ドラッカー18の教え 第3回

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産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
6月号連載記事


■マネジメントに関わる者は実践者でなければならない


●マネジメントもビジネスも投資も科学ではない。実践である


 前回「経済学は科学ではない」というお話をしましたが、同じ意味で「マネジメントもビジネスも投資も科学では無い」ということができます。そしてその心は「経済学・ビジネス・投資・マネジメントのいずれも『人間』に関わること」という点にあります。

 日本語の慣用句に「猫の手も借りたい」という言い回しがありますが、人間の手だけを切り取って雇うことはできません(余談ですが、私は「手料理」という言葉を聞くと「手のから揚げ」とか「手の角煮」といった料理を連想してしまいます・・・ちょっとグロテスクな話ですが、豚足などがそのイメージに近いでしょうか・・・)。

 例えば、誰かを雇えば、好むと好まざるにかかわらず、「手」の他に一人の人間の体全体が必ずついてきます。そして、人間の「心・精神」も肉体と不可分です。ですから、マネージャーはこの厄介な人間の「精神・心」を上手にマネジメントしなければなりません。

 あるいは投資の世界において、たとえコンピュータシステムで取引を行う場合であっても、そのコンピュータ取引を行うべきか否かを判断するのは結局人間です。少なくとも現在のコンピュータは、自ら「金持ちになりたい」などという理由で資産運用を始めたりはしません。アーサー・C・クラーク(映画はスタンリー・キューブリック監督)の「2001年宇宙の旅」のHAL(今でいうAIコンピュータが高度に進化したもの)なら別かもしれませんが・・・。

 つまり人間だけが「動機」を持ち、その「「動機」をどのようにコントロールするのかがマネジメントの核心」なのです。「動機」という言葉はミステリー・ドラマなどでよく使われますが、普通の人々が動機が無ければ殺人など犯さないのと同じように、組織(企業)に属する人々も動機が無ければ仕事などしません。したがって、マネジメントを行う人々(マネージャー)は、個々の人間の「動機」に多くの関心を割くべきであり、その動機を解明(理解)するためにも(現場で)実践し、個々の人間と密なコミュニケーションをとらなければなりません。

 そして、その解明した動機を基に個々のメンバーの「動機付け」を行い、より業務の水準を高めるのも、マネージャーが行わなければならない重要な実践です。

 方程式や立派な理論を基にしたマニュアルでマネジメントができればとても楽なのですが、残念ながら「人間という複雑怪奇な存在」を相手にしている以上、マネジメントはあくまで実践であり、刑事ドラマの名セリフ「事件は現場で起こっている!」も、ぴったりとビジネス・投資・マネジメントに当てはまるのです。


続きは、産業新潮
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6月号をご参照ください。


(大原浩)


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ドラッカー18の教え 第2回



産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
5月号連載記事


■成功する方法は一つではない。


●経済学は科学ではない


 このように申し上げると多くの反論をいただきそうですが、まず科学とはどのように定義づけられるか検証してみましょう。
 「科学」のとらえ方にも多々ありますが、「科学的・論理的」に科学を定義づければ、「論理によって説明され、その論理を実験によって繰り返し証明することができるもの」といえるでしょう。つまり、論理的に説明されるだけではなく、その論理が実験によって証明されなければならないということです。
 もちろん、生きた経済において、実験のための一定の条件を繰り返し準備することなど不可能ですから、経済学は学問ではあっても科学ではないという結論になります。

 同じことは「歴史学」「社会学」など他の学問についてもいえます。
 また、医学のうち、少なくとも「医療」は科学ではありません。実験室で細胞を培養したり遺伝子を操作することは科学であるかもしれませんが、患者を治療することはむしろ科学であってはなりません。
 なぜなら、治療を求める患者をモルモット代わりにして人体実験を行うことなど現代の文明社会では到底許されないことだからです。

 企業や経済のかかりつけ医(ホームドクター)とでも呼ぶべきドラッカーも、同じように経済学は科学ではないと述べています。「患者たる企業や経済が病に苦しんでいるのに、個々の企業や経済の病状など顧みず、まるでアインシュタインの相対性理論のような普遍的な理論を求め続けているために、現在の経済学が役に立たないのだ」と、ドラッカーは鋭く指摘しています。


●観察者(傍観者)であるべし

 ドラッカーの著書の中で一冊だけを選ぶとすればどれか?という質問には多くの答えがあるでしょうが、「現代の経営」をあげられる方が多いようです。確かに「マネジメントの権威」というドラッカーの一般的イメージからいえばそうなるのかもしれません。

 しかし私は、「傍観者の時代」だと思います。ドラッカーの自伝的要素が強い本ですが、この本にこそ、「いったい何によってドラッカーの経済・ビジネスに関する理論体系が構築されたのか?」という最も根本的かつ重要なことが詳細に描かれています。本人が十分認識しているように、ドラッカーは科学者でも理論家でも実業家でもありません。優れた傍観者(観察者)なのです。

 ただ、傍観者といっても遠くから眺めているだけではありません。例えば生物学でいえば、沼地に入り込んで泥だらけになりながら虫たちの動きを観察する、というようなフィールドワークを果敢にこなしているのです。

 ドラッカーがコンサルティングを引き受けたのは、世に知られるGEやGMなどの大企業だけではありません。数多くの中堅・中小企業以外にも病院をはじめとする非営利機関のコンサルティングも多数こなしました。その中でドラッカーが感じたのは、マネジメント手法などに共通項はあるものの、それぞれの組織にはそれぞれの成功法があるということです。


続きは、産業新潮
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(大原浩)


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ドラッカー18の教え 第1回



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4月号連載記事


■全員一致は否決せよ。


●ユダヤの教え


 私が子供のころに強い影響を受けた本の中に「日本人とユダヤ人」(イザヤ ベンダサン著・山本書店)があります。実のところ、イザヤ・ベンダサンというのは、山本書店店主である山本七平氏のペンネームのようなのですが、それはさておき、まだ狭い世界で生きていた私に、広い世界があることを教えてくれた本です。
 角川書店から復刻版が文庫で出ているようですので、詳しくは是非原著をお読みいただければと思います。

 さて、日本的な考えや、日本の偏った考え方の(自称)知識人やマスコミを通しての「海外」しか知らない中学生であった私に、数々の影響を与えた教えの中で最も衝撃的であったのは、「全員一致は否決せよ」です。
 「全員一致のどこがいけないの?」と普通は考えるでしょうし、私も当時はそう思っていました。ただ、理論的にはうまく説明できないけれども、直感的に「正しいような気がする」という感覚があり、長い間この教えを時々思い出しては「何とか筋道を立ててこの教えの正しさを説明できないものだろうか?」と思いあぐねていました。


●アルフレッド・スローンの教え

 社会人になってしばらくして、ドラッカーを読み始めたとき、その著書の中でユダヤの教えと同じ「全員一致は否決せよ」と述べられていることには驚きました。しかも、その中で全員一致を否決しなければならない理由が具体的明確に述べられているのです。
 彼は、全員一致を否決しなければならい理由は、なぜ全員一致になるのかを次のように具体的に考えればすぐにわかるといいます。

1)参加者に外部・内部の圧力がかかっている=共産主義国家・独裁主義国家
  では、指導者や党に反対すると命の危険があるので、物事は「全員一致」
  でスムーズに運びます。ただ、その指導者・党の判断が正しいことが保証
  されているわけではありません。社長が独裁的な企業の役員会、部長が部
  下から恐れられている部署の会議でも同じような結果になるでしょう。

2)会議の参加者が真剣に考えていない=多数意見に付和雷同するのはとても
  簡単ですし、多数派から快く思われます。逆に少数意見を述べるためには、
  多数派からの反論に耐えることができるような「筋道」をしっかり考えな
  ければなりませんし、会議の参加者の多数派がこちらを凝視する中で異論
  を述べるのは勇気のいることです。


 つまり、ドラッカーは、全員一致になるのは「誰かから脅されているとき」か、「真剣に考えていないとき」だけだから、「全員一致の意見は採用すべきでは無いと主張しているのです。
 そして、「全員一致」には別の弱点があります。それは、「一つの意見しかなければ代替案(予備・保険)が無い」ということです。
 全員一致の案を実行しても100%成功するわけではありません。むしろ、1)や2)の環境下で決まった案であれば、失敗する可能性が高いはずです。その時に、全員一致の案しかなければ万事休す。次の展開ができません。
 それに対して、侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論をすれば、どのような失敗をするのかの見通しも立ちますし、失敗したときの対案も自動的に準備されることになります。


続きは、産業新潮
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4月号をご参照ください。


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バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第17回

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3月号連載記事


■競争戦略名言集その2


●良い競争相手・悪い競争相手


 「競争相手は全て敵だ!」と考える方が少なくないかもしれません。それが必ずしも間違いだとは言いませんが、例えばほとんどの業種に「業界団体」が存在するのはなぜでしょうか?
 同じ業種で同じ顧客をターゲットにビジネスを行っている企業は全て競争相手のはずですが、それぞれが同じ業界団体の一員として歩調を合わせて行動することも珍しくありません。それは、業界の外にも闘うべき相手がたくさんいるからです。

 例えば業界全体の不利益になる政府の過剰規制、自分たちの業界に攻め込もうとする他の業界の企業群等々と対峙するためには、それぞれの企業が個別に対処するよりも業界の企業全体が一枚岩となって行動した方が圧倒的に有利です。ですから、業界全体の利益のために協調的行動をとることができる企業は良い競争相手ですし、自分だけ抜け駆けして自社の利益を得ようとするのは悪い競争相手です。
 もちろん、カルテルで売値を高く維持するような行為は罰せられますが、相手を叩きのめすまで競争することもほめられたことではありません。

 より多くの企業が、それぞれのポジションで繁栄するのが、それぞれの従業員にとっても、国民の将来の年金を支払うために資金を株式で運用している機関投資家などの株主にとっても、社会全体にとってもよいことです。

 ポーターは、この考えをさらに押し進め、良い競争相手は助けるべきだと主張します。
 例えば、ティッシュ業界でシェア50%のA社のほかに、D社というシェア10%の企業が存在するとします。この企業の現在の主力は高級コート紙で、とても高い利益を上げています。ティッシュペーパーは祖業であるため継続しているものの、利益率が低いためこれ以上シェアを拡大しようという気は全くありません。そのため、知名度の低い自社製品を定番であるA社製品の概ね10〜20%安い価格で販売するという緩やかなディスカウント戦略を採用しています。

 このような「紳士的」な競争相手は丁重に扱うべきです。D社というディスカウンターがすでに存在することによって、他業界からの新規参入にはブレーキがかかります。ティッシュ業界にディスカウンターが存在しなければ、他業態からディスカウンターがやってくる可能性が高いのです。
 しかし、緩やかな形とはいえすでにディスカウンターがいれば、他業種からの新規参入は当然慎重になります。逆にD社という緩やかなディスカウンターの存在が無くなってしまえば、悪い競争相手である激しいディスカウンターの参入を招きます。ですから、もしD社が経営危機に陥ったとしたらA社はそれを救うべきなのです。

 ただし、吸収合併のような形はいけません。市場シェアがさらに増えてしまって、外部の激しいディスカウンターの攻撃にさらされやすくなります。
 あくまで外部の緩やかなディスカウンターというポジションが、A社にとってのD社の重要な価値なのです。


続きは、産業新潮
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3月号をご参照ください。


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バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第16回

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2月号連載記事


■競争戦略名言集その1


●正しいやり方は一つではない


 「正しいやり方は一つではない」という言葉自体は、ドラッカーもその著書の中で繰り返し述べています。彼は「マネジメントのやり方」や「会社組織のあるべき姿」に関して、唯一絶対の公式などなく、それぞれの企業の個性や状況によって「正しいやり方は何通りでもある」と主張しています。

 また、バフェットも、買収した数多くの企業の経営をそのまま既存の経営者に一任していることからもわかるように「成功するやり方はたくさんある」と考えているのです。

 それにも関わらず、世の中の学者やコンサルタントなどが「見果てぬ唯一絶対の公式」を求めて空回りしているのは、「経済学」を科学だと誤解している点に大きな原因があります。
 例えば、物理学をはじめとする科学において実証実験は不可欠で、「誰がやってもいつも同じ結果が出る」ことによって、その科学理論の正しさが証明されます。そして逆に、科学においては、証明された理論と違うものは認められないのです(もちろん、新たな事実の発見によってニュートン力学から相対性理論へと飛躍したような事例はたくさんありますが、ニュートン力学の想定していた範囲での正しさが否定されたわけではありません・・・)。

 それに対して、たとえば世間の多くの人々が科学だと誤解している医学(医療)は、学問ではあっても科学ではありません。なぜなら、医学において人体実験で理論の正しさを証明することは(少なくとも現在では)基本的に許されないことだからです。
 さらに、そもそも人間は一人ひとり違う存在であり、薬の効き方も個人によってかなり違う上に、例えばエイズのような病気にかかっても、全く発症しない人が存在します。

 ヤブ医者は、患者の個々の状況を詳細に診察することなく、定型的なマニュアルに基づいて、治療や投薬を行いますが、同じく「ヤブ経済学者」や「ヤブコンサルタント」は個々の企業を十分診断・観察することなく、定型的マニュアル通りに「対応」します。

 漢方では、患者の体質を分類しその体質ごとに異なった処方を行いますが、企業においてもその「体質=(社風など)」を丁寧に診断し、それぞれの体質に応じた「戦略」を考えるべきです。


●市場環境と立ち位置で判断する

 学者であるマイケル・ポーターを私が高く評価するのは、その徹底した「フィールド・ワーク」に感銘を受けているからです。
 インディー・ジョーンズ(映画の主人公ですが、モデルとなった考古学者が実際に存在する)は、書物や資料だけに頼ること無く、「現地=遺跡」を頻繁に訪れ「事実」を徹底的に観察しました。

<続く>


続きは、産業新潮
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バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第16回

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■ナンバーワン企業その4 りそな


●銀行や証券以外の金融機関が発展する



 一般の銀行のカウンターでは、従業員が椅子に座って、立っている顧客の応対をします。しかも、番号札を渡されて行列までさせられます。
 一般の流通・小売業ではまずありえない話で、銀行という業態がどれほど傲慢で顧客軽視をしているのかは改めて説明する必要が無いかもしれません。

 私が、日本の既存の銀行や証券会社に多くを期待しないのは、政府の規制に守られてふんぞり返ってビジネスを行っている企業は、【自由競争】の中では淘汰されるからです。

 逆に、弊社が毎年発表するGINZAX30社の中に、クレディセゾン、東京センチュリーリース、Eギャランティーなど、既存の銀行や証券会社では無い金融関連会社、が多数入っているのに気付かれた読者も多いでしょう。
 既得権益に守られている既存の銀行や証券会社を、自由競争の中で磨かれた優秀な企業が打ち破るのはいとも簡単です。私が「銀行や証券以外の金融機関」に大いに期待するのもそのような理由からです。

 また、欧州や米国の歴史を振り返っても、経済が成熟期に入ってから金融ビジネスが大きく伸びています。すでに成熟期に入っている日本経済において、今後金融産業が益々重要になるのは、簡単に予想できることです。

 逆に言えば、新興国のように政治が不安定で経済の成熟度合いが低く、資本の蓄積も十分に行われていない国々では、なかなか強力な金融関連企業が生まれません。ですから、新興国を中心とした海外においても、今後日本の金融ビジネスが大きく発展する素地があります。


●顧客目線の銀行


 そのように大発展の可能性を秘めた金融関連ビジネスの中で、期待している数少ない【既存の銀行】がりそなです。

 多くの方がご存知のように、同行には金融危機の際に公的資金が注入されました。ただ、公的資金注入後は、大いなる反省のもと国民の期待に応えるべく全社員の給与3割カットや採用の抑制などのいわゆるリストラを行いました。
 また、個人(既存の住宅ローン利用先は51万)や中小企業との取引など堅実かつ高い利益を見込める分野に対し経営資源を集中。この方針が成功し、健全化の第一歩を踏み出します。

 公的資金が注入されるまでのりそなは、他の銀行などと同様に尊大で傲慢な存在であったのですが、公的資金注入の際に、牛尾治朗氏(ウシオ電機会長)に白羽の矢を立てられ改革の責任者に抜擢された細谷英二氏(JR東日本副社長)の強力なリーダーシップの下、大胆な改革・改善が行われたことにより生まれ変わったのです。
 その際には花王から4名のOBを指導役として招き、顧客対応のスピードをストップウォッチで測るなど、製造業を中心とする優良企業では当たり前の「科学的手法」で問題点を見つけ出し、次々と「カイゼン」を行いました。


<続く>


続きは、産業新潮
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バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第15回

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■ナンバーワン企業その3 クレディセゾン


●金融には「安心・安全」が重要である


 日本は、文献がはっきりしているだけでも、同じ「王朝」が、約1300年続く世界でも稀有な安定した国です。また3・11(東日本大震災)の直後、ファミリーレストランの店員の誘導で避難した顧客たちが、翌日以降、未払いの代金を支払うために続々と戻ってきたというとてつもなくモラルが高い国でもあります。

 米国、英国、フランスなどの先進国といわれる国々でさえ、このようなときにはしばしば略奪や暴動が起こりますから、日本人の高いモラルに世界中が驚愕しました。

 私が日本人であるという贔屓目を割り引いても、世界で最も安心して資産を預けることができる国は日本です。その次がスイスあたりでしょうか?

 金融ビジネスにおいては、このような国家の安定性・信頼がとても重要です。その意味で、超安定国家日本において「金融ビジネス」が発展するのは自然な成り行きといえるでしょう。

 銀行や証券に代表される既存の金融業は、他人のお金をぐるぐる回転させて儲ける商売ですから、基本的に高効率・高回転のビジネスです。しかし、銀行や証券は「規制業種」という面から、内部の腐敗が避けられません。
 いくら会社が儲かっても、その会社の経営者や従業員が自分の懐を札束でいっぱいにすることに熱心で、株主のことなど忘れているようでは、投資する意味がありません。

 また、「護送船団」といわれる手厚い保護を受けてきた日本の銀行や証券はひ弱で国際競争に打ち勝っていけるとは思えません。

 しかし、それ以外の金融業は、今後の日本を牽引する大きな核となると考えます。


●これからの日本を牽引する銀行や証券会社以外の金融


 リースやクレジット会社はもちろんです(オリックスも優良成長企業です)が、米国では、GEやGMなどのメーカーで、金融部門の利益が会社の屋台骨を支えています。もっとも、リーマン・ショックで痛手を受けたことなどから、GEなどでは、金融部門を縮小しメーカーとしての本業に集中する方向です。

 ただ、金融機関などの口車に乗って、本業とかけ離れた金融ビジネスを行なわない限り、メーカーの本業と一体化した金融ビジネスの将来は明るいと考えています。

 日本でもトヨタや日立において、製品を販売する利益を金融子会社が稼ぐ利益が上回る日が近づいています。メーカーの金融子会社の業務は実際のところ多岐にわたるのですが、あえて単純化すれば「昔は自動車を売っていれば儲かったのに、最近は儲けが薄くなった。気が付くと、今まではおまけだと思っていた自動車を売るためのクレジットやローンの方がもうかる商売になっている!」という感じです。

 トヨタ自動車は、昔「トヨタ銀行」と揶揄されたほど財務基盤がしっかりしていますから今後が期待できます。

 例えば銀行や証券が構える立派なオフィスは、とてもコストがかかるものです。もちろん、その費用は、預金者が受け取るべき金利、安くなるはずの取次手数料という形で顧客が、また、増えるはずの純利益という形で株主が負担しています。

 それに対して、トヨタや日立は、企業そのものが持つ信用力で金融ビジネスができますから、大理石で飾られた無駄な支店など必要ありません。

 メーカーだけではなく、流通も頑張っています。今後ネットがその役割の多くを代行するにせよ、店舗はあれば便利なものですし、ゼロになることは無いでしょう。
 小売業の場合、店舗の一角に「相談コーナー」を設けるだけで、きわめて低コストの金融店舗の運営ができます。

 コンビニは、ただ物を販売するだけでは無く、公共料金の支払い、メール便、情報端末、ATMの設置など狭い店舗を有効に活用することによって発展しました。その流れが、他の小売業にも波及しつつあります。


●ポーター賞受賞


 (銀行や証券会社以外の)金融業の中でも大いに注目される、流通系カードで首位の企業がクレディセゾンです(現在、3500万枚のカードを発行し、年間取扱高は6兆円)。2012年にポーター賞を受賞したのも、同社のビジネスモデルの確かさの証明といえるでしょう。

 他のカード会社が、どちらかといえば【稼ぐ中高年男性】に注目しているのに対して、買い物をする一般の人々、特に【消費する】女性にターゲットを絞り込んでいるのが特徴です。例えば、セゾンカードの顧客の約70%が女性です。


<続く>


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(大原浩)


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バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第14回

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産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
11月号連載記事


■ナンバーワン企業その2 良品計画

●日本発のブランド

 良品計画という社名に聞き覚えが無くても、「無印良品」は大概の方がご存知でしょう。私は、かなり以前から「「無印良品」=良品計画は凄い!」と言い続けています。

 例えば、地下鉄などの車内で若い女性が手に持つ紙袋。そこに書かれているブランド名や企業名がつい気になってしまいます。彼女たちが買い物帰りであれば、その店の商品が売れているということであり、紙袋が再利用されているのであればそのブランド(ロゴ)の紙袋が人前でも恥ずかしくない、あるいはそのロゴを見せびらかしたいということです。

 そのようなブランドやロゴの大半が横文字(アルファベット)であり、カタカナ表記であることさえ稀です。ですから、「無印良品」と漢字で大書きされた茶色の紙袋を持って、若い女性が颯爽と地下鉄の車内に乗り込んでくるのは特筆に値します。

 例えば、三越や伊勢丹は伝統と格式を誇るデパートですが、彼女たちが社名(店名)を漢字で大書きした紙袋を持ち歩くとは思えません。また、トヨタのレクサスは高いブランドイメージを持っていますが、「トヨタ自動車」と印刷された紙袋は持ち歩きにくいでしょう。世界のSONYは東京通信工業から社名を変更しました。

 つまり、これまでは日本のブランドは欧米風を装う(アルファベット表記)必要がありましたし、現在でも大勢は変わりません。その中で「無印良品」は、クールジャパンを牽引する「漢字ブランド」の代表格として健闘しています。海外では、漢字を読めない人々が多いので「MUJI」というアルファベットのロゴも併用されていますが、クールジャパンの「漢字ブランド」の地位は揺るぎません。

 ちなみに、日本にあこがれ尊敬しているほとんどのアジアの新興国では、ひらがなやカタカナを使うことがカッコいいとされます。例えば「無印良品」ではなく「無印の良品」と表記するのです。なぜかといえば、漢字だけでは彼らには中国語との区別がつかないので「の」というひらがなを入れることで日本製品としてのイメージを強調するのです。かっこ悪い「メイドイン・チャイナ」は売れないので、「の」がつく日本製をアピールするわけですが、これは日本人がやたら横文字(アルファベット)表記するのと同じ現象です。


●効率的ファブレスメーカー

 無印良品の最大の独自性は「ブランドでは無いブランド」という世界に類を見ないコンセプトですが、その「ブランド」をしっかりと支えているのが緻密なオペレーションです。

 雑貨・衣料・食品などを扱う日本企業としてはかなり早い時期(しかも会社としての設立以前)から、海外調達、生産に取り組んでいます。

<続く>

続きは、産業新潮
http://homepage2.nifty.com/sancho/
11月号をご参照ください。


(大原浩)


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バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第13回

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産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
10月号連載記事


■ナンバーワン企業その1 トヨタ自動車

●武士道と通じるトヨタの社風

 トヨタの「社風」ですが、「カイゼン」と「現地・現物」という二つの言葉に集約されます。

 まず「カイゼン」は、企業の中で行っている業務をより良いものにするための努力を積み重ねることです。
 「現地・現物」とは、たとえ社長や役員であっても必ず製造(作業)現場で製品に触れ、自分の目で確かめてから判断することです。どちらも、日本的な精神を感じますが、数多くの日本企業の中でもトヨタのこだわりはダントツです。

 「武士道とは死ぬことと見つけたり」とは葉隠の中の有名な言葉ですが、あえて誤解を恐れずに言えば、「トヨタ生産方式とは工場を止めることと見つけたり」です。

 トヨタ生産方式の技術的側面はかなり公開されており、トヨタ自動車がジャパン・バッシングの中で、米国での初めての工場をGMと合弁で始めたときも、競争相手であるGMにノウハウを全面的に提供しました。そして、GM時代にはお荷物だった工場を、合弁事業での改革によって、GMの中でもトップクラスの生産性を誇る工場に変えました。しかしながら、それから数十年たった現在でもGMは全体としては「ダメ企業」です。

 トヨタ生産方式が固定的なものではなく、常に「カイゼン」されることによって成長するので、少しでも努力を怠ればトヨタのように不断の「カイゼン」を行っている企業に差を広げられるということもあります。

 しかしより根本的な理由は、トヨタ生産方式の根幹である「不良品が出たときにその場で工場を止める」ということが、普通の企業には簡単にできないという点にあります。
 容易に想像できると思いますが、例えば自動車工場の生産ラインの1個のネジに不良品が出たからといって、生産ラインを止めてひとつ前の工程での問題をチェックすれば、莫大な損失が出ます。
 通常は、大量に生産した後、検査係が不良品を撥ねるという方式です。しかし、トヨタ自動車は、「現地・現物」によって製造工程を徹底的かつ合理的に研究した結果、不良品が出たその場で対応した方が「製品の品質を向上させることができる上に、最終的には生産コストも下がる」という結論が出たので、何の迷いも無く「工場を止める」ことができるのです。

 もちろん、経営者と従業員の信頼関係も必要不可欠です。役員が破格の報酬を受け取り工員とは別の特別食堂で昼食を取るような欧米企業では、現場の一従業員が(いくら会社から指示されたからといっても責任追及を恐れて)不良品が一つ出ただけで工場を止めるというような大それた決断はできません。

 それに対して、社長・役員であっても作業服を着て現場に足しげく通い、会社の一体感を重視するトヨタを始めとする日本企業では、工員も会社の一員としての責任を自覚しやすくなります。
 またトップダウンでは無く、ボトムアップ型の文化が根付いていますから、たとえ一工員であっても会社を代表して重大な決断を行うことに抵抗が少なくなります。また、「個人の責任を追及するのではなく、原因を探究し全員で解決策を考える」という思想も浸透しやすいはずです。

<続く>

続きは、産業新潮
http://homepage2.nifty.com/sancho/
10月号をご参照ください。


(大原浩)


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バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第12回

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産業新潮 http://homepage2.nifty.com/sancho/
9月号連載記事


■競争戦略の核心その4 社風

●決算書や数字のデータだけで企業の良し悪しはわからない

 バフェットやドラッカーは、現代の会計システムの問題点をしばしば指摘します。バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムは、その名著「証券分析」などで、具体的な事例を使って、合法的な会計基準の変更をいくつか行うことで、高収益会社をぼろ会社に見せたり、その逆にぼろ会社を高収益会社に見せかけることがいとも簡単にできることを証明しています。
 また、ドラッカーは、「会計を学んで1年もすれば、減価償却の基準を変えることによって、ほとんどあらゆる利益を損失に変えることができることを知る。また、近い将来と遠い将来のニーズの評価次第でいかようにも会計を操作でき、これらに大きな影響を与えることのできる支出項目はとても多い」とその著書「現代の経営」の中で述べています。

 そのため、バフェットは「本質的価値」という概念を用いて、バークシャーなどの企業を「会計上の価値」ではなく、「本当の価値」で評価する試みを続けています。

 また、ドラッカーは「税務当局や株主に過去の事実を報告するための会計」ではなく、「経営者が会社の将来のために何を行うべきか判断するための会計」を提唱しています。

 例えば、「間接費」とひとくくりにされてしまいがちな費用こそ「知識労働者」の労働の質を分析するために詳細に分析する必要があるデータです。また、新鋭の設備を導入したことによって、生産性が向上し費用が低減したことなども会計に反映しなければなりません。
 その他、改善すべきポイントは無数にあるのですが、最も重要なことは「今の企業の運用のための費用・資源と、企業の将来の発展のための費用・資源は完全に分離しなければならない」ということです。

 教育研修費用を例にとりましょう。社員の教育研修をしたからといって、今年の決算の売り上げがすぐに向上すると考える経営者はいないでしょう。あくまで企業の将来の発展のための投資です。
 新卒の採用も同じ理屈です。彼らが、入社してすぐに稼いでくれるわけではありません。しかし、その費用は現在の会計では「今年の費用」として計上されます。
 ドラッカーが例示するある米国企業では、新事業を一生懸命推進しようとするのですが、何年たっても一向に進みません。なぜなら、その会社の幹部の給与は毎年の担当部署の業績によって決定するのですが、当面の間たいした売り上げを見込めないのに対して巨額のコストがかかる新事業を積極的に推進すると、彼らの報酬が下がるのが分かっていたからです。
 この問題は、新事業に関する売り上げと費用の数字を、幹部の報酬を決定する業績の数字とは別枠で扱うことで解決しました、つまり、「今の企業の運用のための費用・資源と、企業の将来の発展のための費用・資源を完全に分離」したわけです。


●社風は最高の競争力

 数字やデータだけで、企業の実力を判断できないとしたらどこを見たらよいのでしょうか?
 計数化が困難な競争力はたくさんありますが。その中で最も重要なのは「社風」だと言えるでしょう。

<続く>

続きは、産業新潮
http://homepage2.nifty.com/sancho/9月号をご参照ください。


(大原浩)


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