今まで、ヘッジファンドを中心とした、金融のプロ達の運用手法について、解説をしてきましたが、本日は少し趣向を変えて、皆が金融のプロ中のプロと信じてきた人たちによる詐欺、もしくは歴史的な損失を出した事件について書きたいと思います。
まず、最初は人類史上最大規模の損失を出したと言われる、Bernard Madoff(バーナード・マドフ)のケースから始めたいと思います。マドフのファンドは、総額650億ドル(約5兆5,000億円)と、世界中のどのヘッジファンドよりも大きな運用額を誇っていましたが、その実態はポンジ・スキーム(ネズミ講)そのもののお粗末な内容でした。650億ドルは、彼のファンドが生み出していると嘘をついていたリターンを含んだ金額で、投資家の純損失は180億ドル(約1兆5,000億円)程度であったようですが、いずれにしろ人類史上最大の損失であることに変わりはありません。
マドフの詐欺の形式は、架空の非常に高いリターンの運用実績をでっちあげ、新規に流入してきた資金を運用せずに配当に回すという非常に古典的なものでしたが、元ナスダック社長でユダヤ人というプロフィールを活かし、ユダヤ人のセレブリティとの人脈を築き、その信頼を背景に巨額の資金を集めました。いくつかのヘッジファンドから、オプションやデリバティブを使わないマドフのファンドの性質上、公表されているリターンは実現不可能だと以前から指摘されていましたが、マドフは自身の人脈によりそうした声をもみ消し、実態解明が遅れようです。既にマドフの有罪は確定し、懲役150年という非常に重い刑に処されて、収監されています。これもありがちですが、彼の有罪確定後、彼の会社では麻薬を片手に、高級コールガールが多数参加したパーティが良く行われていたなど、様々な暴露話が出てきています。
日本でも、投資家による巨額の損失事件は過去様々なものがありました。その中でも最大の損失を出した事件が、1993年に判明した住友商事の浜中泰男氏の銅取引による約2,800億円という巨額損失になります。浜中氏は、1975年頃から銅の地金取引を始め、一時は市場全体の取引の約5%が彼による取引であったことから、”ミスター・ファイブ・パーセント”という異名で世界中に知られるようになります。しかし、実際は1985年頃から損失を出し始め、それを簿外取引で穴埋めしようとして、さらに損失が膨らむという、巨額損失の典型的な構造の事件でした。浜中氏に対しては、1999年に懲役8年の実刑判決が下されています。
この事件以外にも、1995年のイギリスのBarings Bank(ベアリングス銀行)のトレーダーNicholas Leeson(ニコラス・リーセン)による約14億ドルの巨額損失や、2008年のフランスのSociete Generale(ソシエテ・ジェネラル銀行)のJerome Kerviel(ジェローム・ケルビエル)による約49億ユーロの巨額損失が有名ですが、いずれの事件も個人に非常に大きな決裁権限が集中しており、最初は少額の損失であったのを簿外取引で穴埋めしようとして、雪だるま式に損失が膨らむという、浜中氏の事件と同じ構造でした。
このように、投資に関する詐欺事件、巨額損失事件も共に、嘘で塗り固められた素晴らしい実績を信じて、無条件にトレーダーを信じるところから始まります。私は、ファンドやトレーダーを評価する際に、その人の哲学や人間性も含めてよく調べて評価するようにしています。個人の魅力が、その人の学歴や職歴などのハード情報だけでは到底評価できないように、トレーダーの実力もその運用実績だけでは到底評価できません。
そして、投資の世界では残念ながら、現実世界の学歴や職歴より簡単に実績を偽ることが可能です。皆さんも、この事を肝に銘じて、投資先を選ぶ際には、その責任者の人間性も含めて多面的に評価するようにしてください。
(岡村知美)
■プロフィール
早稲田大学理工学部卒、早稲田大学大学院理工学部経営システム工学科卒。
外資系証券会社の自己勘定部門&ヘッジファンドにおいて、5年半日本株の運用に携わる。計量的分析を用いて、マーケットに左右されない絶対的リターンを追求したトレードを行う。2009年10月に娘を出産。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
このコラムはいかがでしたか?面白かった・役に立ったと思った方は
是非ワンクリックをお願いいたします!
http://clap.mag2.com/bouuowaeve
クリックだけでも結構ですし、コメントをいただけるともっと嬉しいです!
まず、最初は人類史上最大規模の損失を出したと言われる、Bernard Madoff(バーナード・マドフ)のケースから始めたいと思います。マドフのファンドは、総額650億ドル(約5兆5,000億円)と、世界中のどのヘッジファンドよりも大きな運用額を誇っていましたが、その実態はポンジ・スキーム(ネズミ講)そのもののお粗末な内容でした。650億ドルは、彼のファンドが生み出していると嘘をついていたリターンを含んだ金額で、投資家の純損失は180億ドル(約1兆5,000億円)程度であったようですが、いずれにしろ人類史上最大の損失であることに変わりはありません。
マドフの詐欺の形式は、架空の非常に高いリターンの運用実績をでっちあげ、新規に流入してきた資金を運用せずに配当に回すという非常に古典的なものでしたが、元ナスダック社長でユダヤ人というプロフィールを活かし、ユダヤ人のセレブリティとの人脈を築き、その信頼を背景に巨額の資金を集めました。いくつかのヘッジファンドから、オプションやデリバティブを使わないマドフのファンドの性質上、公表されているリターンは実現不可能だと以前から指摘されていましたが、マドフは自身の人脈によりそうした声をもみ消し、実態解明が遅れようです。既にマドフの有罪は確定し、懲役150年という非常に重い刑に処されて、収監されています。これもありがちですが、彼の有罪確定後、彼の会社では麻薬を片手に、高級コールガールが多数参加したパーティが良く行われていたなど、様々な暴露話が出てきています。
日本でも、投資家による巨額の損失事件は過去様々なものがありました。その中でも最大の損失を出した事件が、1993年に判明した住友商事の浜中泰男氏の銅取引による約2,800億円という巨額損失になります。浜中氏は、1975年頃から銅の地金取引を始め、一時は市場全体の取引の約5%が彼による取引であったことから、”ミスター・ファイブ・パーセント”という異名で世界中に知られるようになります。しかし、実際は1985年頃から損失を出し始め、それを簿外取引で穴埋めしようとして、さらに損失が膨らむという、巨額損失の典型的な構造の事件でした。浜中氏に対しては、1999年に懲役8年の実刑判決が下されています。
この事件以外にも、1995年のイギリスのBarings Bank(ベアリングス銀行)のトレーダーNicholas Leeson(ニコラス・リーセン)による約14億ドルの巨額損失や、2008年のフランスのSociete Generale(ソシエテ・ジェネラル銀行)のJerome Kerviel(ジェローム・ケルビエル)による約49億ユーロの巨額損失が有名ですが、いずれの事件も個人に非常に大きな決裁権限が集中しており、最初は少額の損失であったのを簿外取引で穴埋めしようとして、雪だるま式に損失が膨らむという、浜中氏の事件と同じ構造でした。
このように、投資に関する詐欺事件、巨額損失事件も共に、嘘で塗り固められた素晴らしい実績を信じて、無条件にトレーダーを信じるところから始まります。私は、ファンドやトレーダーを評価する際に、その人の哲学や人間性も含めてよく調べて評価するようにしています。個人の魅力が、その人の学歴や職歴などのハード情報だけでは到底評価できないように、トレーダーの実力もその運用実績だけでは到底評価できません。
そして、投資の世界では残念ながら、現実世界の学歴や職歴より簡単に実績を偽ることが可能です。皆さんも、この事を肝に銘じて、投資先を選ぶ際には、その責任者の人間性も含めて多面的に評価するようにしてください。
(岡村知美)
■プロフィール
早稲田大学理工学部卒、早稲田大学大学院理工学部経営システム工学科卒。
外資系証券会社の自己勘定部門&ヘッジファンドにおいて、5年半日本株の運用に携わる。計量的分析を用いて、マーケットに左右されない絶対的リターンを追求したトレードを行う。2009年10月に娘を出産。
(情報提供を目的にしており内容を保証したわけではありません。投資に関しては御自身の責任と判断で願います。万が一、事実と異なる内容により、読者の皆様が損失を被っても筆者および発行者は一切の責任を負いません。)
このコラムはいかがでしたか?面白かった・役に立ったと思った方は
是非ワンクリックをお願いいたします!
http://clap.mag2.com/bouuowaeve
クリックだけでも結構ですし、コメントをいただけるともっと嬉しいです!
JUGEMテーマ:株・投資



