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石川臨太郎の「生涯パートナー銘柄の研究」
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◆Contents◆
◇銘柄研究「帝国電機製作所(6333)」
◇コラム 市場は株価の上昇期に入ってきたように感じられる
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◇銘柄研究 帝国電機製作所(6333)
本日は、1939年(昭和14年)創業の、キャンドモータポンプ(液漏れしないケミカルモーター)最大手で国内シェア60%、世界シェア40%と高シェアを持つ帝国電機製作所を、研究銘柄として取りあげます。
帝国電機製作所は、創業以来、鉄道信号機の製造・販売や電気自動車の開発など、常に研究開発型企業として成長を続け、1960年に完全無漏洩の帝国キャンドモータポンプの開発に成功し、これが帝国電機製作所の発展の原動力となっています。
キャンドモータポンプの「キャンド」とは「缶詰にする」という意味で、完全密閉構造を意味し、その最大の特徴は液漏れが全くないことです。従来型のポンプは原理上、取り扱い液が外部に漏れることが避けられませんでした。その問題を見事に解決したのが、帝国電機製作所の開発した「キャンドモータポンプ」です。
キャンドモータポンプは、有害・危険な液体を絶対に外部へ漏らさないという特徴を持っており、環境を維持するために評価が高いです。その特性を活かし、引火性のある液体や、薬品など漏れると危険な液を取り扱う石油化学や医薬品・食品業界、原子力発電所、変電所などさまざまな分野で活躍しており、JR新幹線では帝国電機製作所の車両用の電動油ポンプが100%搭載されています。
まず、本日の研究銘柄として帝国電機製作所を選んだ理由を説明します。
1.好業績を維持していたのに、投資環境の悪化で1000円以下まで下落した株価が、円安の影響もあり回復基調が鮮明になってきているけれど、PERやPBRなどの投資指標的には、まだまだ割安の状況にあること。
1月11日の終値の株価1451円。一株純資産1572円。2013年3月期の通期の一株利益予想166.43円。自己資本比率68.8%。
以上のようにPER(8.72倍)やPBR(0.92倍)などの指標でみる、まだ充分に割安です。
帝国電機製作所の株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6333&ba=1&type=year
帝国電機製作所が当初に発表した2013年3月期の業績予想は前期比増益の計画であり、第2四半期時点でも上半期の業績数字は当初予想よりも良かったのですが、通期予想については第2四半期(=上期)時点では据え置きました。
○当初の上期一部利益予想 59.83円 実績 64.43円
為替相場で円安が進んでいるので、通期業績も増益修正される可能性が高いと考えたことが本日の研究銘柄として選んだ一番大きな理由です。
2.2012年の年末にはヘッジファンドの円売りが積み上がっていたために、年が明ければ円高に戻ると予想する機関投資家のアナリストなどが多かったのですが、実際には円高には戻らずに、さらに円安方向に動いているので、業績の良い輸出銘柄への資金の流れが強くなっていること。
しかし、ほんの少し米国市場の株価が低迷したり、ドル円相場が円高方向に向かうと、株価が安くなることも多いので、安く投資するチャンスが、まだ充分にあると考えられること。
帝国電機製作所の3ヶ月間のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6333&ba=1&type=3month
ただ、右肩上がりのトレンドは続いているので、2013年3月期第3四半期の決算短信が発表されて、市場の予想(=従来の業績予想より)増益になっていると、更に株価の上昇が早くなる可能性があるので、事前に帝国電機製作所の内容を把握して、第3四半期の決算発表を待って、その結果により投資判断を素早く行なう準備をしておくのは意味があると考えました。
2011年11月21日の日経ニュースには、帝国電機製作所の業績の良さを期待させるような、以下のような記事がありました。引用させていただきます。
(引用開始)
『主力のポンプ事業は国内外で化学物質用が伸びる。北米や東南アジアでは自動車用の引き合いが活発。中国では脱硫装置の大型案件も獲得する。3期連続で増収。13年から中国・大連の工場が本格稼働。部品の現地調達に努め、円高による為替差損を減らす。年配当は2円増やし24円。』
(以上で引用を終わります)
帝国電機製作所が発表したわけではないので100%信じることは危険で、帝国電機製作所の決算発表を確認する必要があります。しかし事前に帝国電機製作所をチェックしておく要因にはなると考えています。
3.帝国電機製作所は、低PERかつ低PBRかつ自己資本比率が68.8%と高いことと、世界シェアの高いキャンドモータポンプ(液漏れしないケミカルモーター)という有力商品を持っていること。
以上から帝国電機製作所を本日の研究銘柄として選びました。
まずいつものように帝国電機製作所の資産価値から確認していきます。
http://www.teikokudenki.co.jp/ir/files/library/109shihanki2.pdf
平成25年3月期の第2四半期の決算短信から調べました。必ず自分の眼で確認する癖をつけてください。なお、上記決算短信には、投資有価証券については「投資その他の資産」としてまとめ書きされていること、また土地についても有形固定資産の欄に「その他(純額)」として、まとめ書きされているので、前期末の有価証券報告書の投資有価証券の金額、土地の金額で代用しました。
現・預金30.2億円
+投資有価証券9.4億円
+受取手形及び売掛金62.3億円
+在庫39.1億円
+土地簿価16.6億円
−全部の負債(他人資本全部)64.9億円
=92.7億円
時価総額は原稿執筆時(1月11日終値)の株価1451円(9,093,885株)で計算すると、132億円になります。決算短信発表時の自己株式は株数に含めず計算しています。
創業が1939年なので、持っている土地の含み益は相応に見込めそうですが、住所が特定できたのが兵庫県たつの市の本社と、新宮工場と、埼玉県の東京サービス工場だけでした。近隣公示地の価格を参考に推定すると、20億円程度の含み益がありそうです。他にも、日本国内に子会社所有地を含めて52,777.65平米の土地を所有し、その簿価が9.5億円程度です。1平米当たりの簿価は18,012円です。この部分にも含み益があると推定が出来ます。
時価総額に対する資産価値はやや低いですが、事業価値は高いです。安定的に業績を伸ばしています。
私は、投資を検討する銘柄の『本質的な企業価値』というのは『資産価値』と『事業価値(利益を稼ぎ続ける収益力)』を総合したものだと考えています。
事業価値(=利益を上げ続ける収益力)を推定するために、4つの経済サイクルのうち一番短い3年〜4年でサイクルを描く在庫循環を参考に、企業の4年間の平均経常利益を計算し、その5年分つまり5倍を事業価値と考えるようにしています。事業価値はバランス・シート上に載っていないビジネス・モデルや企業の信用力、社長や社員の能力、ネットワークの力などで利益を稼ぎだせる力を現金換算しなければ計算できません。しかし、これを簡単に算出することは不可能です。したがって過去の企業の経常利益で代用し、事業価値を把握するようにしています。
帝国電機製作所の経常利益は、リーマンショックを乗り越えて順調に回復してきています。2009年3月期から1708百万円→1238百万円→1523百万円→2130百万円。4年間の平均は1649.7百万円です。この5倍の82.4億円を帝国電機製作所の事業価値と考えます。
資産価値と事業価値から考えて、帝国電機製作所は割安だと判断しました。
土地を除いた固定資産など、上記の資産価値に計上しなかった、資産を見てみます。
有形固定資産(建物等)39.3億円
+その他の資産10.6億円
=49.9億円
続いて事業価値を定性的に考えてみます。
帝国電機製作所の主要な事業はポンプ事業と電子部品事業です。
売上に占める割合は、前期の2012年3月期においては主力のポンプ事業が約84%、自動車用電子部品事業が約13%です。
http://www.teikokudenki.co.jp/company/history/
帝国電機製作所は技術開発力が高く、また中国に対する進出でも同業他社より早くスタートしています。性能が重視される原発やケミカルポンプは過去の実績が評価され、定着率が高いという特徴がありますから、日本と違い原発の新設を止めることが無いと考えられる中国での事業は、今後も期待できると考えています。
中国ばかりではくアメリカにおいても先行しており、2008年8月時点では、アメリカの原発の2次冷却水用キャンドモータポンプの唯一の認定業者でした。今回も帝国電機製作所のIRに、その後ライバルの日機装などがアメリカでの認定を得たかどうか聞いてみましたが、特にそのような情報は得ていないとのことでした。
日本の原発事故を受けて、アメリカなどの先進国では原発の新設が遅れている状況ですが、今後原発の新設などが動き出せば、いまでも業績が伸びている帝国電機製作所の業績が更に伸びる可能性は期待できると考えています。中国と同様に、原発のように安全性を最重視しなければならないものの部品は、過去に実績のある企業が有利であることに変わりはないと考えます。
アメリカの景気悪化も深刻でしたが、環境保護に関してはますます厳しくなっていくことが予想されます。景気が悪かったので、アメリカのケミカルポンプ市場においては、従来の汎用型ポンプから環境保護に適した無漏洩のキャンドモータポンプへの切り替えが進んでいなかったようですが、今後はアメリカの景気も回復していくと考えられており、この分野でも帝国電機製作所の事業に良い影響が出てくると考えられます。従来のケミカルポンプ市場の規模は600億円程度と言われていましたが、無漏洩ポンプのシェアは10%程度のようで、まだまだ需要拡大が見込めます。
あと、シェールガスの開発に帝国電機製作所のポンプが使われているかどうかIRに質問しました。シェールガスの採掘には使用されていないとのことでした。しかし、シェールガスを利用して新たなケミカル工業のプラントが建設されるところまで来れば、帝国電機製作所の無漏洩ポンプの利用が期待できるということでした。米国では価格の安いシェールガスが原料として使用できるということで、大手の化学メーカーなどの米国回帰が話題になっています。これによって新たな化学プラントが新設されることは確実視されています。
またアメリカでも中国でも、景気浮揚策としても電力や鉄道などインフラ投資の増加が期待されていますが、原発でも鉄道向けにも帝国電機製作所の製品が求められています。新幹線のぞみ500系・700系の全車両に、キャンドモータポンプを応用した電動用ポンプが使われています。しかし、原発や鉄道ばかりでなく、帝国電機製作所のポンプはダイキン工業など日本の大型冷凍機8メーカー全てに採用されており、現在はあまり業績が芳しくない半導体向けウエハー洗浄用ポンプや、自動車部品もいずれは回復してくると考えられます。
【帝国電機製作所の強み】
日本国内ポンプメーカーの大部分は、ポンプ部分は自社で製造するものの、その動力源であるモータは、モータメーカーより購入しているケースがほとんどです。帝国電機製作所は、ポンプ本体の設計とあわせてモータ設計も行う技術・生産体制をとっています。そのために高い開発・技術力を維持しており、常に最高品質の製品を供給する力が強い点が強みです。
【キャンドモータポンプのメリット】
http://www.teikokudenki.co.jp/canned_motor_pump/
○取扱い液が外部に漏れるおそれがないので、人体に有害な液、爆発や引火しやすい液、高価な液、腐食性のある液などの取扱いに適しています。
○外気を吸い込まないので、真空系での運転、外気に触れると変質する液などの取扱いに適しています。
○軸シールがないので、系の圧力が高い、高温液、低温液、高融点液などを取扱うポンプの製作が容易です。
○潤滑油を必要としないので、取扱い液の汚染がなく、給油の手間が不要です。
○モータを冷却するファンがないので運転音が静かです。
【帝国電機製作所の経営者の問題意識と今後の方針】
2012年3月期の有価証券報告書に書かれているものをまとめておきます。
今後の経済見通しについては、欧州の財政危機の再燃懸念等、不確実な状況が依然残っていますが、中国をはじめとしたアジア、新興国の経済成長及び北米の回復基調も持続すると見られ、主に海外において、景気は好調を維持していくものと考えています。
一方、日本の国内景気は復興需要もあり、一部に復調の兆しが見られるものの、原油価格の高騰や雇用情勢の悪化懸念等、不透明な要因もあることから、景気回復には時間を要するものと予想されます。
キャンドモータポンプ業界全般としては、外需については米国やアジア諸国等で好調な景気が続くものと考えられますが、内需については東日本大震災からの設備投資関連の復興需要が一部に見られるものの、国内の設備投資は依然として厳しく本格回復には至っていません(私としては安倍政権の誕生で、この点については今後改善されていくと考えています)。
また、昨今の円高基調の中では、顧客企業の設備投資の大半が海外の生産拠点へとシフトしていく傾向があることから、内需に期待することは難しいと予想されます。
帝国電機製作所においては、このような外部環境のもと、
1)北米でのキャンドモータポンプ市場の拡大を図るための営業力強化・サービス体制の拡充
2)中国市場での更なるシェアアップを図るための営業力強化・サービス体制の拡充
3)欧州でのブランド認知度向上・代理店網の整備
4)韓国、台湾、東南アジア地域での販売力の強化
5)BRICsをはじめとした新興市場への販路拡大
等、積極的な海外戦略を推進していく方針です。
また、国内においては、長年築いてきたブランドパワーを活かしながら、継続的な技術開発・新製品の投入を行うとともに、一層のコスト低減による価格競争力強化・人材育成等に注力し、利益確保を図っていきます。
今後とも、キャンドモータポンプでのトップメーカーとして、ポンプ業界、とりわけ耐食性ポンプの分野にキャンドモータポンプの地位をより強固にすることを通じ、世界的なマーケットシェアの向上、収益構造の改善、安定成長企業としての更なる基盤の確立を目指していきます。
最後に、2012年3月期の有価証券報告書から、帝国電機製作所の研究開発の状況を見ておきます。
帝国電機製作所の研究開発は、技術開発センターが中心となり、環境調和型製品の開発、ITを駆使した制御技術開発、先進技術の開拓、新規材料を用いた機能性重要部品の評価試験などを積極的に行っています。
2012年3月期の研究開発費の総額は4億3百万円でした。
<1.ポンプ事業>
○キャンドモータポンプ安定運転のための情報監視システムの開発を行っています。これは主に超大型キャンドモータポンプに採用されますが、全てのポンプに搭載可能となるシステムになっています。このシステムは遠隔監視が可能であり、信頼性の高い安定運転とポンプのメンテナンス時期を的確に予測することができ、生産現場における生産コストの削減に貢献できます。
○高圧変圧器用電動油ポンプは、国内においては100%シェアを誇るものの、海外市場においては、米国のスマートグリッド(次世代送配電網)や、アジア、アフリカ、南米の電力インフラ整備、省エネ社会に寄与する高速新幹線鉄道網等など、高圧変圧器を取り巻く市場は急速に広まっています。そこで海外市場に向けた軽量高効率かつ従来型同等の高信頼性を有し、コストダウンを図った世界で戦える価格競争力のある電動油ポンプを開発しています。
ポンプ事業に係る研究開発費は、4億3百万円です。
<2.電子部品事業>
電子部品事業は、子会社である株式会社平福電機製作所で、自動車用電装品及び産業機器用電子基板を製造しています。具体的には、組立部門とSMT表面実装部門があり、特にSMT表面実装部門としてはコストダウンのための最新設備への更新、実装能力向上、高品質製品への追求などの製造技術の向上に取組んでおり、特に研究開発に相当する活動は行なっておりません。従って、電子部品事業に係る研究開発費は計上されていません。
いままで見てきたように、世界中の将来有望な市場で高いシェアを確保している高技術企業である、帝国電機製作所の株価が、大きく増益基調を維持しているのに、投資環境の悪化で大きく下落して回復基調に入っているときに投資を検討するのは意味があると考えて、本日の研究銘柄として取り上げました。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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◇コラム 日本の株式市場は株価の上昇期に入ってきたように感じられる状況です
去年の11月15日以前の日本の株式市場なら、米国市場などで株価が下がると、日本市場の株価が上がるようなことはほとんどありませんでした。
また、日経225や個別株でも、寄り付きから株価が下落傾向にあると、そのまま安くなって、大引けにかけて株価が寄り付きの株価を上回ることは、めったにありませんでした。
しかし最近は、前場まで株価が安くても、後場に入ると一転して高くなるようなケースが頻繁に見られるようになりました。
まだまだ多くの投資家が疑心暗鬼の状況で、おそるおそる株を買っている中で、強気で攻めの姿勢を貫いている投資家は、かなりの好成績を確保していることが、ネットで多くのブログをみていると、感じられるようになりました。
自分の投資している銘柄群も、寄り付きから下げていても、後場から高くなるものも多くなり、そろそろ上げ終わって休みの期間に入ったかなどと考えて、他の銘柄にシフトすると、手放した銘柄が翌日から大きく上昇して、ホゾを噛むことが多くなりました。
これからの研究銘柄にしたいと考えて、いくつかの銘柄のIRに質問をしてみました。帝国電機製作所と同じように、株価が大きく下落したアルコニックスについても質問してみました。
アルコニックスは確かに前期比減益予想ですが、株価が2000円どころから1100円近くまで、半値近くも下落するような業績ではありません。
アルコニックスの出身母体の双日が、アルコニックスの株を手放していることはEDINETなどで見て知っていましたが、今回、双日とアルコニックスの関係をIRに質問してみて、すでに資本関係がゼロになっているということを知りました。
つまりアルコニックスの株価が暴落した理由は、双日の売りと、株価の下落に恐れをなした他の投資家の追随の売りによって引き起されたのだと考えました。双日の出資はすでにゼロになっているとのことで、これからは株価に関係なく売ってきた双日の売りが一切出てこないということは、アルコニックスの株価にとっては朗報だと思います。
一旦株価が大きく下がってしまうと、その影響が薄れるまではなかなか株価は反発しません。投資環境が悪かったことも、株価の重石となりました。
しかし、この業績で、この株価は安すぎると考えた投資家が恐る恐るアルコニックスの株を買い始めると、どうしても売らなければならない双日のような大株主以外の投資家は、もしかしたらアルコニックスの株価は業績などから考えた適正な株価に戻り始めたのかもしれないと、やはり少しずつ資金を投下し始めます。
『半値戻しは全値戻し』※という相場格言があるように、アルコニックスの株価は投資環境の好転もあり、戻り続ける可能性が充分あると感じるようになりました。
※株価が値下がり幅の半分まで回復してきた(半値戻し)ということは相当の上昇エネルギーを持っているはずだから、今後全値(それまでの高値)まで戻るものだ、という考え方
そこで、来週の研究銘柄としてはアルコニックスを取り上げてみたいと考えているところです。
年末のテーマ型銘柄研究として取り上げたドラッグストア3社(マツモトキヨシホールディングス、ココカラファイン、カワチ薬品)の株価の動きを見ていると、ある日突然、大きく下げて、翌日は大きく反発してしまうというようなことが交代のように起こります。
マツモトキヨシホールディングスの株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=3088&ba=1&type=3month
ココカラファインの株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=3098&ba=1&type=3month
カワチ薬品の株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=2664&ba=1&type=3month
株価が翌日から必ず戻す可能性は100%ではありませんが、一部の投資家の利喰いなどで下げたのならば、優待の権利日の3月末に向けて、株価が回復する可能性は充分あるのではないかと考えて、株価の動きを見ています。
その点では、年末の研究銘柄であるフクダ電子の株価は、ジリジリとではありますが、それほど下げることなく株価が右肩上がりを続け、毎日のように昨年来の高値を更新しています。いままでの保ち合いの上限レンジの2500円どころを上に抜けてきて、今の株価もPERは10倍以下、PBRも1倍以下で、配当が年間95円と充分高配当利回りなので、3月の配当権利日までは右肩上がりの上昇を続けてくれるのではないかと期待しています。
フクダ電子の株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6960&ba=9&type=3month
私自身の好みで言えば、一気に上がらなくともジリジリと上がり続けて、気がついたら大きく上がっていたというような動きをする銘柄のほうに好感が持てます。このような銘柄は、他のどうしても欲しい銘柄を買い増すために、いったん利喰いして手放したりすると、売値より安く買い戻すことが出来なくなることも多い銘柄でもあります。
さて、これからはポジショントークになります。言及する銘柄は、研究銘柄やコラム銘柄とは性格が違い、あくまでも実経験による体験談となります。
その点を認識して注意して読んでいただければと思います。
私がいま個人的に一番投資妙味があると考えている銘柄は東栄住宅です。
12月の後半に、海外で相場が開いているのに、日本は長いお正月休みに入るので、海外で何が起こるか不安である。そこで、海外で何かが起きても株価が下げにくい銘柄に資金をシフトしておくという案も悪くない。そして、資金をシフトしておくなら、どのような銘柄が良いのだろうかということで、私の案をコラムで書きました。
そのうちの1銘柄が東栄住宅でした。1月に魅力的な金券優待と半期分の配当があるから、株価が下げにくいだろうと考えたからでした。
ところが運が良いというしかありませんが、12月25日に飯田産業系のパワービルダー6社が経営統合すると発表しました。
http://www.iidasangyo.co.jp/info_pdf/kaiji20121225.pdf
一建設(3268)や飯田産業(8880)、東栄住宅(8875)、タクトホーム(8915)、アーネストワン(8895)、アイディホーム(3274)の戸建て住宅6社は、共同持ち株会社を設立して経営統合することで基本合意したと発表しました。
共同持ち株会社を設立するのは2013年11月で、まだ1年近くも先のことですが、もともと低PERの6社だったので、そのニュースに反応して株価は大きく上昇しました。
問題は、営統合比率は今後協議して決める、というところです。経営統合に参加する6社の2011年度の売上高を単純合計すると、7789億円と戸建て住宅を販売する「パワービルダー」としては国内最大手になるといわれています。
6社は今後、統合準備委員会を設置して具体的な協議を始める、としており、持ち株会社の名称や本店所在地、代表者、役員なども現時点では未定としています。
6社の株価は投資家の思惑でみな上げていますが、上昇率に差が出ています。私は6社の経営統合比率は、一番業容が大きく、時価総額も大きい一建設の株価を基本に統合比率が決められると予想しています。そして6社という多数の企業の統合では、各社の一般株主ばかりではなく、大株主だけでも沢山いるので、それらのステークホルダーが納得する具体的な基準に基づく統合比率が必要だと考えています。
いろいろな案が出てくるでしょうが、基本的には一建設の株価と一株純資産との兼ね合いから統合比率が決められると予想しました。現状は東栄住宅を除く5社の株価は、各社の一株純資産以上か、一株純資産程度まで上昇しています。すなわち、PBR1倍以上まで上げていますが、東栄住宅だけは、まだPBRが1倍以下です。
まだ統合まで時間があるので、今期の業績が新たに加わった一株純資産で統合比率が決められることになるだろうし、各社の株価もまだまだ投資家の思惑で、大きく上下に変動すると予想されます。
しかし、一建設のPBRが1倍以上(現在は株価が3680円、一株純資産が2226円なのでPBRは1.65倍です)なら、各社ともPBRが最低でも1倍にはなる経営比率になると想像して、今ならば東栄住宅に投資しておくと一番メリットが得られそうだ。そんな計算で東栄住宅の株に一番妙味があると考えていることころです。そして投資するにしてもなるべく安く投資したいので、1月の配当優待権利落ち後に株価が下がるなら、そのときが買い増し時期としてはチャンスの時ではないかとも考えていることです。一建設も1月末決算なので、権利落ちの状況は一建設にも起こります。
もし、東栄建設の一株純資産である1375円の1.65倍で経営統合比率が決まると、とんでもない株価になってしまいます。ここまで期待するのは欲張りすぎると考えますが、少なくとも一株純資産以下の現在の1261円の株価は割安すぎるというのが、私の考えです。
もちろん思惑はずれもありうるし、一建設の株価が大きく下げてPBRが1倍以下になってしまうリスクも当然あります。あまり歪なポートフォリオにしてしまうと、失敗したときにダメージが大きくなりすぎるとも考えています。ただいろいろ考えて、策を練るのも勉強になるし、今後の投資の役にも立つと考えています。
興味のある方は6社の決算短信などをチェックして、いろいろ考えてみると、今後同じような経営比率の決まっていない合併が起きたときの練習になると考えて、自説(ポジショントーク)をご披露しました。
各社の直近の決算短信は以下の通りです。
一建設
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121211_hajime_kessan.pdf
飯田産業
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121211_iida_kessan.pdf
東栄住宅
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121203_touei_kessan.pdf
タクトホーム
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20130110_tact_kessan.pdf
アーネストワン
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121030_arnest_kessan.pdf
アイディホーム
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121105_id_kessan.pdf
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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発行者:NPO法人イノベーターズ・フォーラム
email:magazine@iforum.jp
http://www.iforum.jp/
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帝国電機製作所は、創業以来、鉄道信号機の製造・販売や電気自動車の開発など、常に研究開発型企業として成長を続け、1960年に完全無漏洩の帝国キャンドモータポンプの開発に成功し、これが帝国電機製作所の発展の原動力となっています。
キャンドモータポンプの「キャンド」とは「缶詰にする」という意味で、完全密閉構造を意味し、その最大の特徴は液漏れが全くないことです。従来型のポンプは原理上、取り扱い液が外部に漏れることが避けられませんでした。その問題を見事に解決したのが、帝国電機製作所の開発した「キャンドモータポンプ」です。
キャンドモータポンプは、有害・危険な液体を絶対に外部へ漏らさないという特徴を持っており、環境を維持するために評価が高いです。その特性を活かし、引火性のある液体や、薬品など漏れると危険な液を取り扱う石油化学や医薬品・食品業界、原子力発電所、変電所などさまざまな分野で活躍しており、JR新幹線では帝国電機製作所の車両用の電動油ポンプが100%搭載されています。
まず、本日の研究銘柄として帝国電機製作所を選んだ理由を説明します。
1.好業績を維持していたのに、投資環境の悪化で1000円以下まで下落した株価が、円安の影響もあり回復基調が鮮明になってきているけれど、PERやPBRなどの投資指標的には、まだまだ割安の状況にあること。
1月11日の終値の株価1451円。一株純資産1572円。2013年3月期の通期の一株利益予想166.43円。自己資本比率68.8%。
以上のようにPER(8.72倍)やPBR(0.92倍)などの指標でみる、まだ充分に割安です。
帝国電機製作所の株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6333&ba=1&type=year
帝国電機製作所が当初に発表した2013年3月期の業績予想は前期比増益の計画であり、第2四半期時点でも上半期の業績数字は当初予想よりも良かったのですが、通期予想については第2四半期(=上期)時点では据え置きました。
○当初の上期一部利益予想 59.83円 実績 64.43円
為替相場で円安が進んでいるので、通期業績も増益修正される可能性が高いと考えたことが本日の研究銘柄として選んだ一番大きな理由です。
2.2012年の年末にはヘッジファンドの円売りが積み上がっていたために、年が明ければ円高に戻ると予想する機関投資家のアナリストなどが多かったのですが、実際には円高には戻らずに、さらに円安方向に動いているので、業績の良い輸出銘柄への資金の流れが強くなっていること。
しかし、ほんの少し米国市場の株価が低迷したり、ドル円相場が円高方向に向かうと、株価が安くなることも多いので、安く投資するチャンスが、まだ充分にあると考えられること。
帝国電機製作所の3ヶ月間のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6333&ba=1&type=3month
ただ、右肩上がりのトレンドは続いているので、2013年3月期第3四半期の決算短信が発表されて、市場の予想(=従来の業績予想より)増益になっていると、更に株価の上昇が早くなる可能性があるので、事前に帝国電機製作所の内容を把握して、第3四半期の決算発表を待って、その結果により投資判断を素早く行なう準備をしておくのは意味があると考えました。
2011年11月21日の日経ニュースには、帝国電機製作所の業績の良さを期待させるような、以下のような記事がありました。引用させていただきます。
(引用開始)
『主力のポンプ事業は国内外で化学物質用が伸びる。北米や東南アジアでは自動車用の引き合いが活発。中国では脱硫装置の大型案件も獲得する。3期連続で増収。13年から中国・大連の工場が本格稼働。部品の現地調達に努め、円高による為替差損を減らす。年配当は2円増やし24円。』
(以上で引用を終わります)
帝国電機製作所が発表したわけではないので100%信じることは危険で、帝国電機製作所の決算発表を確認する必要があります。しかし事前に帝国電機製作所をチェックしておく要因にはなると考えています。
3.帝国電機製作所は、低PERかつ低PBRかつ自己資本比率が68.8%と高いことと、世界シェアの高いキャンドモータポンプ(液漏れしないケミカルモーター)という有力商品を持っていること。
以上から帝国電機製作所を本日の研究銘柄として選びました。
まずいつものように帝国電機製作所の資産価値から確認していきます。
http://www.teikokudenki.co.jp/ir/files/library/109shihanki2.pdf
平成25年3月期の第2四半期の決算短信から調べました。必ず自分の眼で確認する癖をつけてください。なお、上記決算短信には、投資有価証券については「投資その他の資産」としてまとめ書きされていること、また土地についても有形固定資産の欄に「その他(純額)」として、まとめ書きされているので、前期末の有価証券報告書の投資有価証券の金額、土地の金額で代用しました。
現・預金30.2億円
+投資有価証券9.4億円
+受取手形及び売掛金62.3億円
+在庫39.1億円
+土地簿価16.6億円
−全部の負債(他人資本全部)64.9億円
=92.7億円
時価総額は原稿執筆時(1月11日終値)の株価1451円(9,093,885株)で計算すると、132億円になります。決算短信発表時の自己株式は株数に含めず計算しています。
創業が1939年なので、持っている土地の含み益は相応に見込めそうですが、住所が特定できたのが兵庫県たつの市の本社と、新宮工場と、埼玉県の東京サービス工場だけでした。近隣公示地の価格を参考に推定すると、20億円程度の含み益がありそうです。他にも、日本国内に子会社所有地を含めて52,777.65平米の土地を所有し、その簿価が9.5億円程度です。1平米当たりの簿価は18,012円です。この部分にも含み益があると推定が出来ます。
時価総額に対する資産価値はやや低いですが、事業価値は高いです。安定的に業績を伸ばしています。
私は、投資を検討する銘柄の『本質的な企業価値』というのは『資産価値』と『事業価値(利益を稼ぎ続ける収益力)』を総合したものだと考えています。
事業価値(=利益を上げ続ける収益力)を推定するために、4つの経済サイクルのうち一番短い3年〜4年でサイクルを描く在庫循環を参考に、企業の4年間の平均経常利益を計算し、その5年分つまり5倍を事業価値と考えるようにしています。事業価値はバランス・シート上に載っていないビジネス・モデルや企業の信用力、社長や社員の能力、ネットワークの力などで利益を稼ぎだせる力を現金換算しなければ計算できません。しかし、これを簡単に算出することは不可能です。したがって過去の企業の経常利益で代用し、事業価値を把握するようにしています。
帝国電機製作所の経常利益は、リーマンショックを乗り越えて順調に回復してきています。2009年3月期から1708百万円→1238百万円→1523百万円→2130百万円。4年間の平均は1649.7百万円です。この5倍の82.4億円を帝国電機製作所の事業価値と考えます。
資産価値と事業価値から考えて、帝国電機製作所は割安だと判断しました。
土地を除いた固定資産など、上記の資産価値に計上しなかった、資産を見てみます。
有形固定資産(建物等)39.3億円
+その他の資産10.6億円
=49.9億円
続いて事業価値を定性的に考えてみます。
帝国電機製作所の主要な事業はポンプ事業と電子部品事業です。
売上に占める割合は、前期の2012年3月期においては主力のポンプ事業が約84%、自動車用電子部品事業が約13%です。
http://www.teikokudenki.co.jp/company/history/
帝国電機製作所は技術開発力が高く、また中国に対する進出でも同業他社より早くスタートしています。性能が重視される原発やケミカルポンプは過去の実績が評価され、定着率が高いという特徴がありますから、日本と違い原発の新設を止めることが無いと考えられる中国での事業は、今後も期待できると考えています。
中国ばかりではくアメリカにおいても先行しており、2008年8月時点では、アメリカの原発の2次冷却水用キャンドモータポンプの唯一の認定業者でした。今回も帝国電機製作所のIRに、その後ライバルの日機装などがアメリカでの認定を得たかどうか聞いてみましたが、特にそのような情報は得ていないとのことでした。
日本の原発事故を受けて、アメリカなどの先進国では原発の新設が遅れている状況ですが、今後原発の新設などが動き出せば、いまでも業績が伸びている帝国電機製作所の業績が更に伸びる可能性は期待できると考えています。中国と同様に、原発のように安全性を最重視しなければならないものの部品は、過去に実績のある企業が有利であることに変わりはないと考えます。
アメリカの景気悪化も深刻でしたが、環境保護に関してはますます厳しくなっていくことが予想されます。景気が悪かったので、アメリカのケミカルポンプ市場においては、従来の汎用型ポンプから環境保護に適した無漏洩のキャンドモータポンプへの切り替えが進んでいなかったようですが、今後はアメリカの景気も回復していくと考えられており、この分野でも帝国電機製作所の事業に良い影響が出てくると考えられます。従来のケミカルポンプ市場の規模は600億円程度と言われていましたが、無漏洩ポンプのシェアは10%程度のようで、まだまだ需要拡大が見込めます。
あと、シェールガスの開発に帝国電機製作所のポンプが使われているかどうかIRに質問しました。シェールガスの採掘には使用されていないとのことでした。しかし、シェールガスを利用して新たなケミカル工業のプラントが建設されるところまで来れば、帝国電機製作所の無漏洩ポンプの利用が期待できるということでした。米国では価格の安いシェールガスが原料として使用できるということで、大手の化学メーカーなどの米国回帰が話題になっています。これによって新たな化学プラントが新設されることは確実視されています。
またアメリカでも中国でも、景気浮揚策としても電力や鉄道などインフラ投資の増加が期待されていますが、原発でも鉄道向けにも帝国電機製作所の製品が求められています。新幹線のぞみ500系・700系の全車両に、キャンドモータポンプを応用した電動用ポンプが使われています。しかし、原発や鉄道ばかりでなく、帝国電機製作所のポンプはダイキン工業など日本の大型冷凍機8メーカー全てに採用されており、現在はあまり業績が芳しくない半導体向けウエハー洗浄用ポンプや、自動車部品もいずれは回復してくると考えられます。
【帝国電機製作所の強み】
日本国内ポンプメーカーの大部分は、ポンプ部分は自社で製造するものの、その動力源であるモータは、モータメーカーより購入しているケースがほとんどです。帝国電機製作所は、ポンプ本体の設計とあわせてモータ設計も行う技術・生産体制をとっています。そのために高い開発・技術力を維持しており、常に最高品質の製品を供給する力が強い点が強みです。
【キャンドモータポンプのメリット】
http://www.teikokudenki.co.jp/canned_motor_pump/
○取扱い液が外部に漏れるおそれがないので、人体に有害な液、爆発や引火しやすい液、高価な液、腐食性のある液などの取扱いに適しています。
○外気を吸い込まないので、真空系での運転、外気に触れると変質する液などの取扱いに適しています。
○軸シールがないので、系の圧力が高い、高温液、低温液、高融点液などを取扱うポンプの製作が容易です。
○潤滑油を必要としないので、取扱い液の汚染がなく、給油の手間が不要です。
○モータを冷却するファンがないので運転音が静かです。
【帝国電機製作所の経営者の問題意識と今後の方針】
2012年3月期の有価証券報告書に書かれているものをまとめておきます。
今後の経済見通しについては、欧州の財政危機の再燃懸念等、不確実な状況が依然残っていますが、中国をはじめとしたアジア、新興国の経済成長及び北米の回復基調も持続すると見られ、主に海外において、景気は好調を維持していくものと考えています。
一方、日本の国内景気は復興需要もあり、一部に復調の兆しが見られるものの、原油価格の高騰や雇用情勢の悪化懸念等、不透明な要因もあることから、景気回復には時間を要するものと予想されます。
キャンドモータポンプ業界全般としては、外需については米国やアジア諸国等で好調な景気が続くものと考えられますが、内需については東日本大震災からの設備投資関連の復興需要が一部に見られるものの、国内の設備投資は依然として厳しく本格回復には至っていません(私としては安倍政権の誕生で、この点については今後改善されていくと考えています)。
また、昨今の円高基調の中では、顧客企業の設備投資の大半が海外の生産拠点へとシフトしていく傾向があることから、内需に期待することは難しいと予想されます。
帝国電機製作所においては、このような外部環境のもと、
1)北米でのキャンドモータポンプ市場の拡大を図るための営業力強化・サービス体制の拡充
2)中国市場での更なるシェアアップを図るための営業力強化・サービス体制の拡充
3)欧州でのブランド認知度向上・代理店網の整備
4)韓国、台湾、東南アジア地域での販売力の強化
5)BRICsをはじめとした新興市場への販路拡大
等、積極的な海外戦略を推進していく方針です。
また、国内においては、長年築いてきたブランドパワーを活かしながら、継続的な技術開発・新製品の投入を行うとともに、一層のコスト低減による価格競争力強化・人材育成等に注力し、利益確保を図っていきます。
今後とも、キャンドモータポンプでのトップメーカーとして、ポンプ業界、とりわけ耐食性ポンプの分野にキャンドモータポンプの地位をより強固にすることを通じ、世界的なマーケットシェアの向上、収益構造の改善、安定成長企業としての更なる基盤の確立を目指していきます。
最後に、2012年3月期の有価証券報告書から、帝国電機製作所の研究開発の状況を見ておきます。
帝国電機製作所の研究開発は、技術開発センターが中心となり、環境調和型製品の開発、ITを駆使した制御技術開発、先進技術の開拓、新規材料を用いた機能性重要部品の評価試験などを積極的に行っています。
2012年3月期の研究開発費の総額は4億3百万円でした。
<1.ポンプ事業>
○キャンドモータポンプ安定運転のための情報監視システムの開発を行っています。これは主に超大型キャンドモータポンプに採用されますが、全てのポンプに搭載可能となるシステムになっています。このシステムは遠隔監視が可能であり、信頼性の高い安定運転とポンプのメンテナンス時期を的確に予測することができ、生産現場における生産コストの削減に貢献できます。
○高圧変圧器用電動油ポンプは、国内においては100%シェアを誇るものの、海外市場においては、米国のスマートグリッド(次世代送配電網)や、アジア、アフリカ、南米の電力インフラ整備、省エネ社会に寄与する高速新幹線鉄道網等など、高圧変圧器を取り巻く市場は急速に広まっています。そこで海外市場に向けた軽量高効率かつ従来型同等の高信頼性を有し、コストダウンを図った世界で戦える価格競争力のある電動油ポンプを開発しています。
ポンプ事業に係る研究開発費は、4億3百万円です。
<2.電子部品事業>
電子部品事業は、子会社である株式会社平福電機製作所で、自動車用電装品及び産業機器用電子基板を製造しています。具体的には、組立部門とSMT表面実装部門があり、特にSMT表面実装部門としてはコストダウンのための最新設備への更新、実装能力向上、高品質製品への追求などの製造技術の向上に取組んでおり、特に研究開発に相当する活動は行なっておりません。従って、電子部品事業に係る研究開発費は計上されていません。
いままで見てきたように、世界中の将来有望な市場で高いシェアを確保している高技術企業である、帝国電機製作所の株価が、大きく増益基調を維持しているのに、投資環境の悪化で大きく下落して回復基調に入っているときに投資を検討するのは意味があると考えて、本日の研究銘柄として取り上げました。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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◇コラム 日本の株式市場は株価の上昇期に入ってきたように感じられる状況です
去年の11月15日以前の日本の株式市場なら、米国市場などで株価が下がると、日本市場の株価が上がるようなことはほとんどありませんでした。
また、日経225や個別株でも、寄り付きから株価が下落傾向にあると、そのまま安くなって、大引けにかけて株価が寄り付きの株価を上回ることは、めったにありませんでした。
しかし最近は、前場まで株価が安くても、後場に入ると一転して高くなるようなケースが頻繁に見られるようになりました。
まだまだ多くの投資家が疑心暗鬼の状況で、おそるおそる株を買っている中で、強気で攻めの姿勢を貫いている投資家は、かなりの好成績を確保していることが、ネットで多くのブログをみていると、感じられるようになりました。
自分の投資している銘柄群も、寄り付きから下げていても、後場から高くなるものも多くなり、そろそろ上げ終わって休みの期間に入ったかなどと考えて、他の銘柄にシフトすると、手放した銘柄が翌日から大きく上昇して、ホゾを噛むことが多くなりました。
これからの研究銘柄にしたいと考えて、いくつかの銘柄のIRに質問をしてみました。帝国電機製作所と同じように、株価が大きく下落したアルコニックスについても質問してみました。
アルコニックスは確かに前期比減益予想ですが、株価が2000円どころから1100円近くまで、半値近くも下落するような業績ではありません。
アルコニックスの出身母体の双日が、アルコニックスの株を手放していることはEDINETなどで見て知っていましたが、今回、双日とアルコニックスの関係をIRに質問してみて、すでに資本関係がゼロになっているということを知りました。
つまりアルコニックスの株価が暴落した理由は、双日の売りと、株価の下落に恐れをなした他の投資家の追随の売りによって引き起されたのだと考えました。双日の出資はすでにゼロになっているとのことで、これからは株価に関係なく売ってきた双日の売りが一切出てこないということは、アルコニックスの株価にとっては朗報だと思います。
一旦株価が大きく下がってしまうと、その影響が薄れるまではなかなか株価は反発しません。投資環境が悪かったことも、株価の重石となりました。
しかし、この業績で、この株価は安すぎると考えた投資家が恐る恐るアルコニックスの株を買い始めると、どうしても売らなければならない双日のような大株主以外の投資家は、もしかしたらアルコニックスの株価は業績などから考えた適正な株価に戻り始めたのかもしれないと、やはり少しずつ資金を投下し始めます。
『半値戻しは全値戻し』※という相場格言があるように、アルコニックスの株価は投資環境の好転もあり、戻り続ける可能性が充分あると感じるようになりました。
※株価が値下がり幅の半分まで回復してきた(半値戻し)ということは相当の上昇エネルギーを持っているはずだから、今後全値(それまでの高値)まで戻るものだ、という考え方
そこで、来週の研究銘柄としてはアルコニックスを取り上げてみたいと考えているところです。
年末のテーマ型銘柄研究として取り上げたドラッグストア3社(マツモトキヨシホールディングス、ココカラファイン、カワチ薬品)の株価の動きを見ていると、ある日突然、大きく下げて、翌日は大きく反発してしまうというようなことが交代のように起こります。
マツモトキヨシホールディングスの株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=3088&ba=1&type=3month
ココカラファインの株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=3098&ba=1&type=3month
カワチ薬品の株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=2664&ba=1&type=3month
株価が翌日から必ず戻す可能性は100%ではありませんが、一部の投資家の利喰いなどで下げたのならば、優待の権利日の3月末に向けて、株価が回復する可能性は充分あるのではないかと考えて、株価の動きを見ています。
その点では、年末の研究銘柄であるフクダ電子の株価は、ジリジリとではありますが、それほど下げることなく株価が右肩上がりを続け、毎日のように昨年来の高値を更新しています。いままでの保ち合いの上限レンジの2500円どころを上に抜けてきて、今の株価もPERは10倍以下、PBRも1倍以下で、配当が年間95円と充分高配当利回りなので、3月の配当権利日までは右肩上がりの上昇を続けてくれるのではないかと期待しています。
フクダ電子の株価のチャートです。
http://www.nikkei.com/markets/company/chart/chart.aspx?scode=6960&ba=9&type=3month
私自身の好みで言えば、一気に上がらなくともジリジリと上がり続けて、気がついたら大きく上がっていたというような動きをする銘柄のほうに好感が持てます。このような銘柄は、他のどうしても欲しい銘柄を買い増すために、いったん利喰いして手放したりすると、売値より安く買い戻すことが出来なくなることも多い銘柄でもあります。
さて、これからはポジショントークになります。言及する銘柄は、研究銘柄やコラム銘柄とは性格が違い、あくまでも実経験による体験談となります。
その点を認識して注意して読んでいただければと思います。
私がいま個人的に一番投資妙味があると考えている銘柄は東栄住宅です。
12月の後半に、海外で相場が開いているのに、日本は長いお正月休みに入るので、海外で何が起こるか不安である。そこで、海外で何かが起きても株価が下げにくい銘柄に資金をシフトしておくという案も悪くない。そして、資金をシフトしておくなら、どのような銘柄が良いのだろうかということで、私の案をコラムで書きました。
そのうちの1銘柄が東栄住宅でした。1月に魅力的な金券優待と半期分の配当があるから、株価が下げにくいだろうと考えたからでした。
ところが運が良いというしかありませんが、12月25日に飯田産業系のパワービルダー6社が経営統合すると発表しました。
http://www.iidasangyo.co.jp/info_pdf/kaiji20121225.pdf
一建設(3268)や飯田産業(8880)、東栄住宅(8875)、タクトホーム(8915)、アーネストワン(8895)、アイディホーム(3274)の戸建て住宅6社は、共同持ち株会社を設立して経営統合することで基本合意したと発表しました。
共同持ち株会社を設立するのは2013年11月で、まだ1年近くも先のことですが、もともと低PERの6社だったので、そのニュースに反応して株価は大きく上昇しました。
問題は、営統合比率は今後協議して決める、というところです。経営統合に参加する6社の2011年度の売上高を単純合計すると、7789億円と戸建て住宅を販売する「パワービルダー」としては国内最大手になるといわれています。
6社は今後、統合準備委員会を設置して具体的な協議を始める、としており、持ち株会社の名称や本店所在地、代表者、役員なども現時点では未定としています。
6社の株価は投資家の思惑でみな上げていますが、上昇率に差が出ています。私は6社の経営統合比率は、一番業容が大きく、時価総額も大きい一建設の株価を基本に統合比率が決められると予想しています。そして6社という多数の企業の統合では、各社の一般株主ばかりではなく、大株主だけでも沢山いるので、それらのステークホルダーが納得する具体的な基準に基づく統合比率が必要だと考えています。
いろいろな案が出てくるでしょうが、基本的には一建設の株価と一株純資産との兼ね合いから統合比率が決められると予想しました。現状は東栄住宅を除く5社の株価は、各社の一株純資産以上か、一株純資産程度まで上昇しています。すなわち、PBR1倍以上まで上げていますが、東栄住宅だけは、まだPBRが1倍以下です。
まだ統合まで時間があるので、今期の業績が新たに加わった一株純資産で統合比率が決められることになるだろうし、各社の株価もまだまだ投資家の思惑で、大きく上下に変動すると予想されます。
しかし、一建設のPBRが1倍以上(現在は株価が3680円、一株純資産が2226円なのでPBRは1.65倍です)なら、各社ともPBRが最低でも1倍にはなる経営比率になると想像して、今ならば東栄住宅に投資しておくと一番メリットが得られそうだ。そんな計算で東栄住宅の株に一番妙味があると考えていることころです。そして投資するにしてもなるべく安く投資したいので、1月の配当優待権利落ち後に株価が下がるなら、そのときが買い増し時期としてはチャンスの時ではないかとも考えていることです。一建設も1月末決算なので、権利落ちの状況は一建設にも起こります。
もし、東栄建設の一株純資産である1375円の1.65倍で経営統合比率が決まると、とんでもない株価になってしまいます。ここまで期待するのは欲張りすぎると考えますが、少なくとも一株純資産以下の現在の1261円の株価は割安すぎるというのが、私の考えです。
もちろん思惑はずれもありうるし、一建設の株価が大きく下げてPBRが1倍以下になってしまうリスクも当然あります。あまり歪なポートフォリオにしてしまうと、失敗したときにダメージが大きくなりすぎるとも考えています。ただいろいろ考えて、策を練るのも勉強になるし、今後の投資の役にも立つと考えています。
興味のある方は6社の決算短信などをチェックして、いろいろ考えてみると、今後同じような経営比率の決まっていない合併が起きたときの練習になると考えて、自説(ポジショントーク)をご披露しました。
各社の直近の決算短信は以下の通りです。
一建設
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121211_hajime_kessan.pdf
飯田産業
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121211_iida_kessan.pdf
東栄住宅
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121203_touei_kessan.pdf
タクトホーム
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20130110_tact_kessan.pdf
アーネストワン
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121030_arnest_kessan.pdf
アイディホーム
http://www.ighd.co.jp/ir/before_the_merger/pdf/20121105_id_kessan.pdf
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
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