは「見えざる手(決して『神の』ではありません!)」、すなわち国民が参加する市場の「自律的コントロール」を重視していました。フリードマンも筋金入りの「自由主義者」であり、市場あるいは民間の力最大限に活用するのが合理的であると主張しています。

 ただし、「国家」がある分野において重要な役割を果たすことは二人とも認めています。まず第一は「国防」、その次に国内の「治安」があげられます。「国防」に関しては日本国内には奇妙な「憲法9条教」の信者がたくさんいますが、国内の同胞から自分の安全を守るのに警察が必要であると主張しているのに、国外の侵略的国家から自国を守るための軍隊が必要無いなどと主張するのはクレイジーな話です。

 どのような社会にも犯罪者は一定割合(比率の多少の違いはあっても)で出現しますし、独裁者が支配する邪悪な国家は朝鮮半島だけではなく、世界中の多くの地域に観られます。

 そのような「夜警」としての役割以外の国家の重要な役割には<カルテルの打破>があります。スミスは「商工業者が集まれば、それが趣味の会であっても結局<談合>になる」と何回も指摘していますが、「厳しい競争の中で互いに協力して戦う」というのは人間の本能であり、美徳とも言えます。

 しかしながら、国民から見れば「業者が結託して価格を吊り上げる」等の行為は、大いなる不利益です。したがって、国家がそれらの業者(アダム・スミスのいう商工業者)を監督し、互いの競争を促進しなければなりません。つまり「自由競争を担保するために政府の存在が必要」なのです。

 ところが、自由競争を促進すべき政府が、商工業者の後押しをして輸入関税・輸入制限、補助金、参入制限、さらには自らが参入する「国営」などの手法によって自由競争を妨げています。


●政府が行うべきではない14の事業

 フリードマンは、第2章で政府が行うべきではない事業の14のリストをあげています。

1)農産物の買い取り保証価格制度
2)輸入関税・輸出制限
3)産出規制
4)家賃統制
5)最低賃金・法定金利
6)産業規制・銀行規制
7)ラジオ・テレビ規制
8)社会保障制度(特に老齢・退職年金制度)
9)特定事業の・職業の免許制度
10)住宅政策
11)平時の徴兵制
12)国立公園
13)営利目的での郵便事業
14)有料道路

 フリードマンが提案してから60年以上たっても、あまり進歩が無いのは残念です。

 13)の郵便事業は、日本では民営化されましたが、「信書」に関してはばかげた規制がまだ残っておりヤマトは事実上市場から排除されました。

 1)の農産物に関する規制は、規制を行っているどのような国でも農業が発展せず、特に農民一人あたりに換算すれば、莫大な金額をつぎ込んだ日本の農業は壊滅的状態です。

 2)の輸入関税・輸出制限について、アダム・スミスは、<国家の利益のためではなく、特定の商工業者の利益のために行っているに過ぎない>と切り捨てています。

 5)の最低賃金は、弱者を守るように見えて実のところ弱者を苦しめています。市場経済では、価格が上がれば需要は減ります。最低賃金によって雇用の総数は減り、職にあぶれた人はゼロ円の収入しか得られない失業者になります。また、最低賃金によって企業の競争力がゆがめられ、産業の発展が阻害されることも雇用にはマイナスです。

 8)の年金制度(強制加入)は、個人の人生に国家が介入するやり方です。20歳を過ぎた大人に「老後の生活設計をどのようにするのか」国家が指導するというのは全体主義的です。アリのようにきちんとたくわえをしなかったキリギリスにどのように国が対応するのかは、別次元の話です。

 9)の免許制度はかなり議論を呼ぶ争点だと思いますが、フリードマンは医師や弁護士の免許制度も不要であると断じています。当然、「免許制度が無ければ選択に困る」という話が出てきますが、「資格を持ったやぶ医者や悪徳(無能)弁護士がどれほど多いのか?」ということを考えるべきでしょう。例えば、金融機関や企業の評価は複数の民間の格付け機関(調査会社)が行い、全く問題がありません。むしろ企業の信用調査における民間の情報・分析の蓄積は驚くべき程です。「世間の評判」はかなり信頼がおけるものですし、ネット社会での「評判」の伝達スピードは迅速です。

 そもそも、これらの免許が終身であることが問題です。日進月歩で進歩する現代社会において、30年前に試験に合格した人物の技量はあてになりません。自動車運転免許でさえ5年ごとに更新しなければならないのですから、これらの免許も5年あるいは10年ごとに更新手続きを義務付けるべきです。

 同じことは大学を含む教員にも言えます。大学教員でもあったアダム・スミスは「競争原理が働かない大学の教員は腐敗する」と述べていますが、まさにそれが現実になっています。
 教員も自由市場で(学生や学費を支払う親から)きちんと評価されるようにならなければ、教育の質の向上は見込めません。この点においてフリードマンは、生徒や親が公立・私立を問わず、好きな学校で学べる「バウチャー制度」という優れた提案をしています。


●リベラルとは何か?

 本書の冒頭でフリードマンは、リベラルという言葉が現在では全く反対の意味に使われていることを嘆いています。

 そもそもリベラルという言葉は「自由を大事にする人々」をさしますから、本来個人の自由を最大限に尊重する「小さな政府」を信奉する人々を意味したはずです。ところが本来の意味でリベラルな人々は、現在は「保守派」と呼ばれ、「大きな政府(福祉国家)」を信奉したり共産主義(全体主義)のように個人の自由を奪う(例えばナチスは国民社会主義ドイツ労働者党で共産主義を信奉(共産党を弾圧したのは同じ方向を向くライバルであったから)し、毛沢東やスターリンはヒットラーをはるかに上回る人民を粛正で虐殺しています。もちろん、北朝鮮もその仲間です)人々が勝手に自分たちのことをリベラルと呼び、それが左翼勢力に支配されているマスコミによって広まり一般化しています。

 要するに「リベラル」という言葉が「背のり」されたわけですが、それほど「自由」という言葉は現代社会において重みがあります。政治的な意味合いだけではなく「自由」と「民主主義」は、ピーター・ドラッカーが述べる「知識」が経済の中心である現代において、発展のための必須の条件なのです。

 例えばガレー船(古代において2列に並んだ多くの漕ぎ手が全力で漕ぐことによってスピードを増した船)の漕ぎ手を考えてみましょう。彼らを一生懸命働かせるため、鎖でつないで鞭打てばいくらか効率が上がるかもしれません。むろん、「インセンティブ」が全くない彼らを働かせるための監督管のコストは馬鹿になりませんが、「牛や馬」と競合する労働であれば、このような手法もそれなりに役に立ちます。

 ところが、現代の「バイオ研究所」において、研究員達を鎖でつないだうえで鞭打つことで、より良い研究の成果が出るでしょうか?むしろ逆なはずです。

 米国の南北戦争は「奴隷解放」に関する倫理的な争いのように語られ「リンカーン」は、奴隷解放の英雄のように語られますが、そうではありません。
 農場労働で大量の奴隷(牛や馬の代わり)が必要であった南部に対して、工業化が進んだ北部では工場で奴隷を鞭打って働かせるよりも、解放奴隷にして「えさを与えてやる気にさせたほうが」より効率的だったのです。

 少し皮肉な表現をすれば「社畜」であるサラリーマンと、コンビニ・オーナーなどの自営業者との関係に近いということです。少なくとも自分が「社畜」であると感じているサラリーマンは、必要最低限の仕事をして楽をすることしか考えません。それに対してコンビニ・オーナーは24時間息の抜けない過酷な環境であっても頑張ります。売り上げや利益が増えた場合の「一国一城の主」というインセンティブがあるからです。

 「女工哀史」などという言葉もありますが、工場で鞭打って働かせるなどという話は聞いたことがありません。農作業であれば労働の質はそれほど問われませんが、工場の労働者がたくさんに別れた工程の中で「へま」をすれば、完成品全体に影響を与え大きな不利益を被ります。ですから、鞭打たれていやいや最小限のことを行う奴隷は役に立たず、「インセンティブ」を与えられて、積極的に仕事を行う「解放奴隷」が米国北部の工業地帯に必要不可欠であったのです。

 この事実は、「10万年の世界経済史」<下>(グレゴリー・クラーク著)によって19世紀〜20世紀にかけての世界の繊維産業でも検証されています。

 当時英国は、繊維工場の機械や技術者を世界中に派遣する技術大国でしたが、他の国々(特にアジア、アフリカなど)の工員の賃金は英国をかなり下回っており、賃金において英国は競争上不利でした。ところが、全体的な英国の競争上の優位はなかなか崩れ無かったのです。著者はその理由を明確には述べていませんが、おおむね「工員の質」および「マネジメントの質」のかなりの差が英国と他の国々の間にあったのは間違いないようです。

 したがって、リベラルを名乗りながら、実際には全体主義・独裁主義であるチャイナ、南北朝鮮、さらにはベトナムなどの共産主義国をはじめとするグループは、「知識」が最も重要な資源である現代において、永遠に先進国の仲間入りはできません。これらの国々を「発展途上国」あるいは「新興国」と呼ぶことがありますが、少なくとも「知識社会」における発展が望めないのですから「後進国」と呼ぶのが正しいということになります。


●合法的利権集団である労働組合について

 政府が行っているわけでは無いので14のリストには入っていませんが、労働組合も社会に害悪をもたらすものの一つです。

 フリードマンが行った大まかな分析では、労働組合の力で労働人口の10〜15%の賃金が10〜15%引き上げられると、残り85%〜90%の賃金水準は4%押し下げられるという推定に達しています。他の研究者による数字もほぼ同じ内容のようです。

 商品の価格が上がれば需要は低下します。その結果その労働組合が牛耳る職場や同業などから弾き飛ばされた人々が職探しをします。供給が増えるので、それらの人々の賃金は当然下がります。結局、低賃金労働者を犠牲にして高給取りの組合員が潤います。

 フリードマンの言葉を借りれば「労働組合は、雇用をゆがめてあらゆる労働者を犠牲にし、ひいては大勢の人々の利益を損なっただけではなく、弱い立場の労働者の雇用機会を減らし、労働階級の所得を一段と不公平にしてきた」のです。


●今こそ資本主義と自由について考えるべきとき

 60年前のフリードマンの鋭い指摘にも関わらず、現在に至るまで国家の機能は肥大化してきました。何か問題があれば「国が悪い」と、責任を押し付ける風潮がその流れを加速させたのは間違いありませんが、国の役割が増えれば増えるほど、個人の自由は制限されます。

 日本をはじめとする先進資本主義国家が、共産圏のような全体主義・独裁国家になってしまわないよう、今こそ「国家」と「個人」の関係を見直すべき時ではないでしょうか?


(大原浩)


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ドラッカー18の教え 第15回



産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
6月号連載記事

■コミュニケーションは受け手が主役


●禅問答

 こんな禅問答があります。

「誰一人いない山奥で大木が倒れた。音は聞こえるか?」

 山奥で大木が倒れれば、空気は当然振動します。しかし、それが「音」になるためにはその音が、人間の耳の中の鼓膜を振動させ、その振動が脳の中で音として認知される必要があります。つまり、だれもいない山奥で木が倒れても、音を感じる人間がいなければ音は聞こえないということです。

 ドラッカーも著書でこのエピソードを取り上げていますが、「誰もいない山奥で叫びまくっている」経営者やマネージャーは決して少なくありません。
 経営やマネジメントにおけるかなり深刻な問題といえるでしょう。


●情報とコミュニケ―ション

 ドラッカーは人間同士でやり取りされるものを、「情報」と「コミュ二ケーション」に大別し、それぞれまったく異なるものであると指摘します。

 通常、人と人の間では、コミュ二ケーションの中で情報を伝達します。
 例えばランチやディナーで雑談しながらのやりとり、会議室での表情や身振り手振りなどのボディーランゲージを含めたやりとり等々。立ち話でちょっとした伝達をするときでさえ、声の調子や表情でその伝達事項の「意味」がかなりわかりますし、電子メールの一斉配信のときでさえ、伝えたい内容だけではなく、ちょっとした挨拶やコメントが添えられるのが一般的です。

 このように分かちがたく結びついている「情報」と「コミュ二ケーション」ですが、その本質は全く別物です。

 最近、コンピュータやインターネットなどの「情報機器」が発達したおかげで強く意識されようになったのですが、情報とは「ビット」です。ビットを単位として使ったのはクロード・シャノンがはじめてですが、要するに2進法の一桁=「0と1の組み合わせひとつ」のことです。一般的には「1バイト=8ビット」という関係であり、「1キロバイト=1000バイト」やメガ(バイト)やテラ(バイト)はパソコンなどの性能を現す言葉として一般的です。数が多いほどたくさんの情報を扱うことができるというわけです。
 この情報の分野で驚くべき能力を発揮しているのがコンピュータや通信ネットワークであることはいまさら言うまでもありません。

 それに対してコンピュータが苦手とするのがコミュニケーションです。
 IBMのワトソンはAI=人工知能の最先端としてもてはやされていますが、IBM自身はワトソンを人工知能とは呼んでいません。「エキスパートシステム」と呼んでいます。

 「エキスパートシステム」とは何か?
 人工知能が人間の脳の機能全体と同じように機能するのに対して、エキスパートシステムは人間の脳の役割の一部を模倣します。例えばワトソンは、IBMのディープ・ブルーがチェスの世界チャンピオンを破った後構想され、ジョパティーという米国のクイズ番組のチャンピオンに勝利すべく莫大な費用と長年の研究開発期間によって完成しました。この番組は、過去全米を揺るがしたクイズ番組のスキャンダルなどの経緯から、「解答が出題されて、その解答の問題を答える」という変わった形式です。しかし要するに、「質問に答える」という人間の脳の機能の一部に特化したエキスパートシステムです。

 チェスよりもはるかに複雑な脳機能の役割を代替しているのですが、実際の対戦で大きなハンディキャップになったのが、「ワトソン」はコミニュケーションができないということです。クイズの問題は人間の司会者が読み上げるのですが、ざわついた会場でその問題を聞き分ける能力がワトソンに無かったため、出題と同時にテキストデータで送信されました。したがって、人間の解答者が、司会者の表情、声の調子から多くの情報を得ることができ、しかも人間の対戦者同士も相手の表情などを読み取ることができたことに対するハンディ
キャップがあったわけです。
 もっとも人間の解答者は、ワトソンの「完璧なポーカーフェイス」に翻弄されたかもしれません・・・


続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
6月号をご参照ください。


(大原浩)


*2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」(JKK)を設立しました。HPはこちら https://j-kk.org/


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書評:史上最大の発明 アルゴリズム



書評:史上最大の発明 アルゴリズム 現代社会を造り上げた根本原理
デイヴィッド・バーリンスキ 著、早川文庫
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 物理学における「統一理論」の数式は、「神の方程式」とも呼ばれます。
 実のところ現代科学は、キリスト教というカルト宗教の蹂躙と対決しながら発展したように見えて、実のところ「この世(宇宙)」は、ある一つの理論(数式)によって想像され支配されたという新たなる「科学(物理学)」という一神教を広げてきたのかもしれません。

 アルバート・アインシュタインの「神はサイコロを振らない」という言葉は、まさしく物理学(科学)の一神教的側面を象徴しています。

 しかし、確率論や統計学の発達(学問として確立したのはごく最近のことです)や、「種の起源」に端を発する「生物進化論」などが、その一神教的世界観を覆しつつあります。

 確率論や統計学には神の定めた方程式など存在せず、「偶然」と「時間の経過」が物事を決定します。アインシュタインの言葉に対して量子論の偉大な先人であるニールス・ボーアは「神が何をすべきかに注文を付けるべきではない」と反論しています。確かに気が利いた反論ですが、正しくはリチャード・ドーキンスが「神は妄想である」の中で述べているように「神は存在しない」のです。

 ドーキンスが、生物学や遺伝学の研究の過程で「神は妄想である」という結論に至ったことは大変興味深いですが、アルゴリズムも「神を存在しない」という考え方を後押しします。

 アルゴリズムも、考え方としてはギリシャ・ローマに遡ることはできます。
 というよりも、西洋の学問は、ほとんどすべてギリシャ・ローマ時代に遡ります。ただし、その偉大な文化遺産を受け継いだのはヨーロッパではありません。中世のヨーロッパはカルト宗教に支配された、現在の北朝鮮よりもおぞましい状況であったためギリシャ・ローマの英知はすべて失われてしまいました。

 その英知を正しく受け継いだのはイスラム圏であるアラブ世界です。当時のアラブ社会は、高度に文化が発達し自由にあふれた世界でした。そもそも、現在の科学の基本中の基本である「アラビア数字」は当時高度な文化を誇ったアラブ社会から、未開のヨーロッパに伝わったためそのように呼ばれます(起源はインド)。

 その他にも、アルがついた、アルカリ、アルコールのような科学にかかわる言葉はたくさんありますし「アルゴリズム」もその一つです(12世紀にラテン語に翻訳されたアラビア代数学の創始者の名前が変化したもの)。ちなみに、コーヒーやレモンなどアラビア語起源の言葉は無数にあります。

 しかし、現代のコンピュータ言語へとつながる学問(数学)の一部として確立したのは、1646年生まれで70歳まで生きたゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツあたりでしょう。

 そしてライプニッツが研究した二進法をベースに1912年生まれ(1954年没)のアラン・チューリングが発明したのが「チューリングマシン」、すなわち現代のコンピュータの概念です。

 本書でも述べられているように、相対性理論や数学の公式と違って、アルゴリズムは何も証明しません。何かの原理を解き明かすという存在ではないのです。ですから、進化論、確率、統計学などと同じく、一神教的科学から見れば「異端」なのです。

 しかし、それにもかかわらず、本書のタイトルにもあるように人間社会への影響という点では「史上最大の発明」とも言えます。

 本書の最後の部分で、DNAがたんぱく質を合成する過程は「アルゴリズム」ではないかという指摘がありますが、全くその通りです。

 つまりコンピュータだけではなく、生命もアルゴリズムによって機能しているのです。ただし、だからといって人間の脳がAIで置き換えることができるとか、人間そのものを合成可能といっているわけではありません。

 むしろ逆で、アルゴリズム(単純な手順=計算の繰り返し)というシンプルで意味を持たないものが、恐ろしく複雑な世の中を作り出しているからこそ一種「理解不能である」と主張しています。


(大原浩)


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書評:「ゆらぎ」と「遅れ」 不確実さの数理学



書評:「ゆらぎ」と「遅れ」 不確実さの数理学
大平徹 著、新潮社
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 「神の方程式」と呼ばれる「すべての事象をたった一つの方程式で表す」ことを目指す、相対性理論や量子論などの対岸にある「不確実さの解明を目指す【現実の科学】」のうち、「ゆらぎ」と「遅れ」にスポットをあてて解説した本です。

 「ゆらぎ」と「遅れ」だけではなく、「確率」や「複雑系」などの根本的事象にも触れた、比較的わかりやすい解説書だと思います。

 「ゆらぎ」に関しては、「共鳴」が最も興味深い話です。著者や私が学生のころ、短波放送で世界中のラジオ局の放送を聞き、ラジオ局から「ベリカード」というものをもらうことがはやりましたが、その短波放送のチャンネルのベストポジション(ダイヤル式ですから・・・)を見つけるのが一苦労でした。

 そのチューニングに「ゆらぎ」やそこから派生する「共鳴」が大きく関係しているわけです。ちなみに電波の「ノイズ」もゆらぎです。

 「遅れ」の代表的なものは「フィードバック」です。カラオケのマイクでいわゆるハウリング現象が起こるのは<カラオケのスピーカーから出た音をマイクが拾い、それをまたスピーカーが再生するということを繰り返す>からだということをご存知の方も多いと思います。

 個々のエピソードはなかなか面白く、解説も平易なので入門書としてはよくできていると思います。

 ただ、その割には経済や金融に関する応用の話が出てきますが、よく言われる「Jカーブ効果」は、そのような現象が本当に存在するのか不明ですし、フラッシュ・トレーディングは、昔から行われている「場立」や「ブローカー」の「鞘抜き」を高速コンピュータで行っているにすぎません。

 例えば、場立(ブローカー)が大口顧客から大量の買い注文を受けたとします。場立は、顧客の注文を市場にオープンにする前に、自己勘定で市場から買います。その後大量の買い注文によって市場価格が上がるのは間違いありませんから、場立はその上がった価格で売り抜け確実に儲けるわけです。

 銀行のトレーディング部門も、メーカーや商社から大口の売買注文があると同じ手法で儲けていました。私が現役のディーラーであった時には、珍しくありませんでしたが、現在は場立も存在しませんし、取引もコンピュータ化されていますから廃れているかもしれません。その代り、フラッシュ・トレーディングがはやるのかもしれません。

 最終章は、著者の個人的な雑感ですが、その視点には共鳴するところがあります。人間の脳の機能においても「ゆらぎ」や「遅れ」(こうもりをはじめとする生物のセンサーなどにもこれらは応用されている)は重要ですから、それらが基本的に存在しないコンピュータがいくら進化しても、「意識」を持つことは無いように思います。


●がん検診で陽性と判断されても本当にがんである確率は4%未満である


 本書評でここのところ「確率論」にかかわる書籍をご紹介することが多いのですが、毎日新聞でこれらの書籍によく取り上げられる「教科書的事例」に関する記事が出ていたのでご紹介します。

 1000人のうち10人存在するがん患者のうち8人を見つけることができる(つまり80%のがん患者を見つけることができる)検査というと、いかにも精度が高いと思われがちなのですが、「確率論的」に筋道立てて考えると、それが全く違うということがよくわかります。

 確率論というのは、直感的に非常にわかりにくいのですが、がん検診をはじめとする医療検診の結果の信頼度が低いのは次の理由によります(確率論の本では必ずと言っていいほど取り上げられる事例)。

1)がんの有病率が1%とします
 検診を受けた人のうち、実際にがんである人の割合は1%=10人です。つまりがんではない人は990人です。

2)この検査の「感度」は80%のため、実際にがんである人10人のうち、検査で「がんの疑い」と判定されるのは8人(80%)です。

3)「特異度」も80%のため、がんでない990人のうち、判定が「がんの疑いでない」とされるのは792人(80%)。逆に「がんの疑い」とされるのは198人(20%)です。

4)2)と3)を合わせて216人の陽性判定(がんの疑いがあるとされた人)(=8人+198人)のうち、本当にがんであるのは2)の8人だけですから、8÷216=0.037。

5)つまりがん検診で「あなたはがんの疑いがある」と宣告された人のうち、本当にがんである人は4%未満であり96%以上の人ががんとは無縁であるということです。

 私の友人にも「がんの陽性判定」を受けて衝撃を受けている人が少なからずいますが、この事実を知ればかなり安心でしょう。

 多くの確率論の本を読むと、この事実を確率論的に理解している医師は全体の1割をはるかに下回ります。ほとんど無意味ながん検診が広く行われている理由の一つです。

 ちなみに「感度」を80%以上に上げればよいと考える方もいるかと思いますが、感度を上げればそれだけ「がんではないのに陽性判定される人の比率」が増えいわゆる「疑陽性」の数が増大します。上記の例で言えば、真の陽性比率が4%未満からさらに低下するということです。

 逆に感度を下げれば、「がんであるのに検査で陰性(がんではない)と判定される比率」が高まり、がん検診の意味がますます薄れます。したがって、通常の検査ではできる限り「感度」を高めるようにします。

 つまり、がん検診におけるいわゆる「疑陽性の問題」は少なくとも現在解決不能ということで、「検診のジレンマ」と呼んでもよいかもしれません。

 「確率」は人間が直感的に理解しにくい理論であるため、医療以外でもこのような「誤解」の事例はたくさんあります。特に投資においてはこのよう「誤った直感による確率の解釈」を避けることが成功の一つです(ほとんどの投資家は誤った直感的確率に従って取引を行っている)。

<毎日新聞の記事>
 https://mainichi.jp/articles/20180506/ddm/016/040/002000c


(大原浩)


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書評:歴史の方程式 科学は大事件を予知できるか



書評:歴史の方程式 科学は大事件を予知できるか
マーク・ブキャナン著、早川書房
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 マーク・ブキャナンは、この本の出版後「複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線」という本も書いていますが、こちらのほうがより「本質」に鋭く迫った内容です。

 タイトルでは「歴史」となっていますが、物理的な「時間軸」を人間社会に当てはめると「歴史」になるわけです。

 現在の科学(物理学)の基礎は、アルバート・アインシュタインの相対性理論と量子論の二つの方程式にあります。今のところ、この二つを組み合わせると矛盾が生まれますが、この世は11(または10)次元であるという前提(第一線級の多くの物理学者が受け入れつつある考え)などによってこの問題が解決され、この世の中のすべてをたった一つで表す「神の方程式」の完成が近いとも言われます。

 しかし、本書で触れられているように、相対性理論や量子論においては「時間軸」というものが考慮されていません(念のため、相対性理論において時間と空間は同じものだとされますが、現実の世界を理解するためには「時間軸」が不可欠だと著者は主張し、私もそのように考えます)。

 つまりこの世(広大な宇宙や量子などの極少の世界・・・)の一瞬を切り取り、その一瞬について研究するのが現在の科学の基本です。

 ですから、その理論は1枚の写真のようなもので動きがありません。しかし、本当の世の中は「動画」のように常に動いて止まらないのは明らかです。 スナップ写真1枚だけでは、現実は理解できないというわけです。

 「時間軸」が重要になるのは、「積み重ね」にかかわる事象です。「進化」が典型的な事例ですが、進化は単細胞生物から始まって多細胞生物、腔腸類、脊椎動物・・・などと段階を経ます。「時間軸」が必ず必要であり、「時間軸」の中には必ず「偶然」が現れます。

 進化論が狂信的キリスト教徒から執拗に攻撃されるのは、「時間軸」=「偶然の要素」という考えが、この世は「神の方程式」で成り立っているという一神教(ユダヤ教もイスラムも)の考えに反するからでしょう。

 典型的なのは「アダムとイブが楽園から追放された」という逸話です。この世の中には唯一の「正しい状態」が存在し、その「正しい状態」へ近づかなければならないという思想がその背景にあります。

 現代人はこの思想に強く洗脳されていて「地球温暖化教」や「環境保護教」などをはじめとして、この世の中をあらかじめ決められた「正しい状態」に戻さなければならないという愚かしい考えが蔓延しています。

 しかし、世の中には「時間軸」というものがあるのですから、二つとして同じ瞬間はありません。ですから、この世を写真のようなあらかじめ決められた「一瞬の正しい状態」に固定するなどということはできません。

 いみじくも「赤の女王」(不思議の国のアリスの登場人物)が言ったように、この世の中は懸命に走らなければ止まっていられないのです。

 その前提をわきまえながら、本書では「臨界」というものについて懇切丁寧に解説しています。「臨界」は原子力発電などでよく耳にしますが、ある一定以上の刺激(エネルギー)を加えると、自然に(自ら)核分裂を起こすぎりぎりのポイントです。

 この臨界は、地震(プレート同士のぶつかり合いの圧力が地震になるぎりぎりのポイント)や雪崩(落下する雪・土や振動が雪崩を起こすぎりぎりのポイント)など自然界に多数ありますが、人間の営みにも「臨界」が存在するというのが著者の主張です。

 ある映画が突然ヒットしたり、地味なインタ−ネットサイトのアクセス数が急増したりということは、よく見られますが、これも臨界で説明できます。

 また、世界大戦がごく小さな原因から始まることもこの臨界で理解できます。
 しかし、残念ながらこの臨界は複雑系における「蝶の羽ばたき」と同じで、
 どの羽ばたきが臨界状態を破るのかは予想できません。

 ただ言えるのは、大概の社会現象、特に金融市場で起こる大事件は、臨界状態が一線を越えることによって発生するので、その大事件に理由など無いということです。複雑系の蝶の羽ばたきに例えれば、どこかのサラリーマンが手持ちの株式の半分を売却することが、リーマンショック級の大暴落を起こすきっかけになり得るということです。

 もちろん、市場では膨大な数の売買が行われていますから、どの売買が大事件を起こすのか事前に予想することは事実上不可能ですし、事後でさえそれは大変な作業でしょう。

 例えば、金融市場で研究を重ねれば「今臨界状態であるかどうか」はおおむね推測できるかもしれません。しかしその臨界状態がいつ崩れるのか、あるいはどのくらいの変動になるのかは全く予想できません。

 ピーター・ドラッカーやウォーレン・バフェットが「未来は予想できない」と繰り返し述べるのも当然でしょう。

 しかしバフェットは「いつどのような災難が起こるかを予想することはできないが、いつか災難が降りかかるであろうことはわかる」とも述べ、危機に対する準備を怠らないよう教えます。

 また、ドラッカーは人口動態のように「すでに起こった未来」を注視する重要性を語っています。


(大原浩)


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ドラッカー18の教え 第14回

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産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
5月号連載記事
■大きければいいというわけではない


●大きいことはいいことだ?


 私と同世代かそれ以上の方なら、山本直純氏が出演したエール・チョコレート(森永製菓)の「大きいことはいいことだ!」というコマーシャルをご記憶のことでしょう。当時はまだ高度経済成長時代で、規模さえ拡大すれば、業績(利益)は後からついてくると思われており(実際かなりの部分においてそうだったのですが・・・)、「大きさ」を追求する世相をうまくとらえて、このCMは爆発的にヒットし、おかげでエールチョコレートもかなり売れました。

 今では、やたら規模だけ大きくても仕方がないということは、大手金融機関・企業の破たんによって、世の中に知られるようになりましたが、それでも企業経営者の報酬は、会社の業績やクオリティよりも、規模によって大きく影響されます(儲かっている町工場の社長よりも、赤字経営のグローバル国際大手企業の経営者の方がたくさんの報酬をもらうのが普通です)。


●「目的のある組織」


 ドラッカーはGMなどの米国大手企業のコンサルティングで有名ですが、実際のところは、いわゆる中小企業のコンサルティングもかなり行っており、病院などの非営利法人の運営にもかなり深くかかわっています。

 そして、ドラッカーにとっては病院も、軍隊も、教会も、企業も「組織の形態の一つ」であり、「組織の根本原理」は、形態が変わっても同じだと述べています。ただし、組織には「目的がある組織」と「目的が無い組織」があり、企業は前者に入ります。企業の目的はそれぞれ違うでしょうが、企業ホームページを開けば、目的と書いては無くても、その企業がどのような理念で設立され、何を目指し、何を成し遂げてきたのかが必ず書かれています。

 そして、企業の最大の特徴は、「決算書という通信簿で評価される」ということです。経営者は「口先だけではなく、実績を上げなければ評価されない」のは当たり前のことのように思えますが、他の組織には見られない特質なのです。そのため、企業というのは「実績を上げる」のに極めて適した組織であり、近代になってから、企業の勢力範囲が急拡大したのも納得できることです。

 企業においては、実績を上げなければなりませんから、必要以上の人員を抱えることもできませんし、身動きが取れないほど肥大化することも最終的にはできません。もし、必要以上に肥大化してしまったら、結局のところ目的を達することができずに自滅します。

 要するに、企業のような目的のある組織は、「目的を達成してしまう」か、「目的を達成することができなくなる」状況になったら、解散・消滅する運命にあるのです。


●「目的の無い組織」

 「目的の無い組織」といわれてもピンと来ない方が多いと思いますが、世の中には「目的の無い組織」があふれています。典型的なのは、家族(家庭)や町内会でしょう。家族や家庭は、何かの目的の(何かを成し遂げる)ために結成されたわけではありません。「存在することそのものに意義がある」組織なのです。ですから、「目的を達成したから解散する」とか、「目的を達成できなくなったから消滅する」ということはありません。子供が勉強ができないからと言って、家族を解散させてしまう親は(たぶん・・・)いないでしょうし、町内会の野球チームの足を引っ張るからと言って、誰かを町内会からリストラすることも現代では(昔は村八分というものがありましたが・・・)考えられません。

 そして、目的の無い組織の中で最も巨大なものが国家と言えるでしょう。帝国主義時代の欧米の国々(政府)のように、他国を侵略蹂躙し領土を拡大することが目的であった時代もありますし、多くの(共産主義)独裁国家(政府)の目的は独裁者(共産党員)の私腹を肥やすことにあるのは確かです。しかし、すくなくとも日本を含む先進国においては、「国民の生活基盤としての国家」を安定的に持続することが「存在意義」です。つまり、日本という国家で何かを達成するのではなく、国家が永続し国民が幸せであることが「存在意義」なのです。

 これは(共産主義)独裁国家やかつての欧米帝国主義国家に比べれば、はるかに素晴らしいことです。しかし、大きな問題も抱えています。

(なお、国家は「政府」とは異なります。国家は家族のような国民の集合体ですが、「政府」は国民から委託を受けその目的を達成するための組織です。共産主義独裁政府などは、国家という組織から委託を受けた目的から逸脱した行動をとっているということです)


●予算主義の弊害

 最近はましになりましたが、それでも3月末が近づくと、あちこちで道路を掘り返し渋滞を引き起こします。もちろん、余った予算を消化するためです。これこそが「目的の無い組織」の最大の問題点です(本来政府や行政は目的があるのですが、その目的の「達成」を事実上誰も監視していません)。達成すべき目的が無いから、一生懸命努力して、費用を安くしても、予算が余ってしまえば「予算が余っているなら他に回そう」ということで、翌年から自分の部署の予算を減らされてしまうだけです。これでは、仕事を合理化したり、コストを削減するインセンティブが働きません。少しでも知恵の働く人間なら、「仕事そっちのけで何の役にも立たない予算獲得のプランを次々と考えて、獲得できる予算を最大化するよう必死の努力をし、とにかく組織を拡大(肥大)させることに奔走する」はずです。我々がイメージする官僚・役人のイメージはこのようなものですが、彼らが悪人というわけではありません。目的の無い組織では、「組織の存続そのものが存在意義」ですから、むしろ彼らの行動は理にかなっているのです。

 問題は人間の資質ではなく、組織の在り方です。国家そのものに目的は無くても、国家を構成する政府の個々の組織には、本当は明確な目的があります。必ず、なんらかの目的を持って政府組織が発足しているはずです。ところが、多くの政府組織が「目的が無い組織」であるがごとく振る舞うのは、目的はあっても「評価」が無いからです。例えばある政府組織が、「国民の幸福度を向上する」ために結成されたとします。しかし、国民の幸福度は簡単に数値化できませんから、世の中の人々から「俺(私)はまだ十分幸福じゃない」と、常にクレームを受け、その政府組織の予算も人員もどんどん肥大します。これがまさに、日本をはじめとする先進国の医療、年金をはじめとする社会福祉が破たんしつつある原因です。

 「目的のある組織」の特徴である「数値による評価」の手法を取り入れ、「費用対効果」の概念を導入しなければ、この問題は絶対に解決できません。


●企業の中の「目的の無い組織」


 残念なことに、「目的のある組織」であるはずの企業の中にも「目的の無い組織」があります。それがいわゆる間接部門と呼ばれる部署です。この間接部門と呼ばれる部署は、企業の運営にとって重要であるにもかかわらず、目的の達成度合いの評価を数値化するのが困難であるがために、政府組織と同様の問題を抱える場合が非常に多いのです。ここでも、「明確な目標の設定と評価の数値化」が極めて重要なわけですが、そうはいっても、例えば人事や経理の仕事が会社の業績にどのように貢献したのかを数値化するのはとても困難です。

(続く)


続きは「産業新潮」
http://sangyoshincho.world.coocan.jp/
5月号をご参照ください。


(大原浩)


*2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」(JKK)を設立しました。HPはこちら https://j-kk.org/


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●世間は狭い

 街角でばったり知人に会った時などに、「Its a small world!」(世間は狭いね)と言います。この「街角で知人にばったり現象」は、「確率論」の観点から考えれば実はそれほど珍しいことではありません。

 例えば私がある友人の娘に銀座の街角でばったり会う確率は確かに低いのですが、私が多数の友人のうちのさらに何人かいる娘のだれか・・・さらには、すべての知り合いのうちの誰かの家族、親せき、友人の一人などと範囲を広げ、そのうえ場所も銀座だけではなく、青山、新宿などと広げるとばったり出会う確率はかなり高まります。

 また、例えば同じ誕生日の人がいる確率も同じです。
 例えば、ある場所に「あなたと同じ誕生日の人が50%」いるようにするには、1年の半分の日数(183)と同じだけの人を集めなければなりません。しかし、「同じ誕生日の人が50%」いるようにするためには23人いれば十分です。あなたと他の人との組み合わせはワンパターンしかありませんが、他の人と他の人との誕生日の組み合わせは多数あるからです。

 本書の主要テーマである「スモール・ワールド」は、前記の「世間は狭いね」という意味に近い概念であり、「組み合わせ=ネットワークに着目するとこの世の中は狭い」という意味では同じフィールドでの議論ということになります。

 よく、「世界中のどんな人とも6人(または7人)の知り合いを介してつながっている」と言われます。その話のもととなっているのが、スタンレー・ミルグラムが1960年代にハーバード大学で行った実験です。
 ミルグラムは、160通の手紙を出した(知り合いの誰かで、その人に一番近そうな人に手紙を送るよう依頼する)のですが、すべての手紙が6段階(6人)を経て届いたのです。
 ちなみに1970年に彼自身による補強実験が行われ、ランダムに選んだロサンゼルス在住のピンク人(白人)からニューヨーク在住のブラウン人(黒人)に向けての手紙でも同じ結果が得られました(米国には激しい人種差別がありますが、それは結果に影響を及ぼしませんでした)。

 その他にもWEBページでの「ケビン・ベーコン指数」を取り上げています。共演した俳優つながりで、ケビン・ベーコンンまで何人経由すればつながるかというゲームですが、平均するとすべての俳優からケビン・ベーコンまでは2.896人(約3人)でつながります。ちなみに、これはケビン・ベーコンだけに限った現象ではなく、例えばキアヌ・リーブスとアーノルド・パーマーも3人でつながります。

 なぜ、「世間はこんなにも狭いのか」という理由を数学的検証も含めながら本書は解き明かしていくのですが、そのキーワードは「クラスター」と「リンク」です。隣り合った存在と密に結びついた「クラスター」と、超特急のようなスピードで離れた存在まで飛んでいく「リンク」とが、丁度よく配置されることによって「スモール・ワールド」が形成されるわけです。

 このスモール・ワールドは河川の分布をはじめとする自然現象にも多数見られます(フラクタルもその一つといえます)がその典型は人間社会であり、インターネットがまさに縮図です。

 この分野の研究が、(壮大な実験・検証を行える)インターネットの普及と、繁雑な計算を行うコンピュータの性能の向上と絡み合って発展してきたのは偶然ではありません。


●8割の富が2割の金持ちに集中する

 後半では、<8割の富が2割の金持ちに集中する現象>とスモール・ワールドとの関係に言及します。発展途上国では9割が1割に集中するかもしれませんし、口先で平等を唱えるチャイナやロシアなどの共産主義国家ではもっとひどい状況でしょう。

 しかし、先進国においても一部に富が集中するのは明らかであり、歴史的にもそれが当然のこととされてきました。著者はこの現象は、<王様が強欲だからではなく、企業家が悪徳だからでもない>とし、それは「スモール・ワールド」の科学的・数学的必然であるとしますが、私も同感です。

 また、通常のビジネスの基本である<交換」においての貧富の差の広がりよりも「投資」のリターンによる貧富の差の広がりのほうが遥かに加速度的であるという視点も興味深いものです。

 もちろん、個々の投資においては損をすることも得をすることもありますし、特に先物・オプション・FXなどのギャンブル的な取引では統計的に判断して、ほとんどの投資家は損をしています。

 しかし、(現物の)株式市場や事業などでは歴史的に見て(数十年単位)、必ずパイが増えています。先物などのゼロサム市場と違って、(パイそのものが増える)<プラスサム市場>なのです。

 ですから、長期間にわたって多額の余裕資金を株式市場(事業)などの成長市場に投資できる金持ちは益々金持ちになりますし、金持ちによって安定的な資金を供給された企業は(数十年単位)、大概価値が増大しています。ですから、長期間にわたって多額の余裕資金を株式市場(事業)などの成長市場に投資できる金持ちは益々金持ちになりますし、金持ちによって安定的な資金を供給された企業は繁栄し、雇用されている従業員たちも恩恵を受けるのです。

 「金持ちを貧乏人にしても、貧乏人が豊かにになるわけでは無い」というのはマーガレット・サッチャーの有名な言葉ですが、自然の摂理に反しても物事はうまくいきません。

 不平等の緩和ということであれば「課税」による調整が最も有効であり、著者も同様の考えです。しかし、この手法も世界的に「課税」をしないのに「ばら撒き」を行う(民主主義では政治家はそのようにする圧力を常に受けている)ことがはびこり、財政赤字が膨らみ続けています。

 しばしば、「お金は寂しがり屋だから、仲間のお金が集まっているところに行きたがる」と言われますが、スモール・ワールドの理論で、この現象も明快に説明できます。


●氷はいつから水になるのか?

 最近、宇宙の「真空崩壊」−つまり宇宙の破滅はそれなり(といっても小数点以下かなりゼロが並びますが・・・)の確率で起こりえる−という議論が盛んになってきたこともあって「相転移」という現象が注目されています。

 簡単に言えば、同じ水分子なのに0度で氷から水になり、100度で水蒸気(気圧によって異なる)になり、さらにはるか高温にまで熱するとプラズマになることです。

 この現象においては、水の分子やそれを構成する原子そのものは全く変化しません。それぞれの粒子(分子・原子)のつながり方(リンク)に変化が生じるだけなのです。変化する際の温度は違いますが、この相転移はこの世の中の物質すべてに当てはまる現象です。

 実は、この「相転移」は人間社会、市場やインターネットでも頻繁に起こっているのです。例えばある歌手が全く同じ歌を歌い続けているとある日突然世界的にブレイクしたり、インターネットの何気ない記事がある日を境にアクセス数が急増するという現象も「相転移」を用いて説明することができます。

 これは蝶の羽ばたきの連鎖がある一定のポイントを超えると台風になるという「複雑系」の話にもつながりますが、問題はそのポイントをどのように見つけるかということです。

 本書ではその具体的な方法に言及していませんし、現状でそれを見つけ出すのは大変困難な作業です。また、万が一見つけ出すことができたとしても、世の中は常に変化していますから、次はまた一からやり直さなければならないでしょう。

 それでも、人間社会、市場、インターネット等においては、ある一定のポイントを超えると「相転移」を起こし、構成要素(例えば市場の参加者)が何も変わらないのに性質が全く変わってしまうということは、投資家、経営者、ビジネスマンなどが必ず理解しておかなければならないことであるといえます。


(大原浩)


*2018年4月に大蔵省(財務省)OBの有地浩氏と「人間経済科学研究所」(JKK)を設立しました。HPはこちら https://j-kk.org/


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書評:確率とデタラメの世界 偶然の数学はどのように進化したか



確率とデタラメの世界 偶然の数学はどのように進化したか
デボラ・J・ベネット 著、白揚社
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 「杞憂」という言葉があります。
 中国古代の杞の人が天が崩れ落ちてきはしないかと心配したという、「列子」天瑞の故事から生まれました。心配する必要のないことをあれこれ心配することを意味しますが、「天が崩れ落ちてくる確率」=世界・人類が滅亡する確率は、実のところ全くゼロではないのです。

 ですから、人間は「世界滅亡」と聞くと恐怖を感じ、キリスト教をはじめとする多くの宗教.が「世界の終わりがやってくるから神(実のところ教会の怪しげな人々)のいうことを聞きなさい」というプロパガンダで多くの信者を集めてきました。

 しかし、ノストラダムスやマヤの暦を含む「世界滅亡の予想」は、少なくともこれまでのところ100%外れてきました。その中には、教祖の終末予想が当たらないからといって集団自殺(実のところ殺人だともいわれていますが…)した教団も少なくありません。

 確かにこの世が明日滅亡する確率はゼロではありません。
 例えば最近話題になっている「真空崩壊」。要するに宇宙でも「相転移(同じ水が温度によって、氷から水、水から水蒸気、水蒸気からプラズマに変化するようなこと)が起こるのではないかという話です。

 実際、ビッグバンの際には相転移が起こっていたと考えられる(そのおかげで、素粒子や原子が生まれ、四つの力なども形成されたと考えられる)ので、再び起こる可能性があり、その確率は数百億年に1回とも、数千億年に一回ともいわれますが正確に確率を計算するのは現在のところ難しそうです。
 しかし、宇宙の年齢は138億年前後といわれますので、「真空崩壊」が起こる確率を全く無視することはできないでしょう。

 また、彗星が地球に衝突して滅亡する可能性も無視できません。オールトの雲をはじめとして、小惑星や彗星などの供給源が、地球の比較的そば(宇宙の感覚で)にあるわけです。

 しかし、そんなことをいつも考えながら暮らしていてはまさしく「杞憂」になってしまいます。地球温暖化教の信者が「二酸化炭素の排出を止めないと地球が大変なことになる」という話も一種の「地球滅亡論」の杞憂です。
 そもそも、地球の気温は基本的に太陽活動と地軸の傾きによって決まるので、太陽の黒点活動と地軸の傾きの今後の見込みをまず考えるべきなのです。二酸化炭素の排出量は地球の気温決定の2次的、3次的要素にすぎません。

 その基本的な科学的事実を無視して、大騒ぎする科学的センスがない人々が多いことには驚かされます。二酸化炭素の排出によって「地球が大変なことになる」可能性はゼロではありませんが、その可能性はほかの地球滅亡論と大差ないということです。


 さて、本書にもあるように、確率の研究が本格化したのは、せいぜい17世紀ごろからです。ギリシャ、ローマで開花した高度な文明・文化が、その長い間キリスト教によって破壊しつくされたことも大きな原因の一つです。キリスト教が欧州にはびこり、人々を蹂躙している間、ギリシャ・ローマの伝統を受け継いで科学や文化を発展させたのはイスラム圏です。

 実際、現在でも科学用語のアルカリ、アルコール、アルゴリズムなどアラビア語に期限を持つ言葉は多く、科学に不可欠な数字そのものが「アラビア数字」(インドで発案されアラブ世界を通じて世界に広まった)です。

 キリスト教が支配する世界では、この世の中のすべてのことは「神」が決めるのだから、「偶然などということはあり得ない」というわけです。この「世の中で起こる出来事はすべてあらかじめ決められている」(決定論)と「偶然あるいは自由意思を認める」考えとは現在でも対立しています。

 決定論では、人間の自由意思は存在しないはずですので奇妙に思うのかもしれませんが、脳生理学における実験では、人間の脳が判断(例えば手を伸ばしてコーヒーカップをとる)する前に手の神経が反応しているということが明らかになっているのです。

 もちろん本書では「偶然は存在する」との仮定の上で議論が進められています。特に偶然「ランダムネス」とは何かについての議論に多くのページを割いています。

 例えば<乱数>を作成するのに、コンピュータで数式を計算するというやり方は一般的ですが、数式によって導かれた数字は事前に予測できるわけですから、それが本当に<乱数>=<偶然>なのかという議論などです。

 もちろん、堅苦しい議論ばかりが展開されているわけではなく、全10章のほとんどがモンティホール問題などを含む、楽しい確率のエピーソードで占められています。

 文章が平易で、この手の本としては短めの200ページ強なので、すいすいと読み進めます。確率を学びたい初心者にはうってつけの本だと思います。


(大原浩)


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